第一話 第三部 千代乃と楓
「ダークモカフラペチーノになります。」
「うひょー!」
目の前に出された飲み物に黄緑髪の子が目をキラキラと輝かせている。私はすでに抹茶ラテがあったのでお互いに声をかけて飲み始めた。買い物を終えた私は、アイドルの話しに興味を持ったこの女性と共にコーヒーショップに入った。
「あ、そういえば忘れてた! 私は旋風 楓! 高校一年生!」
今になってやっと名前の紹介をしてきた。旋風楓…。一つ下の女の子なのか。
「私、九石千代乃。高校二年生だよ。」
「うぇえっ!? 先輩っ!? これは失礼しました。」
そういってテーブルの上で頭を下げて謝った。そんな謝ることないのに。そして頭を上げるとストローで自分の飲み物を飲んだ。
「ぷはっ。九石先輩はなぜアイドルになりたいって思ったのですか?」
「先輩は要らないよ。実はこの前、アイドル活動している人がいて…それに一目惚れというか。私帰宅部だったし、何もいままで部活やったことないのよ。」
「そうだったんですか。やりたいことが見つかってよかったですね!」
「でもね…体弱いからやっていけるかどうか…。」
私はカップを置いて下を向いた。体の弱い私が続けていけることなのだろうか。今になって心配になってきた。
「大丈夫ですよ、特訓すればそんなの関係ないですって!」
この女の子はポジティブに声をかけてくれる。なんてやさしい人なんだろうか。そしてアイドルに欠かせない笑顔を持っている。たしかにこの人と一緒なら面白いかもしれない。
「ありがとう…。じゃあ旋風がアイドルについてお話聞きたいって思った理由は?」
そういうと先ほどの私と同じようにコップをトンとテーブルの上におく。そしてふぅ…とため息をついた。
「私は音楽が大好きなの。だから高校では軽音楽部やバンドに入ってたくさん活動したいなって思ってたの。でも何だろうね…こう…私の求めているものとは違うっていうか…周りの意識が違うから。ほら、目標や音楽性が違うとメンバーとかみ合わないよね。」
「いわゆるお友達関係と同じものだね。」
「そうそうそう。…だからちょっと自分探しにでも合うのかなって…。」
そういってもう一度飲み物を飲む。そして飲み終えると顔つきを変えて私の方を見る。
「ねえ、アイドルは本気で上目指したいって思ってる?」
「私は……。やるからには上目指したい…。」
勢いで言ってしまったけど正直自信がない。こんなの上手くいくかわからないし、厳しい世界なのもわかっている。でもやりたい。
「……私もメンバーに入っていい?」
突然、旋風が私の顔をじっと見てたずねてきた。それは本当に入りたそうな顔だった。たしかに一人でやるのもアレかなって思うし…。いいかな。
「うん、これからもよろしく。」
そういうと旋風はニッコリと笑って一気に飲み物を飲み干した。
「ありがとう! これから楓って呼んで!」
「わかった。私のことも千代乃って読んでいいからね。」
私と楓は握手して笑った。早くもメンバーが一人増えた。