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 ミステリコメディSF ※タイトルからお察しいただけるかと思いますが某節足動物についての説明や描写がありますので苦手な方はブラウザバックをお勧めします。

「あははははー、湖竹(こたけ)君よく来てくれたねー、どうぞー」


「おう、お邪魔しますって暑っ!何この部屋!」


「さっきまでストーブつけてたからねー、さー入って入って」


「この暑い日に何やってんの!?嫌がらせ!?おい!腕を引っ張るな!」


 自称発明家、俺に言わせればマッドサイエンティストである塩辻(しおつじ)に「湖竹くーん、新しい発明品のモニターしてくれるー?バイト代弾むよー1日20万円ってことでー」と誘いを受けたので塩辻の研究所兼自宅に来たのだが、のっけからこちらに喧嘩を売るかのような出迎えを受ける。

 塩辻は室温50℃は越えようかという部屋に俺を引きずり込むとくるりと俺の後ろに回り込んでドアを閉め、スマホをポケットから取り出して言った。


「嫌がらせじゃないよー。今回の発明品の性能を実感してもらうためさー」


「発明品の性能?ああ、あれがそうなのか?」


 塩辻がスマホをいじると、部屋の奥から2機の小型ロボットがシャカシャカ歩いてきた。

 そのロボットはおもちゃの多脚ロボットのような8本足で、その胴体部の上に高さ30センチほどの六角柱が乗っている形状だ。

 それぞれ躯体に『1号』『2号』とロゴがプリントされている。


「そうだよー。新発明の高性能自律型スパイダー・エアコン」


「エアコン?あれ自体がエアコンってことか?」


「そういうことー。あ、そろそろ効いてきたねー」


「お?ああ、そうだな…………いやこんな早く涼しくなる!?ほんとにあのちっこい2機しか稼働させてないのか!?」


「うん、性能確認のために部屋のエアコン取り外したし。廃熱のためにキッチンの換気扇を回しているくらいだよ」


 言われてみれば部屋に設置されてたはずのエアコンが無くなっていた。

 それにしても塩辻の発明品らしいデタラメな性能だ。この部屋の広さキッチンも含めて30畳分くらいありそうなんだが。


 その後の塩辻の説明によると、この急速な室温変化は単に冷却機能の性能が高いためというだけが理由ではないらしい。

 2機が『人間にとって快適な室内空気の調整』を目的に、家具の位置をはじめとする部屋情報からAIで解析し、その時々の最適な位置取りをした上、送風角度などを調整することによって最小のエネルギーで最大の効果をあげることが可能なのだという。

「省エネ、エコっていうのはプレゼンには便利な言葉だしねー。ま、僕は言葉だけじゃなく実践もしてる発明家だけどー」

 とは塩辻の弁だ。

 もちろんカメラやセンサーで人やペットにぶつからないよう制御されている。

 スマホのアプリで起動・停止はもちろん、自動運転から手動運転に切り替えも可能だとのこと。


「だから多少の障害物や段差があっても素早く動ける形状にしたんだけど何かデザインが評判悪くてねー。モニターやってくれる人がなかなかいないんだよねー」


「そりゃそうだろう。っつーか、外見を蜘蛛(スパイダー)型にした時点で分かってただろ」


「機能を追求したら偶然このデザインに行きついただけなんだけどねー」


 要は小型犬大の蜘蛛型のロボットが2台シャカシャカ室内を動き回ることになるわけだ。

 俺はあまり気にしないが不気味に感じる人の方が多いだろう。


 と、そこで気が付いた。


「なんかハサミ型のアームが1対ついてるんだが。これどっちかって言うとカニ型じゃないか?」


「違うよー。それは『夾角』っていう主に食物を口に運ぶための付属肢で、蜘蛛や(さそり)が属する『夾角類』の特徴的な器官なんだよー」


「やっぱり分かっててこのデザインにしてるんじゃねーか」


「あははははー、ま、とにかくモニター頼むねー」


 そんなやり取りの後、俺のスマホと同期させてコントロール可能となった『3号』『4号』の2機と専用充電台を入れたバッグごと俺は塩辻の運転する車でアパートに送ってもらったのだった。


 ◇◆◇


 翌日の夕方、俺は再び塩辻の研究所兼住宅に来ていた。


 昼過ぎに塩辻から

「もしかして昨日渡したバッグにメモリ入ってなかったー?スパイダー・エアコンとは別の研究で必要なんだけど間違って入れちゃったみたいなんで確認してねー」

 というラインが入っていたのだが、見逃してしまっていた。

 夕方に気付いて返信を入れたのだが既読が付かず、電話しても出ないので直接返しに来たのだ。


 チャイムを鳴らすとハーフパンツに薄いパーカーを羽織った塩辻が顔を出した。髪の毛が濡れている。


「ん?シャワーでも浴びてたのか?」


「いやー、さっきまで水風呂に入ってたんだよー。今日は温室での作業が長引いちゃってねー。熱中症寸前までいったみたいでさ。スパイダー・エアコンを効かせたこの部屋でも体の熱気がすぐ抜けなくてー」


「ああ、風呂に入ってたんで連絡がつかなかったのか。あ、ラインで言ってた別の研究のメモリってこれか?あまり同時並行でいろんな研究に手だすなよ?」


 こいつは頭が良すぎるせいか同時並行で全く違う研究をしようとする。それが原因で失敗した場合に巻き添え食らうのは大概俺なのでやめてもらいたいのだが。


「大丈夫、大丈夫。いやーバックアップ取ってないとこがあってさ、またやり直しかと思っちゃったよー、ごめんねーわざわざ届けてもらって―。あ、上がって上がって」


 塩辻に誘われるままに部屋に入り床にリュックを置いて椅子に座る。シャカシャカとスパイダー・エアコンが稼働している室内は前回と違って快適だ。


 塩辻はメモリを機械(自作PCと思われる)に差して数十秒作業し、「よしよし問題ないねー」とつぶやくと立ち上がって冷蔵庫に向かって歩き出す。


「お詫びにアイス奢るよー、湖竹君」


 と言いながら冷蔵庫の前に立ち冷凍庫の扉をあけたのだが。


「あれー?全部食べちゃってたっけ?まあいいや、コンビニ行こうよ」


「それはありがたいが、せっかく水風呂入ったのにまた外に出ていいのか?」


「身体の熱気は治まったしねー。近所だから平気、平気。さー行こうー」


 塩辻と俺は部屋を出てコンビニに向かった。


 このときスパイダー・エアコンの電源を切っておけば……


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