第一話 第四部 千代乃とカラオケ
「ねえ、明日カラオケ行かない?」
「カラオケ?」
「そう! どんな歌を歌うのか気になる所だし…。声も気になる!」
「私でいいなら…いいよ。何時にする?」
「えっとね……。」
私はカラオケ店の前で楓を待っていた。昨日会ったばかりの女の子とカラオケに行くなんて。二時間だからちょうどよかったかもしれない。
「おまたせー!」
そんなことを考えていると楓がやってきた。昨日のようにかわいらしい私服を着てやってきた。
「あ、千代乃。新しい服を買ったのね!」
「そう。アイドルは身だしなみからしっかりしないとって言われたから。」
「似合っているよ! いいなぁいいなぁ。」
楓は足をぴょこぴょこさせて羨ましがっている。なんというかかわいい。
「それじゃあ行こう。」
「おっけー!」
私は自分の名前で予約を取っていて、店員に声をかけるとコップをもらって指定された部屋へと移動していった。
「カラオケっていつ振り?」
楓が荷物を降ろしながら聞いてきた。そして荷物を降ろすとストレッチをし始めた。
「私は一か月ぶりかな。楓は?」
「週一には行くよ。」
週一。やっぱりやりこんでいる人は違う。バンドをやっていただけあって、ストレッチもしている。私も真似事でもよいからストレッチしないと。
「よいしょ…。」
二・三分ストレッチして、私は曲を探し始めた。
「どれがあるかな…。」
そんなことを考えていると人気アイドルグループの曲を見つけた。そしてそれを入れると隣から拍手が聞こえてくる。
「あ、あまり期待しないでね。」
「いやいや! でもアイドル目指すんだからここから頑張ろう!」
そういって励ましてくれた。私は少しリラックスすることができて歌い始めた。比較的歌いやすい音程、そして曲調も明るい。歌っていくうちに徐々に声がうまく出せるようになってきた。それを聞いた楓は少々目を丸くして私の歌を真剣に聞いていた。
「はぁ…はぁ…。ど、どう?」
歌いきった私は息を切らしながら聞いてみた。体が少し熱い。息を切らしてしまいそうになったからだろうか。しかし楓は拍手している。
「うまい、うん。上手いよ! あとは体力とかしっかりつけておけば歌は問題ないよ! あとはダンスと含めてどうなるかってことだね…。」
楓は拍手しながら自分の番だと思って立ち上がった。そしてマイクを持ち、構える。
「最初は自分の好きな曲で歌うね。」
そういって歌い始めた。ややロック調な曲を歌っている。英語もネイティブな発音をしているし、そこにかわいらしさが混ぜあわさって良く響く。たしかにギターヴォーカルをやっていただけある。さらに落ち着いているところでは透き通る声を聞かせてくれた。すごい…。
「どう?」
「すごいよすごいよ! さすがヴォーカルやっていただけあるよ! それにぜんぜん疲れていないからうらやましい。」
「一応ランニングとかで鍛えているからね!」
ランニング。やっぱりこれからアイドルやっていく上で必要なのだろうか。少しずつでもいいからやっていかないと。