第六話 タンポポの歌を口ずさみ
紫香くんは 風邪が良くなったらしいので 今日は 学校に 来るはず。
だから しっかり 水やりをして 紫香くんに 声をかけてもらう。 今まで一度もないから 望みは薄いが。
水やりをしていると 紫香くんに会える 嬉しさからか 何時の間にか 歌を口ずさんでいた。
『どんな花より タンポポの 花を あなたに 贈りましょう』
ダメだ。 幼稚園の時に 歌ったきりだから サビしか 思い出せない。 名前もわからない。
この歌 大好きなんだよな。
楽しみなコトがある日なんかは 水やりをしながら 口ずさんでる。
いわゆる 癖ってやつだ。
いや。 癖ではないか。 でも 気がつけば 歌っているのだから そうか。 うん やっぱり これは癖だ。
この 校門まで続く道を挟むように並べられた 長い鉢植の行列。これに 水をやっていれば 紫香くんの 登校時間と あたるはず。
いつも通りなら。
病み上がりだし 遅めにくるかも。 もし そうだったらどうしよう。
いや きっと 大丈夫。 私がいつも通りじゃなかったら 紫香くんだって いつも通りじゃなくなっちゃうよ。
うん。さあ 水やり水やり。
あっ。 紫香くん発見。 マスクしてる。 まだ 本調子じゃないのかな。
こっち向かないかな。 こっち見たら すかさず手を振ろう。
はい。 向かない。 まっ いつも通り いつも通り。
同じクラスだし 教室行ってから 声かけよう。
よし。 水やり完了。 今日は 晴れの予報だから たっぷり水をあげた。
いったい 水汲みに 何往復したことか。
まったく。 いい体力作りだよ。 でも この花たちを枯らすわけにはいかないしね。
私も頑張らなくちゃ。
★真心の愛 神からのお告げ
また会う日までの約束




