表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/349

第十一話 完成!! カオルの剣

カオルと師匠のイチャつきっぷりがもう・・・


2016.6.27に、加筆・修正いたしました。

 あれから2日後。

 今は朝の8時くらいだろうか? 朝食は既に済ませてある。

 ヴァルカンがめずらしく起きていた。

 正確には2日間寝ていないのだが...いつものことだ。


「カオル喜べ!」

「わーい」


 カオルが棒読みで返すと、不満そうなヴァルカンの顔。


「まだ何も言って無いんだが...」

「すみません」


 頭を下げる。

 悪乗りをしたので、落ち込んでしまったようだ。


「まぁいい。ついに完成したぞ、新しい剣だ!」


 ヴァルカンは、背中に隠していた剣を、ジャジャーンと笑顔で取り出し、カオルの前に差し出す。

 カオルは両手でそれを受け取り、嬉しそうにギュッと抱き締めた。


「ありがとうございます。師匠!!」


 涙声で、ちゃんと言えたかわからない。


「いいんだよ、これから大事に使っておくれ。なんなら私も貰っておくれ!」


 ヴァルカンは場を和ませようと、「アハハ」と声が出るくらい楽しそうに笑った。


「なんですかそれ....」


 新しい剣を右手に抱え、カオルも笑い返す。

 片手剣(ショートソード)が壊れてから凹んでいたカオルを、気遣ってくれたのだろう。

 ヴァルカンは満足そうに頷いた。


「それでは説明しよう」


 ひさびさに『残念美人』ではなく、師匠らしく『教師』になって、新しい剣の説明を始めた。


「カオルは、今まで両刃で直刀の片手剣(ショートソード)を使っていたからな。今回は片刃の少し曲剣にしてみた」


 受け取った剣を見てみると、確かに鞘からでもわかる形状だった。


「それは曲剣(ファルシオン)と言う。まぁ、本物はもっと重量もあるし、刃幅も広いし、反りが深い物なんだが、そこはちょっとカオル用にアレンジした」


 自身満々に話し続けるヴァルカン。

 本当に教師らしい。


「戦い方も、これまでとは少し変えないといけないな。突き刺す事はできるが、片刃なので、そこは注意するように」


 うんうんと頷くカオル。

 明朗でいて、とても解りやすい説明だ。


「《魔法剣(マジックソード)》の修練も始めないとな。まぁ、カオルならすぐコツを掴むだろう」


 ヴァルカンは、そっとカオルの(あご)を持ち上げ笑みを浮かべる。

 まるで、これから口付け合う恋人の様に。


(ああ...師匠は美人だなぁ....)


 接近した2人の顔。

 ヴァルカンの薄く透き通ったサファイアの瞳が、カオルの顔を写し出す。

 このまま目を閉じれば、とても淫猥な世界が待っているのかもしれない。


 だが、事はそう上手くいかない。


 純真無垢なカオルが朗らかに笑うと、気圧されたヴァルカンはたじろぐ。

 美少女(びしょうねん)の微笑みは、見る者全ての心を奪うと共に、障壁(バリア)の効果も備えているのだ。


 残念そうに肩を落とすヴァルカン。

 仕方なしに「それじゃぁ私は寝るから」と告げて、寝室へ立ち去った。


「....おやすみなさい」


 ヴァルカンの後姿を見詰めながら、カオルはギュッと曲刀(ファルシオン)を抱き締める。

 心がホッと温かくなるような感じがした。




















 カオルは、すぐにでも試し切りをしたいのを我慢し、欠けた片手剣(ショートソード)を片手に工房へ向かう。

 ヴァルカンは、一度寝るとなかなか起きない。

 どれだけ大きな音を出しても、グースカ寝ている。

 作業をするなら今のうちなのだ。


 カオルが今からやろうとしているのは、ヴァルカンに内緒で、『ある物』を作るつもりだ。

 工房の窯へ火を入れ、しばらく待つ。

 十分加熱したのを確認して欠けた片手剣(ショートソード)を炉に入れる。

 次第に、熱された片手剣(ショートソード)は形を変化し、赤くドロっとした塊へ姿を変えた。

 炉の温度を徐々に下げ、十分熱が取れてから、塊を砂器に移し熱を取る。

 再度炉の温度を上げ取り出した塊を熱する。

 加熱され、赤くなった塊をやっとこで掴み上げ、いよいよ槌で叩き続ける。

 板状に整形し、縦横何層にも折り返し鍛錬していく。

 不純物を十分取り除き、何度も水入れと焼き入れを繰り返して形を整える。

 形が完成したら十分冷まして刃を形成――研磨――して完成だ。


 作業している時は気付かなかったが、いつの間にかカオルの周りに精霊達が集まっていた。

 みんな不思議そうに剣を見ている。

 ひときわ人懐っこい緑色の"風の精霊"が出来上がった剣のところまで飛んで来る。

 カオルは首を傾げながら見ていると、精霊が剣に触れ剣身が淡い光に輝きだす。


「えっ?」


 作業机の上に置いてある銀色の剣身が緑色の光を纏う。

 やがて、工房中に淡い光を放った後、何事も無かったように辺りは静まり返った。

 出来たての銀色の剣身に光が当たると、緑色に淡く反射する。


「エメラルドみたいだ...」


 思わず、感想を口にする。

 "風の精霊"はニコッと笑い、そのまま姿を消した。

 周囲に居た精霊達も同様に、いつの間にかいなくなっていた。


(う~ん、なんだったのだろう....精霊さんは不思議だ....悪戯(イタズラ)好きだし....)


 工房の壁に掛かっている革から、出来た剣に合いそうな大きさの革を選ぶ。

 丁度いい大きさの黒色の革を見つけ、革製(シー)()を作る。

 留め具などの材料は出来合いの物で流用。

 あっという間に完成して、剣を収めてみるとぴったり収まった。


(これはアレだね。裁縫とかの技術(スキル)を磨いてて良かった感じだね)


 肩の力を抜き、窓の外に目をやる。

 既に日は落ち真っ暗になっていた。

 

(集中してると時間が早いなぁ...)


 お腹もかなり空いていたので、さっさと片付けてキッチンへ行き、簡単に食事を取りベットへ直行した。





















 翌日の朝。

 相変わらずヴァルカンはお腹を出して寝ていた。

 カオルは朝食を用意し、ヴァルカンを起こしに寝室へ。

 驚かせない様に慎重に歩き、ヴァルカンの眠るベットに近づくと、頬をつんつん突く。


「師匠? 朝ですよ~、起きてください」


 最近ヴァルカンは不思議な命令をするようになっていた。


『今週はこういう起こし方をしてくれ!』


 何が良いのかよくわからないが、やっているカオルも結構楽しいので、気にせず続けている。

 透き通るような肌に、薄く細い輝く金色の髪。

 プニプニの頬を堪能できてカオルも大満足。


「ほら、師匠? 早く起きないとごはんあげませんよ~」


 もぞもぞと動き「ん。ん~」なんて言っている。

 次第に目が覚めて、突然パチッと目を開らき「おはよう。カオル」と、女神の笑みを浮かべて挨拶を交わした。

 何度見てもドキッとしてしまう美貌。

 普段は『残念美人』という名のいい加減な性格のくせに、たまにこうしてカオルを誘惑する。


(もう....師匠はずるいよ)


 照れて赤くなった顔を見られまいと、カオルはクルリと向き直り、扉へ向かう。


「先に行ってますからね」


 返事も聞かず、そう言い残し、寝室から急ぎ足でカオルが出て行く。

 当然ヴァルカンも慌てて支度をし、後を追いかけた。


 1階の居間へ降りる2人。

 壁に掛かったカオルの外套。

 その傍にあるチェストの上に、曲剣(ファルシオン)と真新しい剣を見つけた。


「カオル、この剣どうしたんだい?」


 ヴァルカンは真新しい剣を手に取り鞘から抜き出す。

 窓から入る朝日を浴びて、剣身は緑光を煌かせた。


「師匠にいただいた、片手剣(ショートソード)を打ち直したんです」

「そうなのか?」


 ヴァルカンは、アレコレ値踏みするかのように様々な角度で検分を始める。

 刃渡りは短く、短剣(ダガー)よりは少し長い程度の銀色の剣身。

 煌く光は緑色に輝き、鋼鉄製とはとても思えない。


「これ、何か加えたのか? なんだか輝きが以前とまったく違うんだが...」


 訝しげにヴァルカンは短剣を見詰める。

 その姿を見たカオルは、精霊の悪戯(イタズラ)を思い出し、クスっと笑った。


「む、何か隠し事か? おねぇさんは寂しいよ...」


 答えないカオル。

 ヴァルカンは俯き顔を見えない様にして、嘘泣きを始めた。


(本当に、可愛い人なんだから....)

「それ、バゼラードって言う短剣なんです。大切な思い出の詰まった片手剣(ショートソード)を、手放したくなかったから....」


 恥ずかしさからか、カオルがモジモジしながら話す。

 両足を閉じて太股を擦り合わせるその姿は、百点満点とも言える可愛らしさを秘めていた。


「そ、そうか? それは...嬉しいな...」


 照れるヴァルカン。

 頬をぽりぽりと掻き、可愛らしいカオルの姿をチラチラと見やる。


「そ、それにしても、良い短剣(バゼラード)が出来たな」

「はい♪ なにせ、元がいいですから♪」


 自身の持つ、最上級の笑顔でカオルが答える。

 ヴァルカンは顔を真っ赤に染め上げると、これ以上見詰められないとばかりに、カオルから視線を外すのだった。


ご意見・ご感想などいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ