3 観光記録のようなもの
次の休みの日。
俺は一人でその公園に行ってみることにした。
夜の方が怖いと思うのだが、ビビりな俺は昼間の時間帯をチョイス。
ヘタレにもほどがある。
スマホのアプリで目的地を検索。
公園の場所まで自転車で数十分の距離。
結構、距離がある。
俺は自転車に乗って、その公園を目指した。
空は雲一つない青天。
初春の爽やかな風がほほを撫でる。
自転車っていいよな。
どこまでも行けそうな気がする。
東京に住んでいたころは、建物ばかりで息が詰まった。
今は何もかもから解放されて自由な気持ちにひたれている。
背中に羽根が生えたよう。
駅前を少し離れると、建物の数が途端に少なくなっていく。
住宅地を抜けたら見渡す限り真っ青な田んぼが続く田園風景。
都会では絶対に拝めない、田舎ならではの景色。
田んぼの中を通る幹線道路を走り、目的地である集落を目指す。
背の高い鉄塔が道しるべのように続いていた。
山端の集落。
古い日本家屋が立ち並ぶ。
あそこに目的の公園があるはずだ。
集落に入ると空気が変わった。
古臭いというか、なんというか。
独特な匂いがあった。
建物はほとんどが木造で瓦屋根。
どの家も敷地が広くて納屋や車庫が住居とは別にあり、新築の家が同じ敷地に建っている土地もあった。
ひと気はまばら。
でも、全く生活感がないわけじゃない。
停まっている車やトラクターは比較的新しい物ばかり。庭に雑草は生えておらず、よく手入れされていた。例の公園は廃墟に囲まれているはずだが空き家は見当たらない。
場所を間違えたかな?
それともガセネタ?
なにげなく集落を自転車で散策していると、トンネルにたどり着いた。
レンガ造りのアーチ型トンネル。照明はなく、真っ暗でかび臭い。遠くの方にうっすらと出口の光が見える。
真っ暗闇の穴がぽっかり口をあけている光景を目の当たりにして、俺の冒険欲がくすぐられる。
これは入ってみるしかないでしょう。
自転車のライトをつけてトンネルへ突入。
中に入ると途端にひんやりとした空気に身体が包まれる。
不気味さとかは特に感じず、むしろ期待感の方が強い。
ここを抜けたら何があるのか。
ひたすらワクワクする。
遠くの方に光が見える。
あそこまで行けば向こう側に抜けられるはずだ。
ペダルを勢い良くこいで一気に走り抜けた。