第四話 第九部 デビューとアドバイス
「うーん、もう少しはきはきしてて良いかも。そうすれば聞いている人の身としては楽しそうだなってのが伝わるから。」
「なるほど、はきはきか…。でも千代乃、はきはきってどう表現すればいいのかな?」
解釈としては分かる。しかしいざ実行にうつそうとすると難しい。なんとなくは分かるけどそのなんとなくでいいのかな?
「意識して歌ってみると分かるよ。何事も試してみるのみ!」
楓は右手でグッジョブポーズを取って笑っていた。そして次は恭花さんのソロだ。恭花さんも少し心配そうに聞く。
「音程はここ最近でかなり良くなってきているね。カラオケで聞いた時より確実に上手くなってる。楽しそうに歌えているからヨシヨシ!」
「よ、よかったわ。」
「気になった所は声の大きさや強弱が少しバラバラすぎるかな。でも良く出来ている。恭花さんの体力を考えると踊っていてもこの歌い方はキープできると思う。」
「なるほど…そこは練習で補える部分かな。よし、頑張ろう!」
そして三人一緒に歌うところ。…バラバラにならずに皆がそろって歌えている。つい一二週間前まであってなかったのに今になってかなり合うようになってきた。それにもう少し練習をしていけば…カンペキになれる!
「でも…今日はやってみようかな。」
「何を?」
楓は立ち上がってマイクを取った。
「踊りながら歌おう!」
いよいよ本番に入ってきた。でも踊りながら歌うって本当に出来るのだろうか。いや、私たちはできなきゃいけないんだ。
「うん…私やるよ。」
「千代乃もやる気になっているのね。私はもちろんやる気だったわ。」
「皆さすが! それじゃあマイクもって位置につこう。」
私たちはマイクを持ってそれぞれの位置に移動した。そしてポーズをとって構える。
「いくよ。」
楓はボタンを押して自分の位置に戻る。いよいよ本番の練習に入る!