表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇国神話奇譚  作者: 橘花
2/3

動き出す時代

-サンディエゴ郊外 皇居-


「動き始めましたか」


朝の一方が天皇・皇后両陛下の下に伝えられる。ソビエト地上軍が、ベルリン壁を突破して西ベルリンを占領。その後、西に侵攻を開始したとの事だった。ニュースでは、崩落するベルリンの壁が映し出されている。冷戦の象徴が、崩落したのだ。


二義ににぎを呼びなさい。今が行動のときだと」


「はい」


侍従長が直ぐに二義を呼びに向かう。第二皇太子の二義はアメリカに亡命後に誕生した子供であった。そして、その二義が謁見の間に入ってくる。


「御父様、御呼びでしょうか?」


「二義。時は来たのだ。我々が帰るときが。日本は今、5つに分断されている。北海道、東北・関東、中部・近畿、中国・四国、九州。しかし、これらは元々は一つの国家である」


「はい。学習院にて、そう習いました」


「今、日本では旧皇族の一家『若白宮わかしらのみや家』のご子息である大国宮おおくにみやが全国を回って独立意識を芽生えさせようと行動している」


皇族は全員が全員脱出したのではなく、残った者も居る。そして、ソ連進駐と同時に皇族と言うものは日本国内では消滅した。なので、実質的に現在皇族を名乗るのはアメリカに行った皇族のみとなっている。


「そして、今朝方にようやく少しずつ独立への兆しが見え始めたそうだ。なので、一つの国家の元に統合したい。その統合への働きを二義に任せたい」


二義は顔を上げる。自分にそんな大役を務められるのか心配そうな顔だった。


「心配いりません。信用できる国民も付いてくれます。各地に逃れた国民達も、祖国へ戻る事を夢見ております。彼ら宛てに代表団が話を付けにいきました。まずはハワイに向かいなさい。そこに、帰国を願う国民達が集まります」


皇后も言葉を述べる。


「分かりましたお父様、お母様。直ぐにハワイに発ち、帰還する用意を整えます」



後日、二義はサンディエゴからハワイ行きの定期便に乗り込み、ハワイへと向かった。



筑紫島つくしのしま 筑前ちくぜん


「この国は神話の国。この国は一つでなくては成らない。それこそが、この国のあるべき姿である」


演説を行う大国宮は筑紫島の国民に訴える。五国に分かれてしまったこの国を一つに纏める為に全国を回ってこの様に国民に訴えていた。


「我々は今こそ、共産主義と戦って、この国を一つの家系の元に纏めねばならない」


危険は承知であった。ソ連の極東に対する関心は非常に薄いので、ソ連当局が介入する事は無いだろうけど、筑紫島の当局が見逃してくれるかどうかである。


「我々がそれを導く。人がそれを助けれる。我々日本人はかつて、常に一つの家系を大切にし、敬い尊んできた。しかし、今の体制はどうだ?その家系は身の危険を感じて海外に逃れ、今でも国に帰ろうと行動している。我々が彼らの帰国を歓迎しないでどうする?」


大国宮は声を荒げて国民に訴え続ける。額から汗が出ても、拭こうともせずに演説を続けた。いつか帰ってくると信じる皇族の為に訴えた。年配者は当然、戦前の暮らしを知っているので耳を傾けた。


しかし、戦後に生まれて戦後教育を受けた者には中々価値を理解してもらえなかった。ようやく最近になって理解されたほどだった。



「疲れるな」


大国宮は演説を終えてペットボトルの水を飲んでいる。ようやく、汗も拭いた。


「大丈夫ですか?」


従者の栖久那すくなが気遣う。子供の時からずっと彼女と共に行動したから、幼馴染と言っても良い。そして、誰よりも大国宮の苦労を理解している者。


「ああ。ようやく最近、理解を深められたんだ。今やめたら、水の泡になる。帰国を待ち望む、海外の国民達にも失礼だろう」


水を飲み干し、栖久那に空のペットボトルを渡す。栖久那をそれを受け取り、カバンの中に仕舞う。


「今日も、聴衆は聞いてくれてたね。一部の雑誌では、新興宗教の過激な信者集めって批判してるけど。彼らはこの国の歴史を知らないからね」


「この国が今教えている歴史は、進駐軍によって作られた歴史だからね。進駐軍への配慮って奴かね。自虐史観を押し付ける歴史しか教えない」


大国宮は立ち上がり、歩道を歩き出す。共産圏になっても、人の活気が変わるわけではない。人々は表面上の活気に酔いしれているに過ぎなかった。


「本来の歴史教育とは自国に誇りを持つ様に教えるのが普通なのだ。敗戦国でも、他は違うと言うのに。この国は惨めだね」


道行く人を避けながら進む。駅に着き、電車をホームで待つ。


「だから、自信を取り戻す為に最高のパフォーマンスを用意している。高千穂河原に降り立つように伝えてくれ?短波通信でやれば、探知される危険も少ない」


「分かりました。やっておきます」


駅に電車が入ってきて、それに乗り込む。車内は込んでいるが、座席に何とか座ることが出来た。


「さて、その為の準備をしなくては。日向ひゅうがに向かうぞ」


「了解しました、大国宮さん」


電車のドアが閉まり、発射する。福岡の町並みが遠ざかり、やがて筑前を出て筑後に入る。

神話を基にした話です。正直、神話を基にする話は初めてなので上手く書き切れるか分かりませんが、精一杯書く積りです。


この場合、高天原がアメリカで葦原中国が日本になるのかな。


筑紫島は九州の神話における呼称、筑前は福岡周辺の旧国名です。地方は神話における呼称か旧国名でその所の代表的な国名などを使います。 例 近畿なら大和、関東なら江戸



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ