威厳あるその姿
ギアノは灰色である。
神でもなく、物の怪でもなく、人でもなく、彼は、魔導師。
灰色の魔導師として、何百年生きてきた。
「おい灰色の魔導師。先程から黙って見ていれば、なにが目的なんだ。」
「これはこれはゼウス殿。こんなちっぽけな国取り合戦によくぞお出でくださいました。」
歓迎する気もさらさらないくせに、ギアノは口から出任せに言う。
「少し前に言いました通り、この世界を乗っ取ろうという次第でございます。」
胡散臭い笑顔で言った。
「馬鹿にするな。そう言うことなら貴様を処分しなければならない。」
無表情ゼウス。
「やれるものならやってみてくださいよ」
ニヤリと笑ったギアノは軽く助走をつけ、崖の上にいるゼウスに向かっていった。
崖のふもとで、「とんっ」と地を蹴ると勢いよく飛んでいった。
「さぁ、殺りあおう」
「望むところ」
ギアノは己の剣をひとなでし、大剣にすると、ゼウスの頭上に振り上げた。
ゼウスはその攻撃を瞬時に出した細いレイピアという剣で受け止める。
レイピアは軽くしなるが、ギアノの大剣を受け止めるには十分な強度である。
「さすがは主神ゼウス殿。」
舌をペロッと出し、おちょくるギアノ。
「貴様も、口ほどには強くないな。」
口の端を釣り上げるゼウス。
「あれぇ、ゼウス殿、アレース殿の力少しもらってますぅ?」
アレースとは、ギリシャ神話の戦いを司る神である。
「私は元々戦いは苦手だからな。奴の力はよく使わせてもらっている。覚えとけ。」
そう言いながらゼウスはレイピアで大剣を振り払い、レイピアの切っ先をギアノに向け、突いた。
しかしそこは灰色の魔導師。
余裕の笑顔で避ける。
そしてゼウスの出来た隙に大剣を叩き込む。
「っ。」
少々驚くも、薄いシールドを張り尚且つ避け、なんとか回避する。
そのような戦いを繰り返していた。
その間、双子はなにをすればいいのかわからない。
ただじっとみつめていた。
「す…げぇ……」
「本物の、ゼウス様…?」
たいして信じもしなかった神というものが、目の前で戦っているのを見ているので精一杯だった。
スラカとトハが融合し、それにゼウスが乗り移り、魔導師と戦っている、というのは、普通ならありえない。
でも二人はそれを目撃しているから否定のしようがないのである。
「…あれ、あっちがギアノだよね?」
「ん、あれ、どっちだ?」
よく見ると、トハの白とスラカの黒が混ざり、ゼウスも灰色だった。
もう少し読み応えを出したいですね。