第三十一話 庭石菖の誇る力
ああ もう。 ここにも庭石菖が。
花壇に植えてあるはずの庭石菖が 何故こんなところに。
人に例えるなら とんだじゃじゃ馬娘だよ。 男の子ならバカ息子だ。
雑草魂が半端じゃない。
何故花壇におさまっていられないのだろう。 来年はさらに 雑草化しているんだろうな。
今も相当雑草っぽいけど。 大半の生徒は雑草だと思っているに違いない。
放課後になったら 暇だし 草むしりでもするかな。 暇だしさ。
そうと決まれば 頭の中は庭石菖でいっぱいに。
どのコースで抜いて行くか。 多いところから攻めるか 端から攻めるか。
どちらにせよ 全てを抜きにかかるのは 同じなのだが。
授業中も悩んだ結果 端から行くことにした。 そんなに悩むことではないのだが。
気合いを入れるために 軍手をしっかり履く。 軍手を履くと 雑草なんて根こそぎ持って行ってやる という気になる。
大きなビニール袋を 念の為2枚重ねにして 校庭の端に向かう。 予備にも2枚持って。
意外とあのビニール袋は 弱いのだ。 少し引きずったら 裂け目ができて 破けてしまう。
もう少し強度のあるものはないのか と思う。
どうせ私しか使わないのだから 学校からしてみればどうでもいい話なのだろうけど。
運動部とかが部活中に外周を走るから 小道が出来ている。 運動部も満遍なく走ってくれればいいのに。
そうしたら雑草なんかが生えなくていいのに。
文句を言っても仕方ない。さあ いざ出陣。 やってやりますよ。
スコップも持って 雑草抜きも持って ゴミ袋も持つと 手がいっぱいだから 取り敢えずしゃがみ込む。
そしてじわじわ進んでゆく。
日が傾いてきている。 明日もやらないとダメだな。
ビニール袋をゴミ置き場に運んで 軍手を履いていても汚れてしまった手を洗う。
雑草達を抜いた後の土を見て 清々しい気持ちで帰路につく。
★繁栄 豊富 豊かな感情




