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黒き街
暗い日。曇り空が鬱陶しく二人に付きまとう。
顔がそっくりな二人は、某引越し会社のトラックを見送り、新しい匂いのする家に入った。
庭には場違いな綿の実から糸を紡ぐ気違いな母が居て、リビングには煙草をふかしているごく普通な父がいる。また外に出て、荷物を持った。
「ねぇ、秋にい。」
黒いワイシャツに白いネクタイの弟、春彦が聞く。
「あ?んだよ。」
白いパーカーに黒いTシャツの兄、秋彦が聞き返す。
「この街…なんかやだ。」
「知るか。…まぁ、分かるわ。」
そう話していたら雨が降った。
二人が家の中に入ろうとすると、近所のおばさんみたいな人が話しかけた。
「あら、引越して来たの?えぇと…藤岡さん?まあ!あなた達、双子?!」
おばさんは二人にそう聞いた。
「「ええ。そうですよ。」」
二人は声を揃え、踵を返し家に入った。