第二話 第六部 勧誘とありる
「それでは聞いてください! 愛のメイドフリル!」
いかにも題名はアキバっぽいものになっている。しかし音楽は手を抜かず。そこらへんのプロと比べても良いぐらいのレベルだった。
「フリルひらりドキドキしてるんでしょ~。」
かなりの萌ボイス、アイドルにはうってつけのヴォーカルだった。そしてなによりも可愛い。踊りもふわりとした感じで人をひきつけるような力がある。初心者の私にだってわかることだ。
「千代乃…あの子すごいね。」
「アレぐらい私たちもやらなければ人を集めることはできなさそうね。」
二人の目付きが真剣そのものになった。この集中力を発揮できるところは私とは全然違う。あの二人は部活動などで集中すべき所を経験してきている。私にはそれがない。でも…私は私なりになんとかしなければ。見つけられるところはすべて見つけてみせる。
「みんなーありがとー!!」
「うおおおおお!!」
大きな拍手だ。そしてものすごい人気。これだけの素質があるのは本当に恵まれている。でも本当にそれだけだろうか? 相当な努力がないとここまで上り詰めることは出来ないはず。いったいどれほどの努力を…。
「すごいね…あれは努力で掴み取っているものがあるわね。」
「私もそう見える。あの笑顔は偽りじゃない。」
二人にもそう見えている。やはりあの人は只者ではない。正真正銘すごい人なんだ。
「ふぅ…。みんなー! また歌ったときは応援してねー!」
そういってありるさんはキッチンの方へと戻っていった。そしてすぐに私たちの所へと品物を持ってきた。
「お待たせしましたー! サンドウィッチとパンケーキ、コーヒーでーす!」
「ありがとう。すごかったわね。」
「本当に!? ありがとー!」
恭花さんが声をかけて挨拶をしていた。その様子は最初の恥ずかしがっていた様子ではなく、まともに話している様子だった。
「すごかったよね! 音楽も綺麗だったし。千代乃はどう思った?」
「えっ? うん…なんというか…。ひきつけられるようなものが感じられた。」
「………うれしいな! 頑張ってね、三人とも。」
「「「えっ?」」」
突然のことに私たちは声を合わせて女の子を見た。ニコニコと笑いながら手をふわふわと動かしている。
「アイドル、やるんでしょ? 楽しみにしてるから!!」
そういってありるさんはまたキッチンに戻っていった。いったい…何者なのだろうか、ありるという人は。