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星が降り、花が揺れ、

 二枚の真紅の花弁が、ひらひらと舞い落ちて水辺に浮かんだ。


 風が穏やかに、二枚の花弁の間を吹き抜ける。風波が微かに起こり、二枚の花弁がそれぞれ逆方向に揺れながら離れた。


 一枚は、花が咲き誇る場所へ。


 一枚は、星が降り注ぐ場所へ。


 風に誘われるがままに、還っていった。


 海の上では相変わらず、風が踊り、花が舞う。時々、夜空は星に彩られた。


 太陽に照らされる海はキラキラと宝石のように光り輝き、月が浮かぶ日は海に星が落ちた。


 花は芽吹き、やがて枯れた。しかし、それに気が付かないほどに、周りは鮮やかに染まっている。


 誰かの願いを込めた星は、どの星よりも光り輝き、やがて海に落ちて消え去った。


 それを絶佳と言わずになんと呼べば良いのだろうか。


 私は、いつか海に還る。


 生命の源であり、あらゆるものを育み出し、送り出す場所ーー「母なる海」に。


 誰にも知られぬまま、静かに還る。


 私はそれを、寂しいとは思わない。還る場所は、皆同じ。遅いか、早いかだけ。


 それでも、寂しいと感じるのであれば、夜空を見上げるといい。空に輝く星々もまた、誰かの命である。


 海に還る者も居れば、空に還る者もいる。そして、大地に還る者も、また存在するのだ。


 身の回りには、生きた者たちが大勢いる。


 花も木も、空も海も、全てが生きている。


 そして、全て還る場所は決まっている。


 だから、もう少しゆっくりこっちに来ると良い。




〜〜〜〜



 星が降る。誰の祈りであり、誰かの命だったもの。


 花が揺れ、風が吹き、命が還る。


 私たちは気づかぬうちに、祈りのなかで生まれ、願いのなかで泳ぎ、そして静かに、海へと還っていく。


 いつか来る夢の終わりを知りながらも、今日もまた生きていくのである。

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