10 人間なんて、そんなもの
数日後。
俺はある記事をウェブサイトに投稿した。
田淵に頼んで資料を集めてもらい、集落の歴史についてまとめた。
記事では撮影した写真と、提供してもらった白黒写真を添付して、祭りが行われるようになった経緯を事細かに解説する。
例の集落で行われていた祭り。
使われていた仮装道具。
ネットで流れていた噂。
誰かが持ち出した写真を公開して噂を流したようだが、実はただの仮装でしかなく、怪異でもなんでもない。
俺が執筆した記事は、ネットの噂を完全否定するもの――と言うより、ただ単に事実を報告するだけの内容だ。
その記事のリンクをいたるところに貼りまくった。
すると続々と反響が寄せられる。
記事は瞬く間に拡散され、まとめサイトやインフルエンサーも注目。
界隈でちょっとした話題になった。
拡散された情報は、既存の情報を塗りつぶしていく。
正体不明の人間のようなものたちはただの仮装した子供たち。
真実はいともたやすく不可解な噂を駆逐していく。
かくして、古い写真を元としたネットの噂は蝋燭の火を吹き消すように霧散し、跡形も残らなかった。
種明かしをしたマジックが陳腐化するのと同じだ。
真実を明かしてさえしまえば、皆興味を無くす。
人間なんて、そんなものだ。




