第三十話 釣鐘草と一緒に
あー。 この子達もあと一週間もすれば枯れ始めるだろうな。
釣鐘草は意外と早く枯れる。
枯れたら勿体無いから いくらかは押し花行きだ。 去年もこの学校のほぼ全ての植物の押し花を作っていたから 大量にある。
何に使うのだろうと疑問を持ちながら どんどん作ってしまった。
釣鐘草は可愛いから 去年も散々作ってある。
だから 仲の良い友人達に 花束としてあげようかと思う。
今日は水やりが早く終わりそうだから 雑草達も覗いてこようかな。
「だから お前は何なんだよ。 何がしたいんだよ。 本気じゃないなら からかうならやめてくれ。」
おっと。 何だ。 危ない香りが漂いまくってるぞ。
紫香くんは この場所が大好きなんだな。 いや 前回はピィナか。
今回は蔦葉くんだな。 最近よく話しているから 仲良いと思ってたら 2人とも凄い剣幕で こっちまで聞こえるよ。
ばっちり聞こえるわけじゃないけどなんとなく聞こえる。
うん。 これは 喧嘩ってやつだね。 どうする私。
「いや。 別にさ お前に興味ないし。 なんで僕がここに呼び出されてるのかもわからないし。」
ほうほう。 紫香くんが 呼び出したのね。
そして驚き。 蔦葉くん 可愛いのに 『お前』なんて言うのね。 まさかだわ。
「お前が俺に興味あったら 困るわ。 そういうのじゃなくて あいつに本気で惚れてるならまだしも そうでもないのに 手出してくるなって話。」
ほう。 色恋沙汰でございますか。 なるほど なるほど。
で 誰の話なんでしょうか。 あいつじゃわからんのだ。 花一匁じゃないんだから。
私はまた ここで恋の事件が起きるのを目撃してしまったと。
でも これは心にしまっておこう。 もし 雰囲気で聞けたら聞きたいけど。
いくら私でも流石に そんな野暮なことはしない。
ここを通らねば ジョウロは置きに行けない。
行くしかない。 前回も上手く行ったし。 意を決して踏み出す。 勿論そっと。
クリア。 通り抜けた。 あと ジョウロを 置き場にしまってくれば完了。
戻ってくると 2人はいなかった。 素早いな。
取り敢えず 後で釣鐘草が いるかどうか聞いてみよう。
もし 誰もいらなかったら やっぱり押し花にしよう。
★思いを伝える 感謝 誠実




