花が咲き誇る場所
花畑は、真っ赤な波を重ねた海みたいだった。太陽の光に照らされて、淡く花が光っていた。
彼女は、柔らかい赤色の海の中を夢中で、踊り子のように舞っていた。くるくると、楽しげに回って踊る姿は、まるで風の妖精のようだ。
彼女は、両手を太陽に伸ばした。目を細め、春の陽だまりのような笑みを零していた。目は細まっているのに、星のようにキラキラと輝きを放っているのが遠くからでもわかった。
包むような風が、真紅の花弁を青空に攫う。
赤いカーネーションが咲き誇る場所は、幻想的で雪のように、直ぐに消えてしまいそうな不安定さがあった。そんな危うさすらも、美々しい。
雲ひとつない青空の下で、彼女は永遠に祝福を受け続けていた。
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風が私の髪を悪戯に攫おうとする。スカートがふわりと広がるように、髪が靡いた。陽の光に照らされて、透明感が際立つ髪は、天使の輪と呼ばれる光の輪が浮かんでいた。
風が遊びに来る度に、真っ赤な海は音を立てながら波を起こす。惚れ惚れしてしまうほど、爽快な風景。
風光明媚ーーそんな言葉が、よく当てはまった。
まるで、布団のように柔らかな地面に、堪らず寝転がる。ふわりと、カーネーションの甘い香りが私に纏わりついた。
どこか、夢見心地な気分で、碧空を見上げた。
風が吹く度に、甘い香りと共に花弁が踊り子のように舞う。花が肌に触れて、少しくすぐったかった。
揺りかごのように心地が良い。私の周りにあるもの全てが、私を眠りの海へと誘う。
寝返りを打ち、視界を浅葱色ではなく茜色に染めた。ピントが合っていないせいで、浅紅色にも淡い白色にも見えた。
目を閉じる。赤い波に誘われて、意識が夢の中へと吸い込まれていった。
……閉じた瞼は、花に赤く照らされて、大きい花びらのようだった。




