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009 ダークエルフの少女 ②

 「っ!?」


 直撃コースで放った弓矢が、僕の眼前で停止させられて風に吹き飛ばされた。良く見れば僕を中心に半球を描くように風が包んでおり、明らかに目の前に居るダークエルフ達がやった物ではないと理解出来る。

 恐らくは、今目の前に立っている彼女がやったのだろう。でも、どうして見ず知らずの僕を守ってくれたのだろうか?そんな疑問を浮かべていると、彼女は振り返って微笑みながら言った。


 「どうやら間に合ったようですね。同胞が無礼を働いた事、謝罪致します。ですが、少しの間だけその中に居てくださると助かります」

 「あ、はい。分かりまし、た?」


 彼女はそう言うと、僕に弓を放った者達へと視線を向けた。


 「これはどういう事か。ちゃんと説明をしてくれますよね?――ジラルド」

 「っ」


 ジラルドと呼ばれる人物は、先程まで僕に問いを投げていたダークエルフの名前のようだ。彼が木の上から降りると、周囲に居た者達も同じく木から降りている。ジラルドという者が束ねていたのは明らかだったが、彼女の登場に動揺しているように見える。

 一体彼女は何者なのか、そんな疑問を浮かべていたら――それはすぐに判明した。


 何故なら、ジラルドを含めたダークエルフ達が、彼女の前で跪いたからである。


 「私の許しもなく、侵入者へ危害を加えるなと申したはずです。貴方はそれを理解しているのですか?」

 「っ……こ、この者は神聖な森の木々を切り倒しました。これは我等の掟に反する行為であり、明らかな森への敵対行為だと判断致しました」

 「ならば、それをまずは私に報告するべきではないのですか?いつから貴方は、独断で判断出来る立場になったのか。生憎と私は存じていないのですが?」

 「……!」

 「神聖なこの森を守護しようとした事は評価に値しますが、今は私がこの森を治めていたはずですが。……私では、貴方の上に立つ資格はありませんか?ジラルド」


 会話から察するに、彼女はこの森を治めているダークエルフの長なのだろう。ジラルドよりも地位が高いのは明白だけれど、彼女から感じる寒気はこっちにまで伝わって来る。ジラルドは、それを正面から受けているのだから僕よりも強く感じてるだろう。

 彼女達が言っている掟というのは、日本の法律のような物と考えて良いだろう。だがその掟をジラルドが破っている部分と破っていない部分があるだろうが、これは僕が口を割って入って良い話ではない。

 しかし、もし目の前で処刑しよう物なら良い気持ちはしない。だが部外者であるのだから、僕には関係のない話だ。こっちは矢まで打たれて死ぬかもしれなかったのだ。ジラルドの処刑を止める理由もないはずなのに、僕は気付けば声を発していた。


 「あ、あの……」

 「「?」」

 「一つ聞いても良いですか?」

 「何でしょうか?」


 僕の問い掛ける様子を疑問に思ったジラルドに対して、彼女はすぐに小首を傾げて応えてくれた。目の仇にされる筋合いは無いのだが、彼の事は気にせずに彼女へ問い掛ける事にした。


 「理由はなんであれ、僕が無断でこの森に居た事は間違ってないです。だからその人に罰を与えるつもりなら、その必要は無いと思います」

 「っ!?」

 

 僕の発言に驚いたのか、ジラルドは目を見開いて僕を見据える。誇り高いイメージのあるダークエルフにとって、見ず知らずの人間に庇われるのを良しとは思わないだろう。だがしかし、目の前で命を取られる場面なんて見たくない。 

 

 「貴方は命を狙われたのですよ。彼を許す事は簡単ですが、私の知らない所で貴方を処分するかもしれないですよ?それでも良いのですか?」

 「確かにその可能性はあると思います。けど、誰だって知らない人間が来たら警戒するのは普通ですし、彼の行動はこの森を守る為に取った行動だと思いますから……ここに侵入した僕に非があると思いますよ」


 苦笑しながら告げた僕に対して、彼女達は驚いているようだ。これで僕が罰を受けて処刑されたとしても、誰かの命を助けたという事実だけは残る。完全な自己満足だけれど……悔いはない。

 あぁでも、本音を言えばこの世界を楽しみたかったなという心残りはあるけれども。仕方無いだろう。


 「ジラルド、貴方が殺そうとした人はこういう人です。これでも掟に従って命を取りますか?」

 「……」

 「そもそも貴方が冷静に相手の魔力を看破していれば、このような擦れ違いは無かったはずです」

 

 彼女はそう言いながら、ジラルドへ視線を向ける。微笑んでいるが、微かにまだ寒気が感じる。やがてジラルドは溜息を吐き、何か諦めたように僕に頭を下げて告げたのである。


 「――少年よ、すまない事をした。どうやら冷静さを欠いていたようだ。許して欲しい」

 「大丈夫です。僕も生きるのに必死で、途方に暮れてたので。お互い様です」

 「そう言ってくれるのは有難いが、罪を償う代わりに何かさせては貰えないだろうか?」

 「いえ、そんな事は……」


 ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ~~……。


 「どうやら、償うべき内容が決まったようだ」

 「あ、あはは……」


 ジラルドがそう言うと、彼女は「そのようですね」と言いながら微笑んでいる。釣られて他のダークエルフ達にも笑われ、僕は気恥ずかしさに負けそうである。だがしかし、空腹感が限界を迎えそうだった点では不幸中の幸いだったっだろう。

 そんな事を思いながら、僕は彼女達に森の奥へと案内されたのである。

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