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それから1分後。
塩辻と俺は宇宙服を着て小さな酸素ボンベを背負っていた。
そう、宇宙服。ヘルメットとツナギが一体化したアレだ。
火が付いている中、換気扇だけが外気と繋がってる状態では酸欠になる可能性がある。また、煙が発生し、小物が飛んでいるので眼球や皮膚を傷める可能性も高いということで塩辻が貸してくれた。
本物かどうかは知らん。
「じゃあ僕はスパイダ―・エアコンのスイッチを直接切りに行くから湖竹君はリュックの確保を」
「あいつら俺達を攻撃したりしないよな」
「人間の安全を最優先にするようプログラムしているからね。そこは多少バグッても変わらないから攻撃されることはないはずだよ。さ、入ろう!」
「おうっ」
ドアを開け、2人で中に入る。
「おおっ!」
「ええっ!?」
ドアを開けて空気の流れが変わったせいかそのタイミングで俺のリュックの近くの塵旋風に火が付いた!
炎の渦巻きになってる!これ本格的にヤバいぞ!?
と思った瞬間横から衝撃が来てバスルームの脱衣室のドアに叩きつけられた!もう1本の塵旋風かっ!
「ブベッ!」
「湖竹君!?ってわあっ!?」
視界の隅で塩辻が更に別の塵旋風に弾き飛ばされて部屋の隅に転がっていくのが見えた。塵旋風3本に増殖してんじゃねーかっ!
「塩辻!大丈夫かっ!?」
「痛たた、とりあえず怪我はしてないよー!」
塩辻に大きな怪我は無いようで良かった。が、
「絶対あいつら意図的にやってるだろ!俺達には攻撃してこないはずじゃなかったのかっ!?」
「僕にも訳が分からないよー!」
スパイダー・エアコンはと見ると2機は元気に前脚を上げて「キシャーッ」と威嚇のポーズを取っていた。ふざけやがって……
と、炎を上げている塵旋風がリュックに近づいている!再度突進しようとするもさっき俺を弾き飛ばした塵旋風が進路を塞ごうとする。
そいつを迂回しようとした瞬間
ヴオン!ドンッ!
「ガアッ!なっ!?」
バキイッ!
なんと塵旋風が蛇のようにグニャリとうねって俺を再び脱衣室のドアに叩きつけたのだ!俺の身体に大きな怪我はないが、衝撃でドアのどこかが割れたようだ。あの渦巻きの柱、真っすぐ立ってるだけじゃなかったのかよ!?
そこでふと気付く。
なんで叩きつけた場所が2度とも脱衣室のドアなんだ?
偶然?いやそうじゃない。
もしかしてそういうことなのか!?
ある可能性に気付いた俺は、更に迫る塵旋風の柱を前に、後ろ手でドアを開け脱衣室の中に逃げ込んだ。
が、直後にうねった塵旋風が今度はバスルームのドアに俺を叩きつける。
「ガハッ、クソッ」
ふらつきながらも立ち上がって今度はバスルームのドアを開けると、俺を襲っていた塵旋風がバスルームに突入していく。
その横の僅かな隙間をすり抜けて俺は脱衣室から飛び出した!
今度は塵旋風は俺を襲ってこない!
よし!
と思ったが前を見ると炎の塵旋風が移動してその火でリュックが燃え始めてた!
「間に合っ、おおっ!?」
次の瞬間、ダッシュしている俺の頭上を越えて大量の水が渦を巻きながら大蛇のごとく炎の塵旋風にぶちあたり炎を塵旋風ごと消滅させた!
そう、バスルームに突入した塵旋風がバスタブに残った水を巻き上げて炎の塵旋風を消火したのだ!
俺はそのまま走り込んでリュックを拾い上げる。
「やー間に合ったみたいだねー……リュックびしょ濡れだけど大丈夫ー?」
塩辻から呼ばれたので振り返る。スパイダー・エアコンは2機とも停止に成功したようだ。
「あー、中身は多分無事。このタオル借りていいか?」
「どーぞー」
こうしてとにかく俺は留年とPC破損の危機を脱したのであった。
次回、色々謎な部分が解き明かされます。