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魔法少女はニチアサ展開に付き合いたくないって話。  作者: 暁真
第二部 魔法少女は意志を継ぐって話。
27/51

イロモノ枠は真面目になると凄くかっこいいって話。

「ようやく……終わった……」

『同期に際し起きる異常はこれで正真正銘0、私を使用した装神(マキアライズ)は安全かつ確実に行える。後は三葉にこれを届けるだけだ』

「結局徹夜してしまいましたね……」

『まさかモグラ叩きの如くエラーに遭遇するとは……本当にこれは元のディーデバイスとは別物のようだ』


 三葉さんにあんな事を言った癖にいざ始めてみればエラーに次ぐエラー。装神(マキアライズ)自体は行えるとはいえこの細かい異常の山をどうにかしないと彼女がまともに戦えない事は目に見えているので地道に解消していくしかなく、文字通り消したら増える作業に追われて気付けば朝。まあ、終わらないよりはマシではあったけど。


「この分だとティタノデバイスの同期も貴方よりマシとはいえ時間を取られそうですね……必要な事ではありますが、面倒が勝ってしまいそうです」

『そんな軽口がまだ叩けるのならまだ大丈夫だろう。逃亡生活の時から随分と明るくなったじゃないかシルウィア』

「余裕ができたから……でしょうね。あの頃は頼れる物が何もありませんでしたから」


 弍乃さんに助け出されて、三葉さん達という仲間ができて、私自身変わろうとして……結果として今の私が居る。頼れる物がある、というだけで人は此処まで変われるのだから凄いものである……いや、だからと言って頼りきりではダメなのだけれど。


「ひとまず今日も八雲さんの店に集合、でいいですかね?」

『テトラには小言を言われるだろうがな』

「わざわざ此処に来てもらうのもあれですし……とりあえず後で連絡をしておきましょうか」

『此方からやっておこうか?』

「いえ、大丈夫です……というかテルス、聞きたい事があるんです」

『聞きたい事?』


 三葉さんにデバイスを返すまでは決まってるのだから連絡は後でいい、徹夜で頭が回っている今のうちに聞いておきたい事が一つ。


「今、開けていいと思いますか?」

『……弍乃からは気付いているのなら開けろ、と言われたのではなかったか?』

「そうです。けど……あの人が抱えていた物を全て受け止めるには、あの時の私は脆すぎました。色々あって落ち着いた今なら……大丈夫かなって」


 此処を借りて最初に見つけてしまったあの金庫。弍乃さんが自分で記憶を封じる程に忘れたい、もしくは忘れるしか無かった何かが押し込められている場所。それを開ける覚悟は……少なくとも今はある、これはその確認だ。


『……まあ、そうだな。あの中にあるのは精一杯の強がり、とでも言っておこうか。そこまで覚悟を決めて見るほどの物ではない』

「それでもです。あの人は私が思ってるよりずっと、多くを背負ってましたから。その一部を勝手に覗いてしまう以上生半可な気持ちじゃダメだなって」

『許可は得ているのだから勝手にではないだろう……で、金庫の番号だったな?』

「はい、弍乃さんからは貴方に聞けと……うん?」

『電話だな、紗七からだ』

「珍しいですね……」


 覚悟を決めていざ開けよう、としたところで電話。こういう時の電話は大抵三葉さんか八雲さんからなので紗七さんから、というのはだいぶ珍しい。


「シルウィアです。どうかし『シルウィアさんっ!三葉知らない!?』……はい?」


 通話開始と同時に聞こえてきたのは今までにないほど焦った様子の彼女の声、明らかに異常事態なのは確かだ。


「どういうことです?」

『居ないの!三葉が何処にも!』

「居ないって……家に連絡とかは」

『もうしたの!でも両親も何処に行ったか分からないって!三葉は生真面目だから学校ズル休みするとかもあり得ないし……』

「まさか、襲撃された?しかしこっちには今の今までゲート反応もディーデバイスの反応も……」

『そんな、シルウィアさんも手がかりなし……!?ごめんなさい、そっちでも三葉探してもらえますか!私達も私達で探すので!』

「分かりました。何か分かり次第折り返します」

『お願いしますっ!』

「ええ、では……」


 ……この状況で自分から行方を眩ますなんて事はまずあり得ない。デバイスの同期作業は今日で終わるのだから尚更だ、消えるにしたって最低限自衛用のデバイスは持っていきたいはず。となると……


「……テルス、力を貸してください。このままだと取り返しの付かないことになる」

『分かっているさ、弍乃の二の舞になっては困る』

「何故そこで弍乃さんが……?」

『昔の話だ、あの金庫の中身とも関係がある……だが、今は三葉の安否だ。ログを遡ってゲートの反応を探し出すぞ』

「ええ!」


 弍乃さんの話も気にはなるが三葉さんの安否が第一。最悪の事態になる前に、なんとしても……!














「……?」


 いつもとは違う、硬い感触で目が覚めた。ぼんやりとした視界は自分の部屋じゃなくて……


「……っ!?」


 そこまで認識して一気に意識がはっきりした。そうだ、私さっき……!


「此処、は……」


 辺り一面に広がるのは窓一つない真四角の白い部屋と最低限のインフラ器具。此処が何処かなんて分かるものは何一つなくて、外と繋がるドアは中からは絶対に開かない感じがして。


「……でも、やってみな、きゃっ!?」


 それでも一縷の望みをかけて触ってみようと動き出したけど、すぐに足を引っ張られ転けてしまう。


「いた、た……あ……」


 何が起きたのかと振り返ると右足首が壁から伸びた鎖に繋がれてて……絶対に逃す気はない、ってのが分かってしまった。

 何が原因か、ってのはほぼ自分が原因だ。色々考えすぎて抱えきれなくなった結果あれだけ言われてたのにデバイスすら持たず1人で外に出ちゃって……バッカスの罠にまんまと引っかかって。


「……」


 多分、バッカスはどうなったとしても此処から出す気なんてないんだろう。私は最適化(フォーマット)したところで戦力にならない、だとか弍乃さんに同じ事をやった時は奪い返された、とか言ってたから……シルウィアさんみたいに洗脳してこっち側に、なんて事はしない。交渉材料とか言ってたし何かしら起きるまでは本当に何もないだろうし、何かあったとしてもあんな奴が素直に約束を守るなんて思えない。


「ずっと、此処で?」


 つまり、私はずっと此処から出られないかもしれない、ってことで。


「や、だ……」


 それを自覚してしまった瞬間、何か罅が入ったように息が荒くなった。


「なんで、なん、で……何か、悪いこと、した……?」


 やっぱり私には無理だよ。世界の存亡を賭けた戦争なんて荷が重すぎる。あの時ファウヌスを助けて魔導士(マギスター)になったのはただ目の前の彼を助けたかったからで……私に背負えるのはそれくらいで、託されたものを無理に背負おうとして潰れて。


「どうして、こんな……」


 ……その結果が、これ?何もできてないよりタチが悪い。人に勝手に期待して、なんて言うのは自由だけどできもしないのにやり遂げようとしたのは私で。それが最悪の方向に振り切れた結果こうなって。


「ひぐっ、やだ、やだよ……!」


 気づけば蹲って溢れる涙を必死に抑えようとしてた。誰に見られてる訳でもないし、こうなったのはある意味自業自得だというのに一体何を守ろうとしてるのかは自分でもよくわからない。唯一はっきりしてるのは……今の私は何の力もないただの女の子で、そこから変われる手段なんてないってこと。


「うぁ……あぁ……!」


 怖いのは、バッカス?それとも自分?分からない、今抱いているこの感情はなんなのだろう。色々と混ざって、ぐちゃぐちゃになっていく。そのぐちゃぐちゃになったのが、溢れでて、どうしようもなくて。


「助けてよ……誰か……!」


 気づけば赤子が泣いて親を呼ぶように喚いていた、そうした所で誰か来るわけでもないのに。そもそも今更助けを求めたところで本当に助けてほしかった事はもう二度とできないのに。

 もうこのまま泣き疲れて寝てしまいそう、そんな時だった。


「チッ、事実だったとはな……此処まで堕ちたか、バッカス」

「……ぇ?」


 絶対に手が届かないドアが、何故か開いて。


「先日ぶりだなミネルヴァ……ああ、今の君の様子は見なかった事にする、というかさせてくれ。流石に私にも最低限のデリカシーはある、決して好き好んで乙女の涙を眺める外道ではない」

「……ウルカ、ヌス?」


 開いた先にいたのは心底侮蔑しているような表情を浮かべたウルカヌス……ただ、私を見た瞬間作り物だろうけど爽やかな笑顔になった。


「何の、用……?」

「バッカスが深夜帯にゲートを開いた形跡があってな。もしやと思って監視カメラを漁ってみたら……予想的中、という訳だ。私がティタノデバイスの整備をしている間にこんなふざけた事をしてくれるとはな……!」

「……どうする、つもりですか」


 ……怒っている様子だけどこの人もタルタロスの人間で。利にならない以上私を出すなんて事はしないだろう。惚れたなんて言ってたけど実際はずっと戦ってる訳だし、ウルカヌスはそもそも強い私が好きなんだよね?こんな姿を見たら……


「決まっているさ。呪文詠唱(アーツコード)006、銃撃(バレット)!」

「……あ、え?」


 なんて、思っていたのにウルカヌスは迷う事なく呪文(アーツ)を使い私を繋いでた鎖を破壊して。


「ついてこい、逃げるぞ。まあ君が許してくれるのなら抱えていくが」

「……なん、で?」

「うん?」


 恋人をデートにでも誘うような軽い感じで手を差し出してきた。その手を取る事自体は簡単だ、けど。


「なんで助けてくれるんですか?私敵ですよ?それに見たでしょう!?私、強くなんかない!弱っちくて、何もできなくて……!」


 取れない、いや、取りたくない。私はそれを取っていい人間じゃないんだって理解してしまったから、身体が動かない。


「それを今更聞くのかい、君は」

「だって、私、は……私は……!」

「うーん、こういう時はキスが一番らしいが婚前交渉は流石にいかんな……そうさな、私は強い弱いで君に惚れた訳じゃないぞ?」

「……」

「君のその在り方に惚れた。強い弱いとか、敵とか味方とかなんてどうでもいい。私は言葉では説明できないくらいどうしようもなく君という人間が好きなのだ。だからこそ……組織に背いてでも、君を助けよう」


 でもウルカヌスは無理矢理、けど、優しく私の手を取った。勿体無いくらいの笑顔で。


「まあ元々ないような忠誠がつい先日本当になくなってしまったからな、潮時という奴だ!」

「……そこまで、して?」

「ああそうとも、私は君が好きだ、生涯添い遂げたい程に好きだ。だから助ける!何もおかしな事はない、これは何よりも優先される事だ!」

「……ウルカヌス……」


 ……私がテトラちゃんに言ったことと似たような事か、それくらい彼女は私の事を助けたいと思ってくれているらしい。記憶改竄も元に戻ってないだろうに、命令よりも私情を優先して。それができると疑う様子もなくて。


「ああすまない、ウルカヌスはよしてくれ。それは仕事上の名前だ、つい先日まで本当の名だと思わされていたのも確かだが」

「……え?」


 ……仕事、上?それって、まさか。


「私の本当の名はエンネア。エンネア・アイタレイア」


 この人……


「始まりの魔導士(マギスター)、レムス・ウヌスの背に憧れただけの……ただの人間さ」


 記憶を、取り戻してる?

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