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「道を開けよ!」


 突然舞台から一番離れた扉が開かれ、近衛兵と思われる騎士が声を張り上げる。その扉から舞台まで真っ直ぐに人垣が割れた。


 メイセットから扉の真ん中に立ち両脇を近衛兵に警護される人の姿が見える。その人垣が最礼する。


「母上……」


 メイセットたちは最礼する生徒たちの間を優雅にゆったりと歩を進めてくる人を見て顔を青くして立ち尽くした。


 皆に最礼される方の後ろを歩いていた一人がその方を追い越しかけて小さく礼をし、貫禄ある速歩きで舞台へ登る。


 動けなくなっている五人を舞台上から突き落とした。五人の中には『殿下』も含まれているのだが、この御仁には関係ないようで落とし方に容赦がない。ビードとホセカロなどは蹴飛ばされ落とされた。


「がっ!!」「きゃあ!」「ぐわぁ!」「なっ!」「ブシュッ……」


 五人は床に倒れ込む。その御仁は自分も降り立つ。


「ぐえっ!!」


 その際わざとホセカロの上に降り、力一杯踏みつけた。


「女王陛下より上に立っていることにも気が付かぬとはこの愚者どもがっ! 恥を知れっ!」


 五人を突き落としたのはホセカロの父親メイテント侯爵。彼は騎士団団長だ。


「陛下。申し訳ありません」


 ゆっくりと歩いてきた女王陛下に頭を下げた。


「団長。ご苦労さま。手数をかけましたね」


「とんでもないことでございます。恥ずかしながら我が家に関わる愚か者もおりますれば」


 ホセカロは『息子』とも言ってもらえないことに驚きを隠せない。


「みなも顔を上げて」


 青髪を美しく結い上げ普段使いの細いティアラを冠した女王陛下が微笑み立つ。


「ルカ」


「はい。女王陛下。

生徒を代表して、国の太陽たる女王陛下にご挨拶申し上げます。女王陛下におかれましては本日も大変麗しく……」


 ルカの言葉で生徒が一斉に再び最礼する。


「ありがとう。ルカ。みなも。頭を上げてちょうだい。

それで?」


 一人の女子生徒がスージーヌに、スージーヌがルカナーテに書類を渡す。ルカナーテはそれを頷き受け取り、女王陛下の前に膝を曲げてそれを捧げる。

 女王陛下は優雅に受け取った。


「ルカも楽にしてちょうだい」


「はい。ありがとうございます」


 ルカナーテは皆のところに戻る。


 女王陛下が紙を捲る音だけが響く。


「そう……」


 女王陛下は読み終わった書類を脇に控えていた壮年の男に渡した。その男とさらに脇の男も覗き込み読み始める。二人ともすぐに眉間にシワを寄せた。


「無知を晒しているのね……」


 女王陛下の冷たい視線に床に座っているメイセットは顔も上げられない。


 その書類は卒業式終了の後のことを速記されたもので、紫薔薇蕾会のメンバーが書いたものだ。メイセットたちとルカナーテたちのやり取りの言葉が書かれている。

 速記者に聞こえる範囲なので、ルカナーテたちの小声話は書かれていない。


「とりあえず、その罪人を王城の牢へ」


「「はっ!」」


 ベリアナは団長にすぐに手刀を当てられ、近衛兵に担がれ連れていかれた。


 自分たちが守ろうとしていた者が女王陛下にはっきりと罪人と言われ連行されることをあ然と見送る四人。


「そうね。一番簡単な説明をすると、青薔薇蕾会を設立したのは二十年前のわたくしよ」


 四人は白を通り越して土気色になる。


「ね! 不敬罪。決定」


 可愛らしく微笑む女王陛下はロイヤルブルーの髪につけられたティアラをスッと撫でた。

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