メシアの蓋世
『死体の幸福論』
『幸福とは何か。それ即ち不幸である。正反対だと思うかもしれないがこれは紛れもない事実だ。不幸であれば、幸福は見つけられる。むしろ、不幸でないと幸福など見つけられない。ならば、最も不幸とされる"死"は最も幸福である何かを見つける手段なのではないか・・・』
「はぁ…くだらないな」
自分で書いた文字の羅列を読み返す。
「僕の唯の趣味がこんなにも世の中に影響を与えるなんて…」
趣味で書いた小説。本当にくだらない文字の羅列でしかないが、案外この世に死を望む奴らは多いようだ。そんな奴らから、僕は「メシア」だなんて呼ばれている。大方、死を肯定しているように見えたからだろう。
「僕は単純に、死にたいけど死ぬ程の理由もないからこじつけで創っただけなんだけど。」
最初は非難されることもあったが、"多様性"だかなんだかに守られた。何ともアホらしい。いつの間にか海外にまで本が出版され、一部では宗教かのように崇められているという噂を聞いた時に本当にこの世界がアホらしくてバカらしく感じた。
だから、死んでやろうと思った。
「メシア」とやらが死んだらこの世はどうなるんだろうか。それこそ、集団自殺でも起こるかもしれない。いや、どうせ死ねない奴らばっかりだろう。なんせ、こんな本の内容、本気にして死ぬような奴ならとっくに死んでる。
「結局、死ねない理由ばっかり探してんだなぁ。人間って。うん、やっぱり『死体の幸福論』なんてくだらない。死ねないし、「死体に口なし」なんて言うんだから。そしてきっと、誰も最たる幸福なんて追い求めてない。目の前の偶像に縋るだけで幸せなんだから。不幸に溺れることが幸せなんだから。」




