表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/40

建機山脈

ダイソン球は、恒星の周囲を人工の大地で覆いつくし、その全エネルギーを利用すると同時に、広大な居住空間を得るものだ。


一般に、その内壁面積は、地球の地表面積の10億倍、500京人を養うことができるとされている。


わたしは自分の目で見ているものが信じられなかった。


遥か彼方で聳り立つ大地には、白いまだら模様が付いている。おそらく、あの白いものは雲だろう。緑色はアマゾンの数億倍の規模の大密林だろうし、黄色の領域は前人未到の大砂漠。そして、あの青い海、地球が丸ごと何十個も入ってしまうに違いない。


黒い領域はなんだ?


ところどころ、虫にでも食われたかのような暗い穴が大地に空いている。


わたしは少し考えて、じっさいに穴なのだと思い当たった。


このダイソン球は建造途中なのだ。黒いところは、地殻が存在せず、外宇宙がそのまま見えているのだ。


空気はどうして出ていかないのだろう。穴の淵に巨大な壁でもあるのか。それとも、わたしの想像もつかないテクノロジーか。


いずれにせよ、こんな途方もないものを作るには、百年や千年では到底足りない。


ワープ航法が開発されていれば別だが、そうでなければ、周囲の恒星系から建材を集めるだけでも、何万年、いや、何十万年も必要になる。


しかし、なんと馬鹿げたものを作ったのか。居住空間が必要なら、個々の恒星系に植民したほうが、よほど安上がりだ。


それに、このダイソン球は少しおかしい。


建造途中とはいえ、〝完全な球体〟を目指しているように見える。


居住空間と太陽のエネルギーの利用という観点で見れば、巨大な板状の大地を恒星の周囲に浮かべるだけで事足りる。球にすると、自転軸の両端が無重力になってしまうではないか。


わたしの物思いは、下方から聞こえてきた破壊音に断たれた。


見れば、十キロほど先の団地群が崩れ、巨大な塵雲が湧き上がっている。


わたしは自分の目を擦った。


しかし、この肉体の視力は元の六十七歳の肉体とは比べ物にならない。団地に取り付いている〝怪物〟の姿をしっかりと捉えていた。


山脈のようなサイズの「建機」が団地を呑み込んでいる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ