完成された食
「・・・さあて、どうするかにゃ」
俺は、周りのマスコ達を見る。各々、魔法を使ったりなにかしら能力を使ったり仲間と協力したりして食材を手に入れている。
今気づいたのだが、詠唱してるやつなんていなかった。何故?
「それにしても、さっき食われた奴、詠唱するなんて馬鹿だーめる」
「本当だび。詠唱なんて超強い魔法にしか必要ないのだびね。あんなの使ったら、獲物ごと消えるだび」
マスコの話し声が聞こえ、確信する。
ああ、あいつホントにただのバカだったんだな・・・。
現在俺にある能力は9つ。
その中でも今使えそうなものは、変形能力、思考分割、増殖、超回復、超解析、この5つだ。
まずは超解析で獲物を見つける。
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名前:ウマグロ
種族:馬魚
性別:♂
職業:主夫
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・・・、もっと別の情報が欲しいのだが・・・・・・。
ウマグロって主夫だったのか、奥さんが仕事してんのかな。
俺がもっと調べたいと念じるとほかの情報が出てきた。
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名前:ウマグロ
種族:馬魚
職業:主夫
性別:♂
スキル
速度上昇
悩み
・妻に仕事をさせているのを悪く感じる
・妻が浮気っぽい(知らない雄を家にこっそり入れていた)
・子供たちの手が付けられない
・今、妖精に狩られてしまいそうな現状
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・・・・・・、あー、うん。詳しく欲しいとは思っていたのだが・・・、その、なんだ・・・、頑張れ、ウマグロ。
「と、とにかく!スキルがわかりゃいいにゃ!。それでいいにゃ!もうちょっと練習して使うにゃ!」
はたから見れば俺は、独り言を言っている痛いやつなんだろう。自覚があるだけいいと思う。
「どうするかにゃ・・・、ん?」
川を見ていると何か違和感を感じた。
川の周りには、マスコ達が『魔法』やら『能力』やらを使って狩りを行っているようだ。
あるマスコは川に火を投げつけ、あるマスコは川に飛び込んだり、またあるマスコは鋭い氷をモリの様に使って魚を取ったしている。
「・・・、釣りをしている奴がいないにゃ?」
そうだ釣りがないのだ、釣り道具らしきものを持っているマスコが一匹もいない。
「試してみるかにゃ・・・」
俺は他のマスコ達から少し離れた場所で釣りをしてみることにした。
木に(何故か)生えた人参らしきものを幾つかと小さな虫を捕まえる。
「こっからが能力の見せ所だにゃ」
まず変形能力を使い腕を長くする。次にその腕の材質を変えるように念じると鉄っぽくなった。
これを・・・、腕からとれるように念じる。
ボトッ
「うおぉ、とれたにゃ・・・」
自分でやっといてだが変な気分になる。
ぐちゅり
「へ・・・?」
腕のとれた方から熟した果実がつぶれたような音がした。
その方向に目を向けると、腕の無くなった場所から細い糸のようなものが出ている。
その糸の部分を中心にぐちゅりぐちゅりと音を立てながらいくつもの筋が出てきた。
赤色の筋肉、白色の筋肉がまるで蛇が駆け巡るように肩から再生していく。手の肉球まで形ができ、血管らしきものができた後に皮膚ができる。最後にその皮膚に一気に毛が生える。
「う、うげぇえ!」
思わず吐きそうになる。だが何も食べていないためかのどのあたりが苦しいだけだ。
「た、確かにぐろいにゃ・・・、もうちょい何とかならんのかにゃ・・・。しかも、オートで治るにゃんて・・・・・・」
忘れよう、忘れようと思いながら作業を再開する。
毛を一本を長くして丈夫な材質に変える。その毛を抜いて。さっきの竿(と言う名の腕)にくっつける。
最後にまた毛を抜いてその毛をまげて固くして、釣り針を作る。釣り針を糸の先端にくっつける。
「完成!だにゃ」
自作(いろんな意味で)の釣竿完成。
さっそく餌をつけて川に投げ入れる。
「ぽーーん!だにゃ」
俺が釣りを始めた瞬間、いきなり獲物がかかったみたいだ。
これは・・・、でかい!
「はぁぁぁぁぁぁぁ!」
軽く力を入れると、竿を上げるのと一緒に獲物が宙を舞う。
上に目をやると、どうも鮭っぽい魚だ。うほっ、いい獲物・・・!
どんっという大きな音と共に獲物が落ちてきた。いそいで、近寄ってお顔を拝見させてもらう。馬っぽいのってなんか嫌だし。
顔を見るとただの魚顔。どうやら普通の鮭のようだ。
「一応、ステータス見るかにゃ。ええと・・・、条件を絞って・・・っと」
名前:ヤケザケ
種族:焼き魚
職業:無職
性別:♂
味
すでに焼けて味付けもしてある鮭。
なんか・・・、自棄になって酒におぼれちゃったみたいな名前の奴・・・
まあいいか、家に帰って食べよう。