中の上というバグ
「障害物とか追加の要望あればどうぞ」
現地から飛ばされた瞬間、舞台の状況に問題がないのか、ゼノムが聞いてきた。
現状はシンプルステージを通り越し、まず【地面】という概念から創る必要がある。
無駄な工程と思う事なかれ。〈空間支配〉等の有利フィールド展開が、基準となった強さの場合『自分が創っていない』万物に全面の信頼を寄せる事はまずない。
だがゼノムらが概念代行を名乗り出たのならば、話は変わる。ゼノムが巨大な【門】となり妻達へ魔力を譲渡、妻達は各々が得意とする方面で概念を補強する。
この補強、そもそも『ゼノムの嫁、強さランキング』の一位に君臨するオウガ一人で、ゼノムか【外】が関わらない限り破壊不能なレベルなのだ。
「それじゃ、あらゆる形状の泥の塊を浮かべて欲しい」
スレでの名前しか知らない対戦相手が、明らかに自分が使う為の障害物を望んだ。
「あらゆる形状だと処理落ちするから、直径2kmの真球、一辺1kmの立方体、正八面体で良い?」
あらゆる形状となれば『この戦闘用空間を100%埋めるもの』も含む必要があるので、ゼノムですら却下なのだろう。
単位がkmなのが気がかりだ。互いに光年単位……いや、相手はルシュフェルとタイマンして生き延びているので、オムニバースな戦闘を可能としているはずなのに。
「サイフィ、流石に要望なしはハンデ過ぎるぜ?」
「とはいえな……オウガ素材フルアーマーに片手剣と小盾なんて許されないだろ?」
「そんな事したら、ゼノム素材の杖を渡さないといけないからな」
ゼノムから案を出せと言われたが、出てくるのはデウス・エクス・マキナである。
恐らく、保身さをゼノムに嗤われている。ククラも嗤いそうだ。
「……ないなら、公平性を考えて床を用意する。なおこの床に、魔法的な仕掛けをする事は出来ない」
遠距離主体の相手だと、【地面】生成で空中に行くしかない。となれば戦士というか、武器で戦う技術全ての前提である、床を創ってくれるそうだ。
壊れる心配不要で何も罠がない【地面】だ。着地ギリギリの空間に、何も仕掛けないなんて事はありえないが。
「では問題ないな?」
「おk」
「良いぞ」
「はい、よーい、スタート」
やる気のない開始の合図に俺は駆ける。
「ほい!」
何の変哲もない、泥の弾丸。音速という通常の反応と人体ならば、死んでいる攻撃だ。
切り伏せながら、相手の位置を確認する。まだ、ほぼ地上の高さか。何が狙いなんだ……全く分からん。
焼こうにも砂っぽくなったらなったで、面倒なんだよなぁ……。粘土から土偶へも発展してしまうと、ゴーレムの類いが発生する。
うん。時間かかると、どうにも剣士の敗けだ! 速攻で決着しないと、無理!
「ヌンッ!」
「壁よぉ!」
「あぁ、邪魔!」
「するに決まってんだろ!!」
弾幕、壁、何なら身代わり。全包囲から迫るソレらを全て、光と共に切断。
光熱で量子分解までいければ良いが。そもそも『れば良い』と思う時点で、魔力使った戦いは負けなんだよな……。
「やれそうよりやる。やるよりやった!!」
「故に魔法は発動『している』!」
意を固めたところで妨害が巧い。光年カリバーも出しにくい……。
「おっと!」
「チッ」
球体に剣が滑ったが、回避は間に合う。なんとなく手段が変わったのだろう。例えば『泥の糸』である可能性。
おいおい、ゼノム準拠のサブカルかよ。ゼノムが『納得』する攻防というものは、そういう方面なせいだな。
神の気に入る……エモい勝ち方が出来た者の勝利である。鈍重かつ、素手が一番なのか……? いや……『剣』みたいなカオスもあり……?
「切り刻むなら爆速で細分。よし、間に合わん!」
「なんて耐久性の高い剣だ……」
「武器破壊狙いか」
というミスリードだ。絶え間ない弾幕に隠れて、内部破壊の極小正八面体がある。
膠着状態。互いに対処能力が間に合い過ぎてる。正直、分けで終わって欲しいんだが……。




