幼なじみに好きって言いたい
「あー、最悪」
放課後になり、窓に目をやると、僕は呟いてしまう。
「どうした?」
隣に立つ幼なじみの女子が聞いてくる。
「天気予報外れちゃったよ。傘ないし、どうしよっかな」
「傘あるよ」
「いや、いいよ。僕が借りたら君が濡れるじゃん。女子を濡らして自分は濡れないって最悪じゃん」
「じゃあ、相合傘すればいいじゃないか」
何でもなさそうに言ってくる。
僕が困るんだけどなぁ。
「てか、何で傘持ってるの?」
「天気予報が外れてもいいように」
「準備のいいことで」
「何かいい本あった? ユウヒ君」
下校中、幼なじみの女子、アキコさんは聞いてくる。
「書店の息子でしょ、いい本あったら教えてよ」
相変わらず、淡々と、何考えているのか、幼なじみの僕にも分からない。
僕を恋愛対象として見ていない。
自分と違って。
それだけは分かる。
本当に相合傘してるのに、ドキドキしてるのは自分だけなんだもんなぁ。
高校生になったんだし、恋に興味ないのだろうか?
雨がポツポツと降るなか、僕が傘を持ち、下校している。
周りに人があんまりいないのが救い。
家はすぐ隣。
そして、アキコさんは小さな個人経営の書店のお得意様でもある。
「教えろよ、いい本。
ないの?」
「今はどんなの読みたいのかな」
「キミが好きなのでいいよ」
「…そういう言い方はやめた方がいいと思う」
「? なんで?」
好きな人に「好き」とあんまり言ってほしくない。
余計ドキドキするじゃないか。
同じ高校生なのに。
本にしか興味がないのかもしれない。
「傘返すよ」
アキコさんの家の前で、僕は傘を返そうとする。
「濡れるじゃないか」
「いや、走ったら30秒だから大丈夫」
本当にすぐ隣だから、と。
すると、アキコさんは今日初めて表情を崩し少し微笑む。
「高校生になったばかりなんだ。私はもう濡れないし、風邪を引いたらいけないから。
明日返してよ、それでいい」
「わかった」
僕も微笑み、
「ありがとう」
「後でそっち行くから、少し濡れるかも」
「やっぱ返す!」
好きな人の濡れた姿とか本当に勘弁してほしい!
「大丈夫。本は濡らさないから。30秒、だろ?」
「そーいう問題じゃなくて…!」




