第二話 第十部 勧誘と段階
「さてと…。これからランニングマシーンを使って運動するわよ。」
私は少し息が整ってきたので二人の後ろをついていった。右手に持った飲み物を口に含む。軽く飲むと体が染み渡るように感じられた。
「楓はこっちのペースで。」
そういうと楓はすぐにトレーニングを始めた。そして恭花さんが私に近づいてランニングマシーンへと誘導していく。
「千代乃は体が弱かったはずだよね。」
「うん…でも変えたいから…。」
「だめ、いきなり無理するのは禁物だよ。」
そういって恭花さんはボタンをピピッと押して設定を決めていった。
「乗って。」
私が乗ると恭花さんがスタートボタンを押した。そしてランニングマシーンが動いていく。
「徐々に早くなっていくから。最初はゆっくり慣らしていって。」
私は恭花さんの指示通り、ゆっくり歩き始めた。
「私もやるかな。」
そういって恭花さんは隣で始めていく。スピードの上がり方が私たちとは違う。どんどんと速くなっていく。右側の楓を見ると私の速度の上がり方より速くあがっていく。やっぱり私はゆっくりじゃないとダメなのかな…。
「千代乃、ここは我慢だよ。」
「えっ?」
私の様子を見て気づいた恭花さんが声をかけてくれた。私はその言葉にハッと気づく。
「いきなりやったって本当に倒れるだけだよ。辛い思いしたくないでしょ?」
「恭花さん…。」
恭花さんは私のことをしっかり考えてくれていた。そんな私自身は自分を高めようとするあまり、自分を見失っていた。本当にアイドルを目指すため。そのためにはしっかりとした段階を踏んでいかなきゃいけないことを教えてくれるようだった。
「わかりました。ゆっくり頑張っていきます。」
私は前を向いて一生懸命練習をこなしていく。自然と速くなるペースは私の体にはかなりこたえていた。