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ここベッケルド王家の者はなぜか皆目の覚めるような青髪をしていた。なのでこの国では、ロイヤルブルーを使えるのは王家だけと決まっている。紺や水色なら使用できる。
言葉も同様に『青』と使えるのは王家縁のものだけ。
青薔薇蕾会
現女王陛下が学園生時代に友達を作りたくて設立した会だ。王女の友人ということで厳しく審査されていたことが、現在、マナーや社交の厳しい合格基準となっている。
このような会の歴史は知らずとも、王家の誰かが設立したものだと考えるべきである。
『青の名を冠する会など、王家を汚す愚か者だ』
彼らはそう勘違いし、彼女たちを無知だと嘲笑うつもりでいたのだ。
「これだけの証人がいるのですもの。言い訳は必要ないわ。不敬罪で罰金三千万ルドルね。支払いが終わるまで鉱山よ。
連れて行ってちょうだい」
準備されていたかのように四人は近衛兵に連れ出される。否、準備されていたので、滞りなく連れ出された。その四人に『殿下』が入っていることに誰も疑問を持たない。
青薔薇蕾会に関する不敬罪でなければ、女王陛下が決めた『ルカナーテが王太子妃である』ということに反対の意を表したとして反逆罪とする予定であった。
いずれにしても鉱山行きは決定事項であったということだ。
ルカナーテはメイセットを『殿下』ではなく『様』と呼んでいた。これは親しみを込めたわけではなく、先日の八家の当主会議ですでにメイセットの王家廃籍が決定したから『殿下』と言わなかっただけである。
女王陛下が現れた時点で何かを察した四人は何も抵抗せず近衛兵に連れられて行かれた。暴れれば罰金はもっと増えていたに違いない。それでも、三千万ルドルの支払いには数十年かかるだろう。
女王陛下が目配せすると三人の壮年の男たちが前に出た。
「ニーティル嬢」
ホセカロの父親メイテント侯爵は騎士団団長だ。ホセカロはメイテント侯爵家の三男でニーティルのツータ辺境伯へ婿入り予定であった。
「お父上との話し合いは済んでいる。昨日、ニーティル嬢の婿候補が五人、辺境伯へ向かった。その中にニーティル嬢と辺境伯のお眼鏡に適う者がいるとよいのだが。
そやつらがダメなら、また別の者を送るので、遠慮なくダメ出ししてくれ」
メイテント侯爵は騎士団からニーティルの年齢に合い、実力があり、誠実そうな者を辺境伯へ送った。婿入りできなかった者は、騎士団に戻るでも、辺境伯軍に残るでも自由に決められることになっている。
「お気遣いいただきまして、ありがとうございます。ゆっくりと検討させていただきます」
ニーティルがにっこりと笑うとメイテント侯爵はホッとしたように眉尻を下げた。
「スージーヌ嬢。申し訳ない」
パーシットの父であり宰相であるアビネン公爵は外聞もなく頭を下げる。
「宰相様! お止めください!」
「だがね、私としては、君を失いたくないのだ。紫会の活動から君の聡明さには注目しており、嫁に来てもらえることを楽しみにしていたのだよ。
どうだろうか? 私の補佐官として王城で働いてみる気はないかい?」
「ほ! 本当ですかっ!?」
女性文官は何人もいるが、宰相補佐官にはまだ女性はいない。
「ああ。本当だとも。来週にでも王城へ手続きに来てくれ」
「ありがとうございます」
スージーヌは涙を拭いた。喜色めいた声は紫会のメンバーであろう。女性文官の高待遇出世道が開かれていく夢が広がる。
「イェリア……」
「おじさま……」
イェリアとマッケイ侯爵。二人は目を合わせると寂しげに笑った。
イェリアはノイシャール公爵家の一人娘だ。ノイシャール公爵家とビードのマッケイ侯爵家は親同士の仲が良く、イェリアとビードは幼馴染である。その縁でビードはイェリアの家に婿入りする婚姻であった。
『バンっ!!』
「イェリア!!」
女王陛下たちが入ってきた扉が開き、ビードに似た面持ちの美青年が入ってきた。




