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白黒ヒーロー兄弟  作者: 毒林檎系大聖母
神の夫婦喧嘩
12/27

決戦前夜祭、優しさ。

それからというと、訓練漬けの毎日であまり互いを思い出す時間はなかった。

人間界に残した家族、友達、そして、街を救うため、日々努力した。

すると、二人は化け物級の魔力を得ていた。


しばらくして、スラカとトハの侍従により、二人の知らない間に日にちが決まった。


トハの城での前夜。

そこでは宴が開かれ、城に住む全ての者が参加した。

城の中はすでに酒の匂いで充満し、未成年の春彦にはキツい場所と化した。

その場所から逃げるため、城の外が一望出来るバルコニーに出た。

なんだかよくわからない甘い飲み物を片手に、秋彦とのことを思い出す。

いつも如何なる時も一緒に居た兄。

それが、明日は向かい合って戦う。



僕に、それが出来るだろうか…。



不安と少しの恐怖。

頭をよぎるのは死。

それも、自分の死ではなく、他の者の死。


戦いなんて、何も生まないのに…。


「どうしました?春彦さん。」

一人寂しく夜空を見上げていたら、不意に声をかけられた。

「トハさん…。」

「一人じゃ、寂しいでしょう?」

そう言ってトハは春彦の横に並んだ。その手にはワイン。トハも酒の匂いを纏っていた。ただ、ほろ酔い状態の美しい乙女というのは、色気を発するもので、酒の匂いなど、ほんの飾りのようなものだった。

「いよいよ明日ですね。スラカ、元気かしら。」

フフ、と微笑むトハ。

「トハさん…。怖くないんですか?」

春彦も不意に質問する。

「あら、なぜ?」

質問を質問でかえされた。

「いや、だって…。死んでしまったらお終いなんでしょう。いくら神様だからって、蘇ることは出来ないのでは…。」

そんな自分の意思で戦ってない人の命なんて、奪えない。

「僕は…。」

「大丈夫よ。私の仲間は、そうねぇ、いわば、主神のゼウス様の魂なの。だから、死ぬ、というよりも、ゼウス様の元に戻る、の方が正しいわ。それはスラカの方も同じ。もっとも、私とスラカは元々、鳩と烏だったから、死ねば、死ぬわよ。でも、死ぬのは時間の問題。そう怖い事でもないわ。」

酒に酔っていて、はっきりしていないが、その後の笑顔で、スラカへの想いが伝わる。


死ぬのは、嫌だ。


でも、相手が死ぬのも、嫌だ。


「平和が、一番ですね。」

ボソッと呟いた春彦。

「ええ、そうね。」

無責任に呟いたトハ。


みんな、想いは一緒なんだ。


不安と少しの恐怖と、ほんの一握りの、希望。

僕はその希望を信じよう。

そう思った。


気付けばトハが酔い潰れていた。春彦が他の者を呼び、部屋に運んだが、春彦は二日酔いしないか心配でならなかった。



後から聞くと、この世界では二日酔いは存在しないらしい。



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