生殖問題
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わたしは浴室で少女の衣類を脱がせた。
伸びたタンクトップのような、だるんとした袖なしのシャツ。布地は、植物の繊維を粗く編んだもの。ショートパンツも同じ素材だ。
くるぶしから膝上までは軽量の装甲アーマーのようなもので覆われていた。なんらかの機械生命の一部だったのだろうか。固定具は草でできた紐だ。脛にあたる部分には、石で作られた粗雑なナイフが収納されていた。
靴の類は履いていなかった。裸足の足裏の皮膚は、わたしが幼少期に飼っていた秋田犬の次郎に似て、分厚く、ざらざらしている。足の爪は色が黒く、鉄のように硬質だ。
身につけていたものをすべて剥ぎ取ると、特異な部分がさらに目についた。
尾てい骨のそばに、小さく丸い毛玉のようなものがあった。尻尾か?
全身の筋肉がよく発達している。太ももなどは格闘家も真っ青なほどに太い。
皮膚の表面全体を、濃く、透明な産毛がびっしりと覆っている。背中はとくに毛足が長く、こびりついた粉塵を流し落とすのが一苦労だった。
シャワーの湯を頭にかけると、本来の黒い髪が現れた。髪質は細く滑らかで、肩まであるのにもつれるということがない。
股間についた汚れを落としていると、セバスチャンがいった。
〝生殖器まわりの様子から見て、思っていたよりも人類に近い種族のようですね。あなたと子孫を残せる可能性があるかもしれません〟
「おいおい、わたしは妻を亡くしてまだ四年だよ。おまけに七十も近い。こんな若い子とどうこうなろうなんて気はないよ。だいいち、女同士じゃないか」
〝いえ、あなたの肉体はーー〟
セバスチャンが次の言葉をわたしの脳に送る前に、少女の目が開いた。
自分の股間を見下ろし、そこに手を突っ込んでいるわたしを見る。
次の瞬間、少女の逞しい足がわたしの胸元めがけて飛んできた。
とっさに腕でガードしなかったら胸骨をへし折られていたろう。
衝撃と共に風呂場の扉まで吹き飛ばされた。
どうにか両足で着地し、両手を広げる。
「待て待て!勘違いしないでくれ。わたしは君の体を洗っていただけだ。この通り、たいへんに汚れていたんでね」
わたしが指した先には、少女のボロボロの服が落ちていた。
少女の目線は、自分の衣服と、自分の身体、そしてわたしをうろうろした。
彼女は恐る恐るという感じでいった。
「△○△○◇◇○」
うん、なんといっているのかさっぱりわからない。




