冷え込む夏
秋彦の居る、スラカの城。
基本的に薄暗く涼しい。秋彦は暖かい方が好きなので、腕まくりしている白いパーカーを伸ばしている。
スラカ曰く、夏でも冷え込むらしい。
秋彦はそこで何不自由無く暮らしているが、体が鈍るからとスラカに力を引き出す稽古をつけてもらっている。
ある日の事。
「おぉぉおぉぉぉぉおおお!!!!!」
秋彦は宙を舞っていた。
背中には大きくて黒いーー翼。
パーカーに付くか付かないかの所から生えている。スラカも一緒に飛んでいた。
「すげぇ……」
スラカが感嘆の声を上げる。
秋彦は子供の様にはしゃぎ、天井や壁の寸前まで動き回っている。しばらくして地上に戻り、満面の笑みで頷いた。
「すげぇよ!この力!!ありがと!スラカ」
「まだ初期段階だ。けどまぁ…早いな。」
スラカの魔法をかけた烏でも、ちゃんと飛べるのは3カ月はかかるそうだ。
それを秋彦は1週間で習得した。
「んじゃ、今日はここまで。メシまで部屋にいろよ。」
出口に向かうスラカ。
「でも」
いきなり振り向いた。
「あんま、暴れんなよ。壊れたの直すの面倒だから。」
あ、はい。
見抜いていたスラカを見て、嘘は吐けないと思った秋彦だった。
秋彦の部屋。
もちろん、一人だけ。秋彦は一人でいる虚しさと悲しさを身に染みて感じた。
「…春……大丈夫かな…」
ポツリと呟いた後、何故か恥ずかしくなり回りを見回してみた。
誰もいない事を確認し、窓辺に座る。
外は誰もいない事を表すような薄暗い岩肌。
どんどん虚しくなるっつの。
その時。不意に扉を叩く音がした。
「おーい、秋ぃ。メシだぞ。」
「あ、はーい。」
何この、家庭的な雰囲気。
とりあえず扉を開け、ご飯を食べに行った。
やたらとごちゃごちゃしてる気がします。