とある夜
イ ベ ン ト に よ り 崩 れ る
時 系 列
本来は教祖を崇める日の前夜祭なのだが、日本にとってはイベントとして、前夜祭で終わる。
聖なる夜であり、いくつものカップルが何かしているのだろう。何人もの子供がプレゼントを待っているのだろう。
「さぁ、私は待っている子が多いんだ」
[絶対に多くない。8割が父親知らずだぞ]
ゼノ・クラックの時に大盤振る舞いした〈魔王〉の因子、例外なく咲いた子供達へ、サンタ作戦をするのだ。
「いっくよー!」
「ゼノム、其方は余の着替えを見たかっただけであろう?」
「これで集客。完璧…!」
「……ねぇ、何で私だけソリなの?」
「では我は行くぞ。〈色欲〉共が確実にしでかすからな」
妻達のサンタコスである。一般市民へは彼女らがプレゼントを配り、更に依存して貰う算段だ。
ナノマシンにより、個人用アンケートの解答と、心理的な本音は聞き終えている。配達のスタートだ。
「力が……力が欲しい……!」
「今すぐに不相応な力を授かり暴走するか、将来的な最強の道筋というが長すぎると考えて死ぬか。どっちだ?」
「……どちらでもない! 何せ竜の一族なのだ! 不相応など存在せず、将来など気にも止めぬ!!」
「そう、その通りだ。自分で……考えの及ばぬ愚かな自分で見つけた選択だから、何も恥じる部分はない。よって〈保身〉〈新択〉〈封殺〉とそれに連なる能力を授けよう」
俺やオークゥにより〈竜〉ないし〈龍〉の存在は、自然と大きくなった。だからこそ、格差が厚い。
この少年は〈火竜〉が一門。次期当主なのだが、別の家の同年の存在の方が火力が高い。彼が白い炎を二時間吐き続けられるなら、別家は水色の炎を三時間くらいといった具合だ。
「違う! 俺が欲しいのはより大いな…」
「いいや。お前はそいつより上になれば良いんだ。そいつより熱量も継戦力も高い存在なんて〈竜〉以外でも居るんだから」
「…違う…………ちがうんだ………」
実態をプレゼントするのもサンタである。
なお〈保身〉により自身の保護、〈新択〉により通常では不可能な魔力供給、〈封殺〉により必要以上の霧散がなくなるので、火力を上げる事は可能なのだが。
まぁ、気付けるまでの課題だ。
「なぜですか? 貴方ならば」
「俺の権限などたかが知れる。【外】の都合……場合によっては、俺の軌跡と連なる世界そのもの、全て消去される。無論、消去だけじゃない自由な編集をやってくる。そんな世界で恒久の世界平和とはな」
「【外】の頂点は」
「限りなく俺だが【俺】ではない。完全に世界を止めたとて、【外】からすれば【内側がイキってやんの】という軽口で解決する。【有】がどれほどイタズラを受け入れたか……」
本当に不可能な願いの要求もある。その場合は、諦めるまでやるしかない。
「俺だって不可能だったんだ。あの世界で魔法に魅せられ、一息ついた瞬間に、発想のみが進んでいる現実を知る」
「分かりましたお帰り下さい。また来年もいらっしゃるのでしょう?」
「察しがよくて助かる。ではまた」
相手に合わせる余裕がある。なお聖夜イベントとしての余裕は。
巡る巡る。単純に物品の者はかわいいものだ。概念や【外】抜きでも変動するものを求められると困る。
「これで全員だな」
[残りは自宅]
「待ちわびた解放」
説得と供給を終えた俺は帰路につく。
「うぉぉん! 爆死だぁ!!」
「ケーキ! ケーエーキーイー!!」
「私と結婚して下さい!」
〈転移〉で帰るのも良いが、街中を飛びイベントを共有するのも良い。
この日はこういうものなのだと実感する楽しみ。転生前は、愚痴を聞き続けたものだ。
玄関の扉から香りが漏れる。自宅で待機するのは無論、性夜の準備を万全にした妻達なのだから。
扉を開ける。明かりがついてないを通り越して、漆黒世界を形成していた。
中に入り、扉を閉めれば明転。目の前にはプレゼントが並んでいる。
リボンで身体を良い感じに巻いて、目がねっとり……。
こうして意識は、寝室へ飛んだ。
追記:
間 に 合 わ せ な い




