『全天録』チャート:ヤハラ
色々と終わったが、ゲームはイベントしかねぇ!
始まった瞬間に危機を察知する。
私はヤハラ・ =アウゴ。ゼノムの第五妻のエルフ。森の里で暮らしていたが、風の邪神により破壊されゼノムとの旅を始めた。
「ヤハラ様~、何処にお隠れなのですか~」
記憶の限りではそうだったが、全くもって違う現状に身が動いた。
間違いなくここは本国の長の住み処である。『全天録』の短縮を目指し、ゼノムや【外】に修正されないようにするはずが……既に変化が発生、冷静になる為にかくれんぼを提案し一人身となる。
シュア、ククラ、ルシュフェルの大短縮による時間のズレで、私の産まれが変化した可能性はあるが……。
「どうやって、彼はたどり着くのかしら?」
ゼノムがたどり着く手段やタイミングも、同時に変化するのだろう。世界がどう転がるのか、全く予測がつかないまま短縮をするとなれば。
「そろそろ魔法の勉強ですよ~」
「分かった」
ともかく強化しかない。核撃や水蒸気、雷の発生を使いこなせば、強さは十分。後は……清楚さか?
『ヤハラ様の弓は世界一!』
『彼女以外では誰も成しえまい』
『アレの隣に立てる男は現れるのですか……?』
完全にミスを起こしてしまった。ゼノかゼノムに狙われたり、或いはイベントの主催をするには、位を上げる必要がある。だから弓と魔法を頑張ったが……。
「あの…ヤハラ様」
「またでしょ? 分かっている」
特に弓でやってしまった。ゼノ達に毒されていた私は、常軌を逸した使い方を始めていたのだ。
「どうやれば五本もの矢を片手で、程良い間隔で射つ事が出来るのでしょう………それも縦で」
彼らの世界で親しまれたゲームと同じようにしていた。それでもまだ救いのある射ち方もあったのに、よりにもよって『近接射撃』を選択。
森の調停の時にも、種族を守る為の戦の時にも、私は弓を持って最前線の最前列に立っていた。
「まずは指や掌の使い方を修正する事ね。そもそもこの方法の向きとして正しいのは、横向きにして弩のようにする事だけど」
「やはり、天才なのでしょう」
「私でもまだまだ、どうにもならない事があるのよ」
「噂に聞く〈黒衣〉ですね。それに〈人間〉が異界より〈英雄〉を召喚したとも」
それなりの過去に産まれていたようだ。しかし、ゼノは今回も一人身で異世界に入ったのか……交友があれば本気の絶滅を目指す事もなかっただろう。
「ヤハラ様? 一体、何か……」
沈んだ顔だったのか。どうにか誤魔化そうと頭を回す。
「異界での生活を捨てて、下手をすれば捨てさせて喚んだのかと思うと」
「我々が火山で生きるような激変とすれば、気の毒でしかありません。同時にそれで刃を向けて良い理由としては軽く思う」
その矛先は元同族の〈人間〉に向かうのだから、恐ろしい。いや、本来からすればついでの殺戮だったか。
訓練を終えた頃には日は落ちて、私は部屋に戻る事にした。
「…?」
この体では違和感で止まるが、魂はゼノの存在を告げている。やっとのような出会いだが『全天録』への言及の可能性もあるので、油断ならない。
何も考えずに着替えて眠りにベッドへ。
「……」
「何者」
「〈黒衣〉。ヤハラ、お前を拐いに来た」
彼が降りて誘拐を宣言する。
抵抗はするべきと判断して、弓矢を召喚し構えた。
「なるほど、これは素晴らしい。武器には刻まれていないという事は、自力での開発であろう」
「私の手元に来た事は知られたわ。直ぐに兵が集まるでしょう」
「あぁ、君以外に危害を加える訳には……何? 寧ろその方が? ………そうかそうか」
ゼノムとの話だろう。使い方もまるで違うのが非常に気になる。
「シッ!」
「戦いながら回収だな!」
接近して矢を放つがゼノは回避し、着弾前にベッドを収納空間へ入れた。余りにも謎の行動に問いを叫ぶ。
「何をしたい?!」
「ベッド変わると眠れなかったりするだろう。また、思い入れの品がないのも精神的にダメージがある」
「妙な気遣いね!」
誘拐どころか存在の痕跡さえ、残す気がない犯行。恐らく、他の儀礼用の衣裳も同じようになっている。
部屋が空になった瞬間に、騎士隊が突入して来た。
「ご無事でしたか!」
「気をつけて、敵はわざと遅らせ貴方達の到着を待った。明らかに罠がある」
「布石の為だ。貴様らには、床の赤染…血は赤かったっけ………永遠と床に伏せてもらう」
ゼノの殺意は本物だった。何があったら兵の家庭を気にしていた魔王が、ここまでの闇に染まるのだろう。
「皆……」
「さてと、流石に国まで落とすつもりはないんでね」
蹂躙の最後に私は気絶させられた。
目覚めたのは見知った天蓋。ただし手足は拘束されていた。
ここまでの流れからして大きな変化でしかないが、更に不味い。私の初体験の変化が予測されるからだ。
「おはこんにんはー」
「離せ! その面、射抜いてくれる!」
「そんな表情が逆に、ハートを射止めるんだよなぁ……」
敵への殺意が、敵の性欲を刺激するという事態に。頭のおかしさを再認識させられた。
「まずはピンキー&ミルキーな塗り薬から」
「?! やめろ!」
「寝姿勢でお腹を振ったら、誰だって期待されていると思うぞ」
完全変態に体の表面を隅々まで触れられた。
体に対して精神が雄を求め始め、やがて体を支配する。
「んでこれを放って放置すれば、絶対に堕ちると」
そう言ってゼノが退室しながら放つのは亡霊……それも先の騎士のものだ。
『俺達はこんなに痛いのに』
『俺達は快感を得られないのに』
『私はもう何も愛を示せない』
『『『死んでくれ』』』
無様な状態への恨み言が重なる。これは間違いなく、精神崩壊狙いだ。数時間後、ゼノが現れたと同時に声が消えた。
「俺の名前はゼノ・クラック。水面下で動いている魔王オウガ・ラグナロク、その配下の特別戦力さ」
雌を手に入れる為にここまでやるとは………やはりこの男は、なるべくして〈魔王〉になったと言える。
追記:年末やなぁ。 うせやろ……おにいさん……。




