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皇国神話奇譚  作者: 橘花
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消滅の帝国

主体は戦記ではありません。

1945年 8月15日


日本海側から本土に上陸したソ連軍は帝都を目指し、進撃を続けていた。これに、日本政府は出来る限りの国民を国外に脱出させる以外に対応が取れなかった。


奇襲。その言葉が、この攻撃に一番当てはまっている。宣戦布告を駐ソ大使に伝えるも回線切断で情報が本国に届かなかった。そして、今回の攻撃を招いた。



-長門-


「日本中からかき集めた燃料を各船舶に補給して出港させました。残るは、本艦のみです」


長門艦長、杉野修一大佐は参謀からの報告を受ける。長門には重大な任務を担っていた。恐らく、この長門の生涯で一番の重要任務と言える任務であった。


即ち、天皇陛下の御召艦である。妹の陸奥は一度経験しているが、長門は連合艦隊旗艦と言うこともあり、経験した事がなかった。


「艦橋は破壊されて、随分とみすぼらしくなったが。それでも本艦は未だ健在である」


杉野艦長はそう言い、参謀達を見渡す。全員、意気消沈などしていない。戦意もまた健在であった。


「鎮守府より通信あり。陛下の乗る内火艇、只今出艇。右舷に接舷予定なり」


それを聞き、杉野艦長はマイクを掴む。マイクのスイッチを艦内放送に切り替えてから右舷甲板より陛下が乗艦してくる事を伝え、当直以外全員が出迎える事を命じた。



「掲げー、銃!!」


甲板に整列した兵達は皆九九式短小銃を掲げ、21名が祝砲を挙げる。陛下は階段を上がりきり、答礼で返す。


「本艦の艦長を務めます、杉野修一です。本艦にようこそ御出で下さいました、陛下」


艦長の杉野も出迎える。そして、陛下の家族も階段を上がってきた。皇后、それに子女数名。艦長が一通りの挨拶を終え、特別に内装した会議室へと案内した。


その間にも出港用意が進められ、予定通りに横須賀を出港できた。出港したときには、直ぐ近くの陸地で戦闘が開始された時であった。


目指すは、アメリカとの取引地。マリアナであった。



8月18日。


硫黄島の南の海域でアメリカ艦隊と合流。その護衛を受け、マリアナに到達した。そこには、先に脱出した日本人達を乗せた輸送船が停泊している。長門も碇を下ろして停船した。


「機関は止めるなよ。まだ、俺達には仕事が残っている」


長門は停船するが機関停止は行わなかった。そして、陛下とその家族を甲板にて見送った。


「では、最後の務めを果たすぞ。碇上げ、機関一杯。日本本土を目指す」


杉野はそう命じた。長門最後の任務。それは、占領された日本に、最後の一撃を掛けて散る事であった。それが、国の誇りとまで言われて国民に愛され続けた、海軍のアイドル。そして、戦う戦士としての、最後の勇姿であった。


長門がこの後、どうなったかは誰も知らない。ソ連発表では、横須賀に突撃したが、包囲したソ連艦隊と爆撃機の攻撃で撃沈したという事であった。



-サイパン島-


「まさか、燃料不足の日本本土からここまで到達させるとは。日本の技術力も、侮れないと言う訳か」


サイパン島に居たのは、ダグラス・マッカーサー元帥であった。フィリピンにてソ連侵攻を聞き、直ぐに行動を開始した。そして、その過程で日本人が脱出してマリアナを目指すという情報を入手した。


「国民一丸の技術貢献です」


天皇と会見しているマッカーサーは、それを聞いて感心する。ここまで、自国民を正当に評価する国家元首も珍しいと思ったのだ。


「まあ、その件はいいでしょう。無事に脱出できた事をお褒めします。そして、ようこそアメリカの地へ」


天皇とその家族は、アメリカへ向かう手筈となっていた。そのパイプ役が、他ならぬマッカーサーであった。ソ連侵攻を聞いて直ぐに手を打ったのが、マッカーサーであったのだ。


「私の権限で、B29を大改造中です。旅客装備を整え、数時間後には離陸できるでしょう。貴国を焼いた爆撃機に乗るのは嫌な気分かもしれませんが、我慢してください」


マッカーサーは窓の外に見えるハンガーを指差しながら言う。ハンガー内で、B29を大改造しているのだ。


「心遣い、感謝します」



B29は3時間後、サイパン島を離陸。一路、アメリカを目指した。既に住居等も確保されており、サンディエゴ郊外に既に用意されている。他にも脱出した日本人達は各々取引の元、各国へと流れていった。

ここから、80年代まではほぼ史実通りなので一気に飛びます。唯一大きな変化は朝鮮戦争が無い事ぐらいでしょう。

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