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星が降り注ぐ場所

 星が、夕立のように降ってきた。真っ暗だった空は、たちまち青く光る彗星が彩りを与えた。


 花が、空に咲くかの如く。花弁が宙を踊り子のように舞うように、今度は星が夜空を楽しませた。


 彼は、目を見開いて夜空を見上げた。星を散らすように、ぱちぱちと数回瞬きをする。そして、感嘆の声を上げて、両手を横に広げ、降り注ぐ星なんかを捕まえようとしたりして。


 花弁が蝶のようにひらひらと動くように、彼もまた、視界を巡らせる。


 最早、星が照らしているのか、彼が光っているのかわからないほど、辺りは眩しいほどに明るかった。


 彼は、そんな中で精一杯にはしゃぎながら、月のように静かな笑みを空に浮かべていた。


 星が雨のように降り注ぐ場所は、幻想的だったが、墨のようにすぐには消えない美しさであった。それは、圧倒的な景観であった。


 彼を祝福するように、星は空から溢れそうなほど降り続けた。



〜〜〜〜〜


 風が、星を攫うために吹き荒れていた。そのせいで、僕の髪は激しく乱れていた。星の光に照らされて、天の川のような燐光が無機質な髪を彩る。


 風は吹き続けているけれど、星は諸共せずに、還るためにこの地へと降り続けている。


 まるで、蛍が一斉に飛び立っているみたいだった。


 一望無垠ーーそんな言葉が脳裏を過ぎった。


 さっきまでは、何もなかった夜空は今、地平線が見えるほどに照らされていた。


 世界が、星に侵略されているような錯覚を起こす。


 僕は、地に足が着いた気分で、青く澄み渡る夜空を見上げた。


 風が僕を無視して、星目掛けて吹き続ける。


 空は、花が咲くように色とりどりに輝き続けていた。


 星は、誰かの祈りだったのかもしれない。そんな気がして仕方がなかった。


 夜空に降り注ぐ星たちは、名もなき願いの結晶のようで、僕はその下で、静かに立ち尽くしていた。


 ……星の如く澄み渡り、汚れも濁りもない綺麗な瞳だけが、星の行く末を知っていた。


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