第二話 第三部 勧誘とグッズ
楓がびっくりした顔で私を見つめる。たしかに服は作ったことがある。でもこんなハデな服は作ったことない。でも絵で最初デザインしてから服を作ろうと思えば…。
「うん、できるかもしれない。」
「それはすごい有利な点ね。そしたら千代乃が服を作っていく形になりそうね。」
恭花さんも納得した顔で私の顔を見た。私は苦笑いながらもうれしい気持ちになった。大変だけど…やれることはどんどんやっていかないと。
「あ、ここにはCDあるよ。」
そういって楓は視聴用のCDが入っているヘッドフォンを持って音楽を聴いていた。楓の頭がゆっくりと動いている。そしてヘッドフォンを外すと顎に手をあてて考えていた。
「この曲調なら…テンポはこのぐらいで作れば…。」
あ、そうか。楓って自分で音楽を作れるはずだった。だからテンポとか曲調とか考えているのだろう。その次に恭花さんがヘッドフォンをつける。恭花さんもうんうんと言っているような顔をしていた。そしてヘッドフォンを外すと私に渡してきた。
「この人たちの音楽はとても良いよ。アイドルとして聞くだけじゃなくて歌も本当にうまいと思う。」
私はヘッドフォンをして一番の曲のボタンを押した。
ラーラーララー……
あれ? この始まり方には聞き覚えがある。間違いない、アイリングの曲だ。あの人たちの音楽、ここでもピックアップされて売られている。そう考えるとあの時であってお話したのは貴重な体験なんだなと思えてきた。しかも紅音さんとは今でもメールのやりとりをしている。私って恵まれているのかな…。
「すごいね…私の初めてあったアイドル、この人たちに影響されてアイドルになろうと思っていた人たちが…。」
「なるほどね…。たしかにアイドルやりたいと思えてくる理由がわかるかもしれない。」
恭花さんは私の顔をみてにっこりと笑った。私の気持ちをわかってくれているのだろうか。だとしたらちょっとうれしいかもしれない。だから…私はアイドルを最後まで頑張りたい!
「それじゃあ、もっとほかのグッズとか見に行こう!」
楓は目をキラキラさせながら店の中を回っていた。私と恭花さんもそれについていくように店の中を眺め続けていた。そして共通点が一つだけ浮かび上がった。笑顔でいることだった。