最終戦は色々盛りに盛られるって話。
「合わせなさい、2年ぶりだけどできるわね?」
「当然っ!どれだけ一緒に戦ってきたと思ってるの?」
「まさか疑ってるとでも?ただの……確認よ!」
「んじゃあ……いっくよぉ!」
2人同時に時空加速を七倍速で起動、お互いの脚をバネ代わりに二美は空へ、私は下、というか海上へ急加速。
「ビームの速さは光の速さ!加速してようが一瞬は一瞬のままっ!」
「誤射だけ気を付けなさいよ!」
「1発だけなら誤射かもしれない!」
「言ったわね?」
勢いを維持したまま海上で滑走を使いさらに加速、機獣目掛けて降り注ぐ二美の光線に当たらないよう加減しながらすれ違う個体を次々鎌で両断する。やっぱり私は鎌を振り回すのが性に合っているようだ、ユスティアの時の記憶もあるけど大剣は微妙にしっくりこない。
「このまま的当てできるなら楽に時間稼げるんだけど!」
「そうも行かないようね、来るわ」
最初に斬った個体の半身が泣き別れする頃になってようやく機獣達も時空加速を起動。バッカスから送られて来たエキドナの性能は解析と複製に特化しているとあったがやっぱり呪文も例外ではないらしい、まあ想定内だが。
「狼奈達の護衛は……」
「いい皆!?最優先は莉亜さん達を守る事!無理に倒そうとしなくていいからね!」
「分かってる!でも弓がほぼ役立たずなのどうにかならない!?」
「何のためにテトラからステゴロ指導してもらってたのさディアナ!とりあえずエキドナは任せたよミネルヴァ、ユピテル!」
「ええ、機獣は任せ……るどころか合流してくる勢いですね」
「あの2人だけで全て終わってしまいそうですね……なら全員でエキドナさんを相手しましょう!」
「うん、心配なさそうね」
あの子達も随分と成長したものだなんて感慨深い気持ちが自分から出て来た事に少し困惑したのは隠す、こちとらいい加減引退したいってのに……いやまああの子達が私を元に戻してくれるまで引退どころか敵なんだが、どうしてこうなった。
「一々こっちから距離を詰めるのも……面倒ねっ!」
滑走の勢いのまま凍結で海面の一部を凍らせ足場に、そこから跳躍で上空へ飛び勢いのまま鎌を投擲、追尾、分裂、加速を付与しそこら中の機獣を纏めて処理する。しかしイかれてんなこのデバイス、これだけの呪文を詠唱もラグもなく一瞬で組み合わせて行使できるとは。時空加速中は飛び道具が引くほど遅くなる問題点も加速をノータイムで付与できるため解決、正直二美並みに迷いのない自由な奴じゃないと自動詠唱は使いこなせないだろうと思ってたけど案外私にも適性はあったらしい、テルスの補助なしで此処までやれてるのは何故かわからんけど。
「あだぁっ!?」
「あっ」
どうも追尾の対象から二美を外し忘れていたらしい、視界に映った相手全部を追うように設定してたのがマズかったか。まあ当たったのは柄っぽいし大丈夫だろう。
「弍乃ぉぉぉ!絶対わざとでしょ余裕あるからって!」
「1発だけなら誤射かもしれないわ」
「なーにが誤射だ!後お代わりが来そうだけどどうするの!?」
「そうね……久々にあれで行きましょうか。開く前に根本を潰しましょう」
「多分エキドナの家なんだけどそこ……」
「それ以外手段はないだろうし仕方ないわ、私だって好き好んで破壊行為はしたくないしちゃんと直すから安心しなさい」
「ならいいんだけど……じゃ、行くよ!」
どうも開く分には時空加速と同じ速度で行けるらしいゲートの正面に2人で浮かび両手を繋げる。こうするとどういう原理かは知らないが2人分の魔力を一点に自然と集中できるのだ、多分緊急用機能とかなんだろう。二美には「合体技用システムだよロマンないなぁ」とか愚痴られたがなんで合体技撃つ前提でシステム組むと思ってんだか。
「それじゃあ合わせる掛け声「いや別にいらな」いるに決まってるでしょーがっ!「……分かった分かった、あと五月蝿い」褒め言葉として受け取っておく!」
此方側から見て左手側を掲げ、右手側をゲートに構えて砲身を形成、繋いだ手の先に2人の魔力を一点集中し圧縮する。原理的には光線と同じなんだが極度に圧縮しているせいか貫通力破壊力速度全てがおかしい文字通りの必殺技だ、付き合わされてそこそこ使っていた身としては威力がかなり過剰だと思うんだがよくただの機獣にこれ撃ってたな私達。
「チャージ完了っ!なんかいつもより速いね!」
「デバイスのスペックが上がっているのだしそりゃあ当然……よし、行くわよ!」
「りょーかい!最大出力っ!」
お互いの指を強く握りしめトリガー代わりに。ライフリングを通ったかの如く螺旋を描き始めた光弾を2人がかりで制御して……
「バイデント!」
「ラディウスッ!」
開きつつあるゲートの中心に向けて発射。収束したにも関わらず何故か黄色と紫の二つに分かれた光線はぐるぐる螺旋を描きゲートの向こう側へと着弾、繋がっていたであろう機獣の生産プラントが見事にぶっ壊れたらしく爆風がゲート越しにこっちまで来ている。やっぱり少々やりすぎたか?
「ごめんエキドナ後で謝るから今だけ許して……」
「謝罪は取り戻してからにしなさい……というかまずいわね」
「えっ?」
「時空加速の事を考慮してなかったわ、このままだと分離が終わる前にティタノデバイスの制限時間を超過する」
「あっ」
まあ後始末はどうせするのだから今考えるべきは別のこと。7分かかるとは言われたがそれは通常時間の話、時空加速を使えば12分など軽く超過してしまう。しかしとうのエキドナも時空加速は使用している……なら。
「貴方達!」
「弍乃さんっ!?」
「一旦エキドナは私達で引き受けるわ、そっちは時間結界を展開しなさい。時空輪廻があるけど同種の機能だし上書き出来るはず」
「エキドナのあれ上書き出来るの!?」
「流石に複数人で合わせなきゃこの規模は無理でしょうけどね、だからそれを搭載してない私達で役割分担よ二美」
「先に言っておくけど壊したりしちゃダメだからね。エキドナだって痛いよ」
「貴方は私の事切り裂き魔とでも思ってるのかしら?貴方の時みたいに峰打ちで済ませるわ安心なさい」
「やっぱりさっきのわざとじゃん!」
「だから1発だけなら誤射かもしれないわ」
「ああっもう後で覚えてなよ!?まあそういうわけで任せたよ後輩ちゃんたち!」
「お願いします、弍乃さん、二美さん!」
後輩どもを下がらせエキドナを相手すべく急加速。時間結界の展開に体感時間で25秒ほどかかると想定して……うん、一回使って隙を作るか。
「んじゃ先行くわ二美、そっちからすれば一瞬だけど」
「一瞬?何する気「こういうこと」でいやちょっと説明」
時間凍結、Ⅹ
解放
「……んじゃ、やりましょうか」
自動詠唱した瞬間に説明を求める二美も、時間結界を展開しようとする後輩達も、狼奈達を襲おうとするエキドナも、全てが静止する。これが奥の手こと時間凍結、チャージ中はあらゆる呪文が使用不可になる欠点こそあるが別に発動した物はそのまま使えるしチャージを中断してもリセットされるわけじゃないしで呪文を使わないタイミングでちょこちょこチャージしてれば極端な隙を晒すこともなくこうして奇襲で使うことができるのだ。
「と言ってもダメージは全部解除後だけど、許しなさいエキドナ」
今回のチャージはⅩつまり50秒、Ⅻには少し足りなかったが普通に考えて充分な時間だ。正直Ⅶくらいでもよかったかもしれない、加減が効かなくてエキドナをうっかり壊してしまいそうな気もするからな。
「それじゃ……残り45秒、行くわっ!」
残り時間44秒、籠手を錬成し加速で加速、まずはエキドナの顔面を申し訳ないが思いっきりぶん殴る。これだけじゃ大したダメージにならないような気もしたのでおまけで4、5発程追撃。これで確実に吹っ飛ぶ。
「壊さないようにってオーダーも中々に難しいわね……」
残り時間36秒、追撃用に砲身を多数展開し光線を置く。飛び道具の宿命か時間操作中はこれも動く事はない、解除と同時に斉射されるようになっている。装甲が少し焦げる程度に加減は出来ているはずだ、多分。こういう時にテルスの補助が欲しいんだがなぁ……
「ま、請け負った以上しっかりやり遂げないと面倒なのだけど」
残り時間27秒、光線直撃後に当たるよう錬成で砲弾を作り射出。例によって動き出すのは解除後だが光線で多少柔らかくなった装甲には効くだろう。
「……やっぱ溜めすぎたかしらね、加減しなきゃいけないし暇になったわ」
残り時間20秒、既に機獣達は一掃したためこれ以上出来る事がない。手加減しろってオーダーがなきゃ追撃に次ぐ追撃でボッコボコにしていたのだが今回の目的は破壊ではなく時間稼ぎ、極力傷付けないように戦えとかかなり無茶な要求だこと、まあ二美の頼みだしやるけども。
「……あ」
残り10秒、ここまで時間を消費してようやく時間凍結の出力方法がもう一つある事を思い出す。最初からそっちにしておきゃよかったじゃんと思った頃にはもう遅い、チャージはもうすっからかんだし効果時間もそろそろ終了だ。凄く勿体無い事をした気がする、まああの巨体だしあの時みたいに何回か撃ち込まないと……あの時?
「……まあいいか」
残り7秒、どうやらクロノデバイスの補助機能がぼんやりと記憶を復元し続けている事を確信。別に戻してくれるのは構わないんだけどこうじっくりコトコト見たいな感じじゃなく一気にバーっと返してくれる方が嬉しいと思うのは怠惰なのだろうか、だって面倒じゃんよくわかんない記憶が乱立するの。
「ひとまず……」
残り時間1秒、すぐに動けるよう二美の隣に戻って構えを取る。吹っ飛んで2秒、レーザー被弾で1秒、砲弾直撃で更に2秒くらいは稼げるだろうか。なら後20秒どうにか稼ごう。
「し……エ、エキドナァ!?」
「ま、こんなもんでよかったかしらね」
「こんなもんって何したの!?」
「時間を止めて、壊れない程度に殴った」
「莉亜もそうだけど弍乃も随分なんでもありになってきてない!?」
「使えるものはなんでも使うと言ってちょうだい」
「まあ責めてないけどさ……んじゃもうちょっと時間稼ごうか、弍乃」
「そうね、先生達が原稿に集中できるようにしましょう」
「進捗如何ですかーってね!ごめんエキドナ、ちょっと痛いよ!」
「ちょっとどころかかなりだと思うけどもね」
制限時間経過、時間凍結解除。計算通りエキドナはまず頭から吹っ飛び光線、砲弾の順で直撃。おもいっきり仰け反って盛大な隙を作る、これで残り……18秒程か。
「言っとくけど斬らないでよっ!」
「ステゴロは魔法少女の嗜み、でしょう?タッグマッチと行きましょう」
「相手1人だよ!?」
「機械なんだからサンドバッグとでも思いなさい」
「酷い!?エキドナの事なんだと思ってるの!?」
「私からすれば二美の友達以前にただの機獣よ、面識もないものっ!」
「そりゃそうだけど!」
残り13秒。体勢を立て直したエキドナに間髪入れず2人で格闘戦を挑む。効率を考えるなら鎌で切り刻んだ方が速いのだがまあ仕方あるまい、たまには殴る感覚も思い出しておかなければ。
「我慢してねエキドナっ!」
「実際に痛いのは乗っ取ってるティフォンでしょうけどね」
「なら加減……いや、身体はエキドナのだもん、セーブする」
「妙な所で優しいわね貴方」
「弍乃は私の事なんだと思ってるの?」
残り6秒、2人で足並み揃えてラッシュをエキドナの頭部に叩き込む。先程集中攻撃した事もあり結構効いてそうだ、ただこのまま殴り続けても慣れて対応されるだろう、ならば。
「せーので飛ばすわ二美」
「了解、せー……のっ!」
『ーーーー!?』
残り3秒、ラッシュの勢いに任せ2人で回し蹴り。少しフラついてたのもあるだろうがエキドナは再び慣性のまま吹っ飛んでいった、ティフォンが完全に身体を制御できていなかったのだろうか、それとも……
「ん、この感覚……」
「ええ、上手くやってくれたようね」
エキドナを吹っ飛ばしてすぐに身体を覆う何かが剥がれていくような感覚を覚える、後輩達が時間結界の展開に成功したのを確信しちょっとだけ安堵。これで分離までに装神は持つはず。
「ん、なんかエキドナさんが見えるように……?」
「高速移動を解除した……っちゅう訳でもなさそうやな」
「それを封じる結界のようなものだろうね、違う?」
「正解よ、引き続き執筆頑張りなさい先生達」
「おう、しっかり待機しとけよ」
「サボったりしてる人は居ないわね?」
「怖い事言うなサンドリヨン……」
これで狼奈達が奇襲でワンパンされる可能性も限りなく減少、と。想定以上の結果だ、これなら……
「まあ待機と言っても」
「引き続き、時間稼ぎはさせてもらうわ」
そのまま続けよう、第二ラウンドだ。




