同様
〈木王〉セイコル。異世界の中で『ゲーム的』に言えば間違いなく火に弱い存在だった。
『ゲーム的』世界では其処らにある焚火すら『木』への攻撃倍率が掛けられてる。木々の種は、明確な弱点により〈人間〉だけでなく〈亜人〉にさえ倒され、素材とされる事がままあった。
そのまま全方位から攻められ、いずれ環境が変わると思われていた土地に、男が女達を連れて来た。
会話するまでの知能が芽生えた〈生木〉、本能と経験則はある〈動木〉、分身として〈精霊〉などを出す〈産木〉。これらに分類される木の存在達は、その男こそが〈魔王〉であると感じた。
自由への挑戦として、手加減した〈魔王〉により、幾つかの枝を折られた木々。〈魔王〉はそのまま熱を吐く。
『既に神木のようなものだが……第二、第三の〈世界樹〉になる気はないか?』
攻め入りではなく、影響力を見せつけに来ただけ。一度は気を緩めるものの、後に伐採がないとは誰も信じなかった。
『ふむ……暫し待て』
〈魔王〉がそう言い数分後。木々の根から『生命力』が頂点まで駆けた。無差別ではなく〈魔物〉と呼べるだろう存在にのみ配られ、場の気質は、原初より存在していたかのよう。
『どうだ? 時には切り倒す個体も出てしまうだろうが、俺の管理下に入れば種族単位で、憂える事はあるまい』
『何を持って切り倒す』
『この土地が特異だからだ。進化の仕方が異なる上に、そもそもの木の種類が違う。お前達は鳥や旅人から聞いて無かったのか? 世界中の種がここで揃うってな。それを急変させる奴が出れば、俺が嫌がる』
『突然もまた自然。お主はそれに逆らうと?』
『あぁ。そうなってしまえば、この場からは退場して貰う。尤も、何処かに小さく植えて種の保存には努めるがな』
木々の本質………そもそも多様な進化は、種の存続への解答の差でしかない。動物に対して植物の動きは遅い。故に言語で、微動で、霊体で躊躇わせ、種や花粉を運ばせる。
そのサイクルを狂わせる存在への対抗策。それが不十分だと判明していたからこそ、見違える景色が広がると彼らは考えていた。
故に彼らは〈魔王〉の手を取った。更に安定したサイクルがそこにあり、嫌うのは『場の急変』でしかなかったのだから。
「足りぬ。熱が足りぬぞ」
「私で不足するか。誰ならば強制的に、種蒔きを始めさせられる……あぁ、答えは直ぐそこだ」
元より火を利用する種であった〈木王〉は、耐火が異常発達し、より大規模の山火事を望むようになった処で退場。ゼノムの提案を聞いた時より、自身が一旦は切られる事を想定していたので、種の生成を控え『どの枝からも、現状に戻れる』ように蓄えた。
ゼノムも自身の盆栽からの要求量から、基点世界のようにはいかないと考えていたが、このような運用は完全に想定外だった。
(相性が……私の炎は〈闇〉への審判たる〈光〉ではあるが、漲る生命へは祝福でしかない。〈光〉を完全に排したものを吐かねば……しかし……)
「揺れよ揺れよ焔。そして我に種子を放たせよ」
(負ければ親の主義の勝利。勝てば親の仕事の手伝い。嫌だな……この場の種を全滅させたところで、灰を持ち帰り、保管した種を植えるだろう)
バルザはゼノムに与えられる損が、多少の面倒さでしかない事を再認識した。セイコルも戦略を理解しており、バルザを煽る。
(うわ、きっつ)
『誰かよろ』としか言ってない為、この場で理解が追い付いたゼノムの感想は単語である。
(こうなれば無機質な炎…龍焔とか〈風皇之陽威〉とかのデストロイヤーだけど……特に〈風皇之陽威〉は現状、敵対している親の技術だからなぁ)
力の化身が二柱の息子は、特異な木を燼する事が出来ずにいる。その心情を読めるが故に、ゼノムも悩む。
(このままだと、あの娘が強制転生させられる。…………下手すると破壊意志極まって【邪神】降ろさない? う~ん、やらかしたな。しかし、俺が直接覆すのも……)
試練の存在たるサタンが、単なる敵対の悪と理解されるように。ゼノムは失態を犯していた。
非を認め、切り返してこそ尊い上位存在だが、ゼノムはそんなモノではない。力のみの低俗な存在なのだ。
(くっ………! バルザも俺も同じか。心が正当な手段を取らせず、外部…他人の助けが必須だ!)
〈勇者〉はジリジリと削られており、バルザもゼノムも猶予が同じ。
そしてやっと決意した。
(頼むククラ! バルザを助けてくれ!!)
[やれやれこのゴ=ミが。スレに出没する暇を、精神修行に当てたらどうだ?]
(無理だからこうなってんだろ!)
[はいはい。まぁ、頼む相手を間違えなかっただけマシか]
(まるで他の嫁が間違えのようだな)
[他の権能は機械的じゃないんで]
存在が〈空〉の嫁。ゼノム第二の妻、ククラ・ニーツ=アウゴへの救難嘆願である。
[あーあー、テステス。此方、ゼノム情報局。ゼノムより助力を願われた。応答どうぞー]
「…何があった………!」
[んー? 直接覆すのが嫌だから、こっちに話が回ってきた。まぁ、理由は当人に聞けば?]
透明なゼノムを睨むバルザ。ククラは飄々と答え、付与を重ねる。
[…………〈無〉〈回復阻害〉〈焦滅時空〉〈自軍保護〉〈龍神覚醒〉〈神子之宣告〉……こんなとこかな]
「ふむ。その熱きもの……良かろう!」
「セイコル、お前が蒔ける可能性はない!!」
換装を終え〈龍〉は、大木へと距離を詰めた。




