4話「選抜試験」
「まずあなた達がここにいる理由は、"天之御中主神の儀"に参加してもらうためよ」
「これから行う"星篩の儀"で、あなた達の中から数人、どこかしらの神の巫覡になってもらうわ」
「巫覡になった者は、主である神に仕え、今後の陣取り合戦に参加してもらう」
「そして、全ての領土を納めた陣営の神が、新たな日本国の最高神になるってわけ」
「簡単に言うと、私達神の中から新たな最高神を決めるために、あなた達も手伝ってねってこと」
アマテラスは上機嫌に、これから起こる何かを期待するようにそう言った。
次々に湧く疑問に、話の内容を理解するのに時間がかかる。
わからないな部分が多すぎた。
第一になぜ、俺達人間が参加しなくてちゃいけないのか。
俺達に参加するメリットがない。
神同士で勝手に最高神を決めたらいいと思う。
第二に巫覡、話の内容から、これはおそらく神に仕える巫女の様な存在なのだろうけど、人間側に拒否権は? 選択権は?
好きでも何でもない神に仕えるなんて絶対に嫌だ。
第三に神が変わることでの影響は? アマテラスから他の神に変わった際、俺達の生活はどう変化するかだ。
具体的にどういう部分が変わるのかが気になった。
「少しだけ補足しておきますと、あなた方人間には、参加しなければならない責任と義務があるとだけ言っておきましょう」
「詳細な理由につきましては、巫覡になった際、担当の神に聞いてください」
ここでは、理由を語ってくれないらしい。
まあ、理由がわかったとしても、俺達に拒否権なさそうだからいいけど。
周囲の様子をうかがう。
青ざめている人、無表情な人、さっきの大地震の余韻が抜けていないのか、腰をぬかしている人、様々だった。
意外にも一様に共通しているのは、神の声を聞き逃さないようにしていることだ。
「それじゃあ、皆さんお待ちかねのゲームのルール説明をしていくわね」
「水鏡紙片――天に星点を描きなさい」
空中に水の塊と光る何かが集まっていく。
その様子を眺めていると、光る何かは文字を現した。
どうやら、ディスプレイの様な役割をしているようだった。
「これからあなた達には、鬼ごっこをしてもらいます」
「誰しも一度はやったことある遊びよね」
「でも、もちろん、ただの鬼ごっこじゃないわよ。鬼は交代しないし、あなた達から鬼を選んだりもしない」
「鬼はこちら側で用意しているから、あなた達はこの島中を2時間逃げ回ってもらうわ」
「生き残れた人は元の下界に戻れるから安心して」
”生き残れた人は”、アマテラスはそう言った。
つまり、鬼達は俺達を殺しに来るってことだ。
静かにしていた周囲の人達も、さすがにどよめき始める。
「鬼からは逃げてもいいし、戦ってもいい。でも、戦うことはあまりおすすめしないわね」
「鬼達は特殊な能力を持っているし、今の段階のあなた達じゃ、やられに行くようなものだから」
「ルール説明って言ってもこんなものかしらね。はい! ルール説明おーわり!」
「5分後にこの草原の中央に鬼を転移させるから、それから更に10分後に鬼ごっこを開始するわね」
「最後に一つだけ、頑張って生き残れるよう島中を逃げ回ってね。そこに生き残れる可能性があるかもね」
「じゃあ健闘を祈るわ、人間さん達」
最後を締めくくり、アマテラスの声は途切れた。
一時の静寂が訪れた後、どよめきの声がどんどん膨らんでいく。
「ど、どうすればいいんだよこれ!?」
「嘘……本当に死ぬの? 死ぬのは嫌! 死にたくない!!」
「どこへ逃げればいい!?」
「と、とりあえずここから離れよう! ここに鬼が出現するらしいし一刻も早くここから離れなきゃ!」
周囲の人達は、蜘蛛の子を散らす勢いで、草原からどんどん離れていった。
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