第二話 第十一部 勧誘と疲れ
「はぁ……はぁ……。」
私はもうすぐ終わり、それに周りよりは遅いペースなのに息を切らしていた。足が重いし足取りもおかしい。でも…最後までやらなきゃ。
「うへーっ、もうすぐ終わりなのに疲れるよぉ…。」
楓もヘトヘトになっていた。私とは速いペースなのはわかるけどここまで疲れてくるとは…。恭花さんはもっと速いペースなのにさわやかな顔で走っている。私には笑顔がない。いや、そんな余裕がない。ダメだ…こんなんじゃ。
ピーッ
「はい、おしまーい!」
恭花さんが声をかけるとランニングマシーンがゆっくりと遅くなっていく。そして歩く速度になると私は下を向きながら歩いていく。汗がボタボタと下へたれていく。楓は手をつかむところを持って歩いている。楓も汗がびっしょびしょになっていた。すると私の手すりにタオルが置かれた。恭花さんが歩きながら渡してくれた。
「それとコレ、楓にも渡して。」
恭花さんがもう一枚タオルを渡してくれる。それを受け取ると少し冷たいタオルだということがわかった。それを楓に手渡しする。
「ありがとう……って冷たいっ!」
楓はびっくりした様子でタオルを受け取った。そして体を拭くと顔が一気に安らぎの顔へと変わっていった。
「はぁはぁ…。たしかにこのタオルはいいね…。」
私は歩きながらタオルで汗をふき取った。冷たくて気持ちが良い。ランニングマシーンが止まると私は降りてそのまま地面に倒れこんだ。
「ふぅふぅ…。」
「千代乃、大丈夫?」
「とりあえず休んでいて。その様子じゃかなり厳しかったみたいだね。」
「私……頑張らないと。」
「頑張ってるよ! ゆっくり、しっかりと整えていかないと。」
「そうだね…ありがとう。」
私はゆっくりと起き上がり、飲み物を口に含んだ。ものすごくおいしく感じる…。私はいままでこんな経験をしたことがあっただろうか…。運動し始めてから感じることができたこの新しい感覚…これからもっと大変になりそうな気がする…。