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予備 10

「それで……ゼノは何処に?」

「【虚無】の海だな。少なくとも、この世界や同一次元には存在しない」


 ゼノはあの後〈木王〉を討伐したバルザに、首を晒した。無論、バルザが切る訳がない。


 不当と考えたらしいゼノは、瞬間的に光の粒となり消えた。反省のつもりなのだろう。


「どうにか連れ出せないか?」

「この場に居る者では、耐久といい心への響きが不適正だ」

「面倒。真に力の権化であれば、どうとでもなった」


 ゼノの嫁達から思案の修正が図られる。


「アイツの支えだが、求められているものがそれぞれだ。私は機械、情報の方面」

「私は癒しと愛くるしさ」

「私は生産と求道」

「私には自然と…………自然しかなかった」


 今の引きこもりは『鬱』と称するものだろうか。適切な人物による構いがなければ、即座に自壊を始めるようだった。


「オークゥかルーシーか。両人、気まぐれの振れが大きく、彼女らが、いつゼノムの元へ向かうのは不明瞭だ。シュアがここを止めて、私達は先に待っておくのも」

「おいおい、それじゃ俺達は」

「ん? 完全なる時空間の停止だ。【外】関連がなければ、記憶も魂も〈万象庫(アカシックレコード)〉から見て、同一」

「いや、気が付けば解決ってのが……な…?」

「諦めろラウル。そもそも我々は、ゼノムの目に妃方と同様な生命と見られていない。そしてゼノムが動かぬ限り、好転もない。ならば任せるべきだ」


 ザツカが彼女らを『生命』と呼ぶのは、ゼノが自身を基準にしているのを察したからだろうか。


「最悪、アイツの記憶のほぼ全てのある期間並に待つことになる。【外】を降ろしておらず、血液や魂に縁がない者では耐えきれない」

「どれほど長いのだ? その期間は」

「……ゼノムが知る最大桁を六つの区分で回し、全てが最大桁になった時に無限を一つ増やす。無限の掛け合わせの掛け合わせたる累乗の個数も最大桁になれば、別個のものを。更にそれらの数えの限界が到来する直前に、0からリスタートをし……」


 無量大数ならともかく、不可説不可説転なら途方もない時間だ。そんな間、待とうとする人がいるような奴……該当者が彼一人である事を祈る。


「一年は、この場で待とう。それでゼノムが現れなければ、ゼノムの元が一番安全だ」

「待って、何でこの場なの?!」


 カラットに同意だ。理由が分からなすぎる。


「ゼノムはバルザを座標に降りる【邪神】を警戒して、話を覆したが……ゼノムの暗さでも【邪神】は呼ばれ、【邪神】でなくとも圧縮を重ねた〈闇〉が溢れる。して、ゼノムの最後の地はここだ」


 圧倒的な魔力量が引き起こす現象。ある存在が通っただけで、生命が溢れたり死滅したりするのは、神話や聖典でよく聞く。


「はぁ……迷惑な奴だな……本当に……」

「心底、同意する。このハーレムは『ゼノム事件被害者の会』でもあるからな」

「ゼルから直接搾り取るんだ!」


 ダイレクト賠償の形態か。内容が完全に、腐れ縁の生産を目的としたものだが。


「……想定通り来たな、第一波」


 その呟きの瞬間、空気が黒一色に染まる。液体や個体は無事だが、全ての気体が闇を産む。


「激情だけあって、初期は暴力的猛威だ。〈勇者〉達の出番はない」


 言われずとも、世界を文字通り塗り替えた存在だ。〈エルル大海溝〉の最下層の方向性で、破壊者としての行動が様になるような。


 金属音が響く。どうやら、俺狙いの攻撃があったらしい。


「〈幻影(ファントム)〉……だが種族的特性は打ち消されているだろう」


 素手(?)で動き回る黒い靄。とはいえ、主戦場から完全に外れた俺達には、光の軌跡しか見えない。


「残像や魔力残留で何が起きているかは分かる」

「分かっても無理でしょ。あれ何手前よ」

「それでも手札の確認にはなる。無論、正規たる〈勇者〉パーティーが、あれ程の万能へ目覚めるとは思えんが」


 ただ愛玩の〈獣人〉だった彼女は、瞬間的な全体回復に加え、防御結界を利用した切断や刺突、氷を操る。


 〈スライム〉の彼女は、靄の遠距離攻撃や表面に漂う魔力を操作している。


 〈エルフ〉の彼女は、植物と大地と風を繰り、また〈獣人〉が間に合わなかった時の回復。


 〈サイクロプス〉の彼女は、作成が一瞬の様々な物品で三人を補助。


「何で〈エルフ〉があんなもん投げ飛ばしてんだ?!」


 巨岩が飛翔し瞬時に粉々。投げた主が〈エルフ〉だった事に、ラウルは驚いている。


「……投げというより、力任せに引っ張ったのだろう」

「あり得ねぇ。どんな身体強化を…」

「見よ、あの弓の弦を。意趣返しの石の弾を斬っている」

「いや……だがそうだな。持ち前にせよ、身体強化の重ね掛けにせよ、必要な結果を出せるなら」


 矢の先端ならばともかく、弦というたった一本の範囲も限定された糸で、弾幕をしのぐ〈エルフ〉。〈弓士〉は似合うはずもなく、正に〈戦士〉だ。


「〈獣人〉が操るのは何? 彼女は確か〈光〉や〈聖〉が無理になったって、あの部屋で聞いたんだけど」


 確か彼女は神の奇跡から外れた存在だ。誰に祝福されている?


「残像ってずっとある訳じゃないんだな」


 確かに、消えて大きく動いている時がある。世界観測からすると……。


 待て。残像消失前に〈獣人〉の動きが見える。すると二つは繋がっており。


「時だ…! 〈獣人〉が操る能力は〈時〉属性のもの。だから世界の観測からも外れて、〈聖〉〈光〉に因らない回復が出来る!!」

「戻して、止めて……進める事も出来るんじゃないか?」


 何が愛玩回復要員だ。能力バトル系で、複数人が別個で動かし発動条件付きだった〈時〉への干渉。それが魔力や集中力で、やり放題だと?


「戻し、止め、進め……いてっ。指を擦っちまった」

「……成る程、あれは薄い防御結界ではなく、時の流れの違いからくる切断か」

「対策としては〈時〉属性の防具か……〈ステータス〉にそんな項目ねぇけどな!」


 そして何よりも狂気なのが、光の発生さえ遅れているような手数の戦闘が、数分経っても終わらない状況だということ。

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