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008 ダークエルフの少女 ①

 異世界の転生して二日が経過した。流石に何も食べない訳にはいかないから、森にある野草や川に居る魚を探す事にした。洞窟の中で宙吊りにした狼の死体は、血抜きが終わって放置してしまっている。

 保存したい所だが、そもそも保存方法が分からないから仕方ない。だが腐ってしまう恐れがある為、調理するなら急いだ方が良いだろう。


 「――!」


 僕にはどうやら影を有した力があるらしい。らしいというのは、僕と意思疎通が出来る声の主であるシャドウが言っていたからだ。この影の力で狼の群れに襲われている状況を打破出来たのは良かったけれど、未だに食糧問題は継続中である。


 ――汝よ、何をしておるのだ?


 「ん?ちょっと訓練がてら、使えそうな丈夫な木を切っておこうと思って」


 僕の力の主体である影は、イメージした通りに動き、形を変える事が出来る事が分かった。それは伸び縮みも可能だし、必要なら鋭利な刃物のように物を切る事だって可能だ。狼達を運んだように包み込む事を出来るけれど、僕の考えている事は出来ないらしい。


 「僕の影を利用すれば、あの食材を保存出来ると思ったんだけど……それは無理なの?」


 ――汝の力量ではまだ出来ぬだろう。影に何かを収納する為には、自身の容量を把握する必要がある。


 「僕の容量って、ちなみにどれくらいなの?」


 ――そうだな。入るとすれば、そこに転がっている小石が精々だろう。


 「全然駄目じゃん。はぁ……容量を上げるには、どうすれば良いのさ」


 ――鍛錬をするしかあるまい。幸いこの森には魔物も多いようだからな、鍛錬するのには苦労しないだろう。


 現在進行形で苦労しているのだけれど、シャドウはそこを理解しているのだろうか。


 「日本には『腹が減っては戦は出来ない』っていう言葉があるんだ。鍛錬するよりも、まずは自分の空腹感を満たしたいよ」


 その為に食べられそうな野草だったり、それこそ川が流れているのなら魚が居るのではないかと探しに来ているのだ。かなり深い森のようだから、何処かに水場があると思ったのだけれどなかなか見つからない。


 「影を使って、周囲の様子を探れたりしないの?ゲームとかだとマップ機能は必須なんだけど」

 

 ――現実をゲームとやらと一緒にするな。そんな物があれば、地図という物を必要ないではないか。


 「それは最もだけどさ、現状を解決するにはちょっと無理ゲーなんだけど」


 ――周囲の物の位置は把握しているのか?


 「周囲の?木とか草しかないけど」


 ――その場所は全て把握出来ているのであれば、影を通じて空間を把握出来るぞ。


 「物の位置を把握、ねぇ……それも結構無理なんだけど」


 マッピング能力が無いというか、食べられそうな物を探すのに夢中で周囲を確認していない。それ以前に物の位置を把握しなければならないという事は、一度に周囲の情報を全て頭に入れる必要があるという事だ。

 瞬間記憶能力でもあれば良いのだが、生憎と僕にそんな能力はない。非常に残念な状況ではあるのだが、溜息を吐きつつ足を運ぶ事にしよう。ここで立ち止まっていても、特に出来る事は無いようだ。

 

 ――倒した木々はどうするのだ?


 「後で運ぶつもりだけど、そのままにしておけばすぐに魔物に気付けるでしょ。見晴らしが悪い状態だと何かが起きて気付かなかったら嫌だし」


 こちら側から見晴らしが良いという事は、逆に魔物側も見晴らしが良いという事になる。見つかれば確実に襲われるけれども、影の力があればなんとかなるだろう。

 それにシャドウの言う通り、どのみち影の力を使いこなせるようにはなりたいと思っていたのだ。鍛錬するのが遅いか早いかになるだけの話だ。


 「それにしても、一向に出口が見当たらないね。この森って、どれくらいの規模なんだろ」


 いくつか足場の悪い場所もあれば、安定して通れる道も存在している。これだけ広い森なのだから、もしかしたら誰かが住んでいる可能性だってあるはずだ。ゲームなら森といえば、ドワーフかエルフ、後オークとかも居たっけ。

 ゲームに出てくる魔物で考えるのなら、ゴブリンとかそこら辺に居そうだけど。あの牛や狼以外は、未だに遭遇していないから平和な物だ。


 「このまま何事も無ければ良いんだけどなぁ。あ、これフラグになるかな。ははは、な訳ないか。――うわっと……!?」


 フラグと呟いた瞬間だった。耳元を掠める風切音と共に、背後の木に一本の矢が突き刺さったのである。何処からか飛んで来たその矢の方向を見た僕は、その場から動く事は出来なかった。いや、違う。動く事を許されない状況だと理解したのだ。

 何故なら僕は、どうやら既に囲まれていたからである。


 ――ダークエルフ、のようだな。汝よ、囲まれているぞ。


 見れば分かるし、さっきそれは僕が言ったよね?


 「怪しげな者め、我等が森に何故立ち入った!」

 「っ……あ、あの、僕は別に怪しい者じゃないです!!」

 「馬鹿な事を言うな!我等と同等以上の闇の力を有しておきながら、怪しくない等と通ると思っているのか!」

 「闇の力?(影の力の事だろうか?)――ま、待って下さい!!僕は本当に怪しくなんか」

 「ならば証拠はあるのか?貴様が我等の森に侵入した事、それに疚しい考えが無かったと言えるのか!」

 「そんなの無いですよ!僕はただ生きるのに必死だっただけですし、ここに来る前に魔物に襲われて大変だったんですよ!?そんな事を考える暇なんて」

 「ならば、ここまでの道中……貴様が森の木々を切っていたのは何故だ?ここは我等の森だ、意味も無く木々を伐採する理由は無いはずだ。敵ではないのであれば、その理由を話せ!」

 「も、もしかして……えっと、聞きたいんですけど」

 「何だ」

 「えっと、木を切るのってその……ここでは結構な事だったりします?」

 「無論だ!我々は誇り高きダークエルフであり、この森は我等が神を祀る為の神聖な森だ。その森の木々を切る行為は、それ相応の理由が無ければ許されない掟だ」

 「(あぁー、これ、理由次第じゃ殺されるかもしれない奴だ。言葉は通じるみたいだから話し合いに応じてくれれば良いけど、何だか無理っぽい雰囲気)」

 「改めて問う。何故に貴様は我等が森を傷付けた!答えろ!答え次第では、我等の弓で粛清してやる」

 「あぁーえっと……鍛錬の為、っていう理由は駄目ですか?」


 そう言った瞬間、ダークエルフ達は僕を睨み付けた。一斉に向けられるその視線には、素人の僕でも分かる程に殺気に包まれている。


 「執行せよ、貴様の行いは万死に値する!――放て!!」


 その大声と共にダークエルフ達は、一斉に僕へと矢を放った。どうにかして応戦しようと思ったけれど、影の力を使おうと意識するのが遅れてしまった。回避も不可能だと思ったその時、僕の耳に声が届いたのである。


 「風よ、盾となりて守護せよ!」

 「っ!?」


 眼前にまで迫った矢が止まり、目の前から吹き飛ばされた。だが僕は、その光景よりも目を奪われる物がそこにはあった。銀色の長い髪とやや褐色した肌の少女が、僕の前に立っていたのである。

良かったのか悪いのか、人に遭遇する事が出来た真也。

これからどうなってしまうのでしょうか?作者自身も楽しみです。

次の更新も、宜しくお願いします。


※読んでくださってる方に募集します。未だにタイトルが決まっておりません。本当に(仮)なのです(苦笑)ですので、読者様のお声を聞きたいと思っております。感想欄or作者ツイッターまで、良きお声をお待ちしております。自分でも考えておりますが、どうかご協力の程、宜しくお願い申し上げます。

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