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第30話 手放すもの、受け取るもの

 そんな感じで9月は過ぎ、あっという間に10月になった。


 まだ日中は暑いけど過ごしやすくなってきたのもあり、礼拝出席者も徐々に増えてきていた。


 それと比例してオンライン礼拝視聴者も減ってきたけど、それでも4~5人は継続して見てくれている。


 10月からはオンライン礼拝担当の当番も決まり、真っ先に当番制にすることを提案してくれた男性、大橋さんを含め6人が名乗り出てくれた。


 この人たちと私で回せば、2ヶ月に1回くらいのペースになるので一人あたりの負担もそんなにない。


 取り敢えずほっとする。


 ただ、先月から始めたインスタと牧師の妻ブログだけど、こっちはあまりフォロワーは増えていなかった。


 私のインスタのフォロワーは30人、このうち多分半数は教会員だと思う。


 あとは他の教会の関係者と思われるアカウントからフォローされてるので、今のところ結局身内で共有されてるだけと言った感じだった。


 そして夕香さんの牧師の妻ブログもあまり読者は増えてないようだった。


 今のところフォロワーは20人、「いいね」はたまにつくけどコメントなどの反応はゼロ。


 でも夕香さんはあっけらかんとしていた。


「無名の一般人が突然ブログを始めても、最初からそんなに読まれないって分かってましたから。小説サイトに投稿してたときも、最初は鳴かず飛ばずでしたもん。でも毎日数人でも読んでくれてる人がいるみたいなんで、今はそれでいいかと思ってます」


 こういう夕香さんのどっしりしたところが頼もしい。


 SNSはもちろん突然バズることもあるけど、そんなのは宝くじに当たるようなものだし、変に炎上するのは絶対に避けたい。


 結局はインスタもブログも地道に更新を続け、少しずつ認知をしていってもらうしかない。


 いつ結果が出るか出ないのか分からないけど、夕香さんもブログを書くのを楽しんでるって言ってたし、私もインスタ更新をきっかけに教会員の人たちとも会話が増えたことが嬉しいから、今は焦らず楽しめる範囲でやるのが一番だと言う話に落ち着いた。


 これが仕事だったら早く結果を出さなきゃって焦っていたと思うけど、いつの間にか結果より過程を大事にしている自分がいた。




─────────────────────




 そして10月の第一日曜日にはまたイベントがあった。


 教会バザーだ。


 バザーは簡単に言うとフリーマーケットみたいなもので、それぞれが不要品や趣味で作ったものを持ち寄り、その売り上げが教会の収入になると言うものだ。


 3月の予算会議でも知ったけど教会の財政状況は厳しいので、こういうバザーの収益は貴重な収入源になっていた。


 行友教会では年に2回バザーが行われていて前回は参加できなかったんだけど、今回は私も何か出品しようと思った。


 何か出せるものはないかと部屋を漁った結果、もう着なくなった服やつけなくなったアクセサリー数点を出品することにした。


 特にあるスカートは百貨店でかなり気合いをいれて買ったものだけど、結局着る機会は少なくそのままクローゼットでしまわれたままになっていた。



 この日は第一日曜日なので聖餐式が行われ、いつもはその後は茶話会だけどその時間がバザーになっていた。


 普段は無料で振る舞われる軽食だけど今回はそれも有料になり、カレーと牛丼がそれぞれ1杯200円で提供されていた。


 礼拝堂内は長椅子が片付けられ、テーブルを置いてそれぞれの商品が並べられ、わいわいと楽しい雰囲気になっていた。


 私と同じように洋服を出品する人、もう使わなくなったけどまだまだ動く家電や手作りの編み物を並べている人、クッキーやマドレーヌを小さい袋に入れて売っている人もいた。


 あちこちで笑い声や、出品したものの説明をしている声が聞こえる。


 いつもとはまた違う教会の雰囲気が楽しい。


 インスタのネタになりそうな写真を撮りつつ、私も自分の服やアクセサリーを並べさせてもらった。


 値段は自分でつけていいらしいんだけどいまいち相場が分からず、例の値の張ったスカートは800円にしてみた。


 他のものに比べたらちょっと高いかな?と心配だったけど、そのスカートを見た小堀さんが


「このスカートいいわね」


 と即決でお買い上げしていた。


 あのスカート、デザインが若い人向けだと思うんだけど、でもおしゃれな小堀さんなら着こなすに違いない。


 ちなみに小堀さんには、例の池畑さんの件のあとに謝られていた。


 池畑さんが牧師に話を持ちかけて断られていたことは小堀さんは知らず、いいご縁になったらいいと純粋に思っただけだった、と謝罪され、私も気にしてないと答えていた。


 本当に小堀さんは悪気はなかったし、この人がいい人だと言うのは私も十分に分かっていたから。



 小堀さんがスカートを買っていったあと、杏奈ちゃんが私のスペースへやって来た。


 杏奈ちゃんとは今も漫画を見せてもらう交流は続いていて、今は漫画は5ページ目まで見せてもらっていた。


 杏奈ちゃん自身も今までは自分で描いて満足してるだけだったけど、私と言う読者ができてからはモチベーションがアップしたと言っていた。


 SNSもそうだけど、やっぱり誰かが見てると言う事実は緊張感とやる気が上がるみたい。


 杏奈ちゃんは私が出品したブレスレットをじっと見ていた。


「それ、気になる?」


 と声をかけると、杏奈ちゃんはうなずいた。


「私、あんまりおしゃれやファッションに興味がなかったんですけど、このブレスレット綺麗だなと思って……」


 そのブレスレットは、大学の卒業旅行で友達と韓国に行ったときに買ったものだった。


 たしか現地で2~3000円で買ったもので、今回も値段は300円にしていた。


 深い青色の石が印象的で気に入って買ったけど、ちょっとデザインが若くなった気がしていてつけなくなっていたのだ。


「この青い色、杏奈ちゃんは色白だからすごく似合うと思うよ。良かったら値下げしようか? あ、でも教会の売り上げになるから勝手に下げられないか……」


と私がぶつぶつ言っていると、杏奈ちゃんは軽く笑ってそのブレスレットを手に取った。


「分かってますよ、大丈夫です。これいただきますね」


 そう言って杏奈ちゃんはそれを手に、会計カウンターへ行っていた。



 ……そう言えばあの卒業旅行の時、彩希さきも一緒だったな……。


 手術が決まったと言う報告があって以降連絡がないけど、あれからどうなったんだろう。


 ちょっと気になるな……。


 そんなことが頭をよぎった。




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