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第十四話 死者は生者に力なんて持ちえない

 数時間後には、鳴はこの森の主と謁見していた。主はアウグストと名乗っていた。やはり他のエルフたちと同じ位の年齢に見えたが、それでも立ち居振る舞いには他のエルフにない貫禄があった。

 アウグストは巨大な切り株の上で座禅を組みながら座っていた。短剣を腰につけた二人ほどのエルフが護衛としてその左右に侍っていた。

 外の世界の貴族や王侯にありがちな虚飾が一切ない。高価そうな純白の絹、帯にいくつか勾玉のような石づくりの飾りを身に着けている。

「あなたが客人としてこの森に来られた人か」

 鳴はたてひざをついた。フレデグンドによればそれが礼儀のある姿勢とのことだった。

 アウグストの声も、優しげな響きの中に一種の雄々しさがある。だがそれも人間のようでいて絶妙に人間ではない、何か別の荒々しさ、得体のしれない不気味さを感じさせるのだ。明らかに、

 その声を聞けば聞くほど、『丸耳』がエルフたちを恐れ、憎んだのも分かる気がした。

「はい。南の国から旅のため、はるばる参りました」

 本来こういう風に自己紹介するのは好きではない。誰かに恩を着せるようだから。

「聞かせてもらったよ。何でもあの光輝く鋼の馬を持つものだとか」

 エルフに何を聞かれても、鳴の答える言葉は大抵、メルキオールからの受け売りだった。

「いえ。私には、さほど貴重な財産ではありません」

「以前にもその馬を持つものがこのアルカディアに現れた。彼もまた、これも一重に神の恩寵というべきだろう」

 神。しかしそれは、外の人間たちが拝んでいるものとは違う。何かに喜んだり、祈ったりするときに称える名前が違う。

 だがそれだけで済みはしない。神の違いが、人として生きていく上で全てを決めてしまうのだから。

 アウグストはフレデグンドを呼ぶと、こう言いつけた。

「フレデグンド、彼に無礼のないよう接してくれ。そして彼に、この里についての様々なことを教えてくれ」

「承知いたしました」

 フレデグンドは深く頭を下げ、ふと頭上を見上げた。高くそびえる巨木に、宝石や金属など、数々の装飾が巻き付いていた。彼らを支配する神に、自分たちの感謝を伝えるかのように。


 鳴とフレデグンドが戻る頃には、竪穴式の住居から人々が這い出ていた。

 鳴、それから彼が連れるブーケファルスの姿を好奇のまなざしで見ていた。だが、一番最初に鳴の目の前に立ちふさがったのは例の少年。

「さっきのは許さねえからな!」

 ディエゴは腕を組んだ。

「ああ、それでいい」

 鳴は彼を恨む気にはなれなかった。あの時点で鳴は単に侵入者でしかなかったのだから。

「お前がその馬を持っているからといってお前の無礼が免じられるわけではないんだ」

 フレデグンドは穏やかな表情で、ディエゴの肩を強く叩いた。

「よせディエゴ。お前は若いからあの証が偽りではないことを知らないだけだ。その力を知ればお前もそのような軽口は叩けなくなる」

(そこまでこの二人は年齢がかけ離れているのか)

 鳴は当然ながら彼らの立場を詮索しようとはしなかった。ただ、あまりにも二人の顔つきが親子と言うよりは姉弟という感じなので、彼らの老化が普通の人間よりも極めて遅いことだけは分かった。

「……そこまで、以前のあの馬の持ち主は偉大だったんだな」

 ブーケファルスを見やりながら鳴。しかし、喜んでいる余裕はなかった。

 この静けさの中に不穏な物を感じた。あまり長居したくはない。

「で、どうすればいいんだ。この里の問題は?」

 せかす鳴。フレデグンドは戒めるように、

「私の家に来い。そこで存分話すことがあるからな。この森に忍び寄る危機を。お前に実力があるかどうかも」

「いいだろう。俺は何が起ころうとさして絶望はしない」

 フレデグンドは鳴の顔をつらつらと見た。

 とがった耳と丸い耳の間では遥かに寿命が違う。エルフは百年以上生きる個体がざらにいるが、人間は四十年以上でさえ生きる者は稀だ。

 エルフがまだ人生の半分程度しか生きていないと感じていても、人間はもうその時点で老いて、死んでしまう。エルフにとってはわずかな時間を、丸耳は生きるに過ぎない。

(この少年もやがて数十年で命を終えるのだろう)

 だが、人間は生の短さゆえに次から次へと子孫を残していった。そしてそのたびに新しい力を生み出し、他の種族を凌駕していったのだ。この馬を乗りこなす人間が現れるの分かろうものだ。

「お前のようにエルフに対して恐れを抱かない『丸耳』は始めて見るぞ、高咲鳴……」

「別に。今はそんなこと気にしてる場合じゃないんだから」

 鳴は、エルフたちが確かに美しい姿をしているとは感じた。しかし、それは戦債の美しさだ。そして人間の美的感覚からすれば、無理に美しくなろうとしてどこかいびつさを感じさせる、そういう美しさだ。

「我々が他の種族からどれだけ疎まれているか知れば、そんなことも言っていられなくなるぞ」

 フレデグンドは説き伏せるように言った。

「俺はあいつらとは違うよ。そんな偏見に興味なんて持ちはしない。」

「何かを知れば知るほど、そういう恐れなんてなくなっていくものなのさ」


 フレデグンドの家は横へ横へ伸びた竪穴住居だった。そして、その中はいくつかの部屋に分かれており、意外と暖かった。

 最初、エルフにたちはかけ離れた食生活を営んでいるかと思った。しばらくして持ってきた。

 だが質素ではあるがすこぶる美味だと思った。新鮮な獣肉や果実だったからだ。宿場町でも王都でも基本的に日にちが経ったものしか味わえなかったから、この類の物を食べるのは非常にありがたかった。エレクトラは誰よりも飯にありつくのが早かった。

「……エルフはなぜ森の中に暮らすんだ?」

「我々は日光に弱いからな。『丸耳』のように日光に長くは耐えられん」

 アウグストも殊勝な物でも見るように、鳴に、

「それに……お前も大変な長旅だったろう? エルフにはそんな重労働はできない」

「いや、そんな苦労でもなかったです」 それは別に謙遜ではなかった。この世界での生活に不便さを思えば、これほどの苦労も苦労ではない。だがそれがまた、世間に疎いエルフたちには稀有に感じられたらしい。

(やありこの男、幼く見えて相当剛の者と見える)

 フレデグンドが語る。

「以前も同じ馬に乗った人間がこの里を訪れたんだ。あのお方がいなければこの里は賊に焼かれる所だった。お前はそのお方に何か心当たりがないか?」

「いや……何も」 鳴はメルキオールに心を読まれないように、素知らぬふりを通す。

 だがアウグストは言った。

「ずっと前のことだから記憶がおぼろげになってはいるが……森の外ではこのような風聞があるそうだな?」

 聞き覚えのある噂。

「二十年ほど前、王都で起きた謎の決闘……大事件であったにも拘わらず、その記憶を持つ者はほぼいないそうだ」

「ああ、知ってるよ。だがさして重大な事件じゃなかったんだろう?」

 何かが絡んでいる。しかし、それについて訊き出そうとする以前に、誰かがそれをさえぎってしまう。

「ちょうどその頃一人、『丸耳』の世界にあこがれて里を出た脱走者ならいるが」

「あいつのことなど、忘れておけ。今更思い出せば神に呪われてしまう」

 エルフ同士で何か話し始めたすきを見計らって、エレクトラに低い声で訊く。

「彼らの寿命って、どれくらいなんだ?」

「百二十か、長いと百五十だけど」

(だとすると、)「じゃあ、お前って」

(乙女に年齢を聞くなんて!)

 エレクトラはむすっと腕を組む。

「昨日が五十歳の誕生日!」

 耳の迷いと思って、つい聞き返す。

「五十歳?」

「うん。五十歳」

(どいつもこいつも長寿じゃないか!)

 途端に罪深い気分になり、何も訊かなかったことにした。

「お前はなぜあの神馬に選ばれた者になったんだ?」

 さして訳あり顔で何かを話すことを好んでいるわけではないが、どうしてもそういう雰囲気の発現にならざるを得ない。

「別に大した資格があったわけじゃない。俺はただ導かれたんだ。より高位の存在から」

 当然ながら鳴の事情など露知らない村人たちは鳴の屈折した感情を謙遜だと取り違えた。

「まさか。そんなはずないわ。あなたは一体何者なの……?」

 ここでどう振舞おうが誤解される以上、さっさと鳴はここでの幕間を切り上げたかった。

「俺自身は何も特別な人間なんかじゃないんだ。それに、それを驕る気だってない」

 何より人の好意は冷めやすい。すぐにでも彼らの期待に答えねばならない。

「さきほどアウグスト殿からこの村が抱えている問題を聞いたが、お前たちはどうするんだ?」

 ディエゴが口を挟む。

「そんなことを気にしても仕方ないだろ。それよりあんたが何をしてくれるかだ」

 本腰を入れて、鳴は訊く。

「聞くところではずっと昔にこの里と別のエルフたちとの間で戦争があったらしいな?」

「そうだ。あれは水源をめぐって争われた血生臭い戦い……もう八十年ほど前のことだ……」

 まるで数年前のことのように。

「今では途絶えてしまったが、我々エルフの間でも魔法に手を出す者がいた」

「お前らが?」

「屍を操る死霊使いだ。奴は戦争で死んだ人間の亡骸を蘇らせて戦争の道具にしようとした」

 フレデグンドは苦い顔をしていた。自分たちの間からそのような異端者を出したのがふがいなくてたまらないかのように。

「だがそいつはその技術を使う前に死んだ。奴がかき集めた屍は水源の近くに残ったままだ。エルフは屍に近づくのを忌むからな」

「埋葬はしないのか?」

 エルフはりりしい顔をゆがませる。

「できるものか! 霊に憑依されるかもしれんからな」

 ディエゴや他のエルフも青白くなっている。死と死者を彼らは極度に恐れているのだ。

「丁重に埋葬して、悼むもんじゃないのか」

 鳴はメルキオールの誘導とは別に、自分の常識を言ったまでだった。しかしそれがこの里では異常な営みであることを知って面食らってしまった。

「死んだ世界の人間に私が何の関わりがあるんだ?」

 鳴は自分が異常者だと思われないように、こう筋道を変える。

「外の人間たちは逆だよ。死者にそんな怖ろしい力があるなんて思ってない。そこに魂なんて宿ってないからだ。死者は生者に力なんて持ちえない」

 半分はこの世界での常識であり、半分は鳴自身の本心でもある。生死が身近な世界では、いちいち誰かの屍を見て心を動かしている暇などないのだ。森で吸血鬼の死を見届けてしまい、王都で行倒れた亡骸を目撃してしまってからでは。エレクトラは改めて変貌ぶりに驚いた。

「やはり『丸耳』の価値観とは移ろいゆくものなのだな。エルフよりも遥かに早く、はかない」

「そうだ、だからあいつらは同胞相手でもためらいなく殺し合うんだ!」 ディエゴは相変わらず言いたいように言い散らかす。

「ディエゴ、それがエルフの欠点ということが分からんか……」

 だがここでの会話はそこで突然打ち切られた。

「おい! 大変だ!!」

 銅鑼を鳴らしながら、ロバにまたがったエルフがあたりに叫ぶ。

「死霊が……目覚め始めた!」


 エルフたちの居住区からほど離れた窪地に、彼らは打ち捨てられていた。肉すら朽ち果て、ほとんど骨ばかりになった彼らの近くで黒い霧がたちこめていた。最初あてどもなく四方へ霧散するかと思われたそれは、まるで意識を持ったかのように屍の傷口や耳、鼻へと入り込んだ。その途端、屍は突然起き上がった。手に手に武器を取り始め、中断していた行動を再開するように歩き出した。

 その行進する足音を、遠くの鳴も聞いていた。

 もう彼はフレデグンドと共に低地に続く道を走っていった。そこではすでにエルフたちが鎧を着て塹壕を掘り、死霊たちと戦う準備を始めていた。

「でも、何でこんな時期にそいつらが蘇るってわかったんだ?」

「例の死霊使いが残した遺言書に書かれてあったんだ。あいつは屍の硬直を解く時間を今日の昼に定めていたんだ」

「でも、お前たちに武器はあるのか?」

「弓矢と剣はあるが……」

 苦々しくフレデグンド。

「だがそれでは全然足りない」

「じゃあ、何かあるのか? あいつらを一網打尽に方法は?」

「あるにはあるが、次善の策だ」

 彼らの臆病さにいらだちながら、

「今教えろ! その案がないなら……なあフレデグンド、この近くに崖はないか?」

 ふと、ひらめいたかのように声をひそめる。

「崖……? どうするつもりだ」

「あの死霊でも高い所から落ちればひとたまりもないと思ってな」

 だが女戦士は険しい表情のまま。

「いや、あいつらは肉体を強化されている。その程度の怪我で止まりはしない」

「ならやはり、魔法で倒すしかないのか」

(なぜ私はこの少年を信じたんだ? あの時までは殺してしまっても構わんと思っていたのに)

 ちょうど夢から覚めたばかりの、記憶が混濁している時のような所在なさを感じ取った。だが、それ以上のことを察している余裕などなかった。

(だが今は……彼を信じる他はない。あの神馬を持つ者に嘘偽りはないのだ)

「敵を溺れさせるなら水門がある」

 鳴は、もっとも敵に打撃を与える方法を見つけるのに手いっぱいだった。

「ならそれを決壊させて巻き添えにするか?」

 ここまで来るとさすがにフレデグンドの顔も冷静ではなくなっている。

「あれはこの里だけの水源じゃないんだ。代償は高くつくぞ」

「こっちは生死がかかっているからな」(だがどうする? 爆弾があるわけでもない)

 エルフは最後の手段を持ち出すかのような切羽詰まった声、

「なら、そうだな。以前商人から買い付けた特殊な玉がある。火の精霊の血を固めたものだ。これに油をつけて燃やせば大きな威力がある」

 改めてこの世界の技術の進歩には舌を巻いた。もしそのまま進歩し続ければどうなるのか、予想もつかないが。

「だがそれを準備し終える前に日が暮れるかもしれん。お前はやれるか?」

「仕方がないな。じゃあ俺が囮になってあいつらの注意を惹く。もちろん無理をしない範囲でだが……」

 ブーケファルスにまたがる直前で、

「安心してくれ。誰一人死なせはしないよ」

 それは、エルフたちには非常に頼もしく見えたらしい。

「頼むぞ、高咲鳴」

 だがいざ出発しようとする前に、一人の子供が走ってきた。

「あの……これをお持ちください!」

 背の低い少女のエルフが何かの壺を持ってきた。

「これは牛の乳です。本当は捧げものとしてずっと貯めてきたんだけど……」

 少女は鳴に対して慎重に壺を渡した。どう接すればいいのか分かりかねているような感じだった。

 だが、鳴は親しげに反応した。

「君、名前は?」

「私……ペネロペって言います」

「そうか。いい名前だ」

 飲むと、強烈な酸味を感じた。だが、旅のけだるさを惑わせるには十分だ。

 そのまま拍車をかけるとブーケファルスは勢いよく走りだし、行くべき場所へ向かう。


 しばらく走り続けて、ようやく鳴は敵の姿を至近距離で目撃した。

 鳴は最初、ゾンビのようなものを想像していたのである。だが現実はもっと得体のしれない何かだった。死霊たちは鎧や兜を着こんでいた。そして、顔の部分は闇に包まれ、目の部分だけが花火のように白く灯っていた。

「だめだ、防ぎきれない!」

 恐怖に駆られ、次第に後ずさっていく。

「鳴、あいつらはアンデッドだよ!」

「アンデッド?」

「あいつらに武器はきかない。回復魔法なら通じるかもしれない……けど私には……」

 鳴は呪文を詠唱した。

 金属ならば雷をよく通す。中身の屍にも通じるかもしれないと思った。

 しかし死霊たちはその電撃を喰らってもびくともしなかった。

「魔法で奴らは倒せん!」

 フレデグンドの焦った顔が見える。

「じゃあ殴ればいいのか」

 エレクトラがうろたえる。

「そんな……鳴! 武器もないのに、どうするの!?」

「俺が囮になる。奴らの注意を引き付ける。その隙を見計らってお前らは戦え」

 フレデグンドにはもはや鳴を信じる他の選択肢はなかった。

「やってくれるか」

 無言でうなずく鳴。それから敵の只中に走り去っていった。

 鳴には、敵の数が全く分からなかった。少なくとも、その一体一体が雑兵ではなく、相当な力の持ち主であろうことはやつれた体にも拘わらず、堂々とした動きで土を踏みしめていることから分かった。

 死霊たちが鳴をとり囲んだ。鳴は恐怖を感じつつも、いつもと同じ調子で呪文を唱えた。

「雷の精霊よ……」

 その時、鳴は誰かの記憶が頭の中に入り込んでいくのを感じた。自分が知らないはずの記憶が流込んできた。人間が、光る槍のような何かを握りしめ、振り回している光景。

 そして言うべきことを知る以前に、口の方が先に叫んでいた。

「我が意のままに雷の槍を顕現せしめよ!」

 その直後、鳴の手のひらから光り輝く棒が伸び、生成された。

(すごい……なんだこれ!?)

 困惑していても、体はすぐさま戦い方を学んでいた。

 鳴はすぐ隣で噛みつこうとしてきた一匹に、思い切り打撃を叩きこんだ。すると、鎧や甲冑がすぱっと切れて中の死霊を二つに切断した。だが実体を持たない刃は、肉を断ち切った感触すら感じさせなかった。

(これなら、いける!)

 ほとんど感覚を妖精の記憶にゆだねつつ、鳴はばったばったと敵を斬り倒した。だがそれだけでは決定打にならない。

「ブーケ!」

 白銀の神馬が舞いあがり、死霊たちに頭上から蹄鉄を叩きこむ。

「俺たちも戦うぞ!」

 鳴の騎乗姿を見て、たちまちエルフたちの士気が高揚。

 手に剣や弓矢を持って救世主を守ろうと。

 だが、鳴には彼らを倒すことに一種の呵責を感じていた。体内のエレクトラが彼の感情を読み取って、

(いつもの鳴じゃないみたい)

 戦うことに快楽など感じないが、今回はいつにまして気が重い。ティランの方がまだ何も考えずに、自分の命に執着するままに戦えていた。

(当たり前だろ。こいつらも元々は生きていた人間だったんだ)

(どうして? なぜ敵のことを気にするの?)

 エレクトラに対して鳴は念を送る。

(俺たちは二度もこの人たちを殺してるんだ……罪深いったらありゃしない)

(ならとどめを刺すしかないじゃない。死者の安寧を与えるために)

「それもそうだ……」 思わず心の声が口から出ていた。

 死霊の軍隊は数を増す。鳴が棍棒を振るう遥か彼方、エルフたちが石弓を放ち、一人一人を倒していく。

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