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予備 7

 ゼノ・クラックは何処が強かったか。


 国との期限を越えたが許容範囲内だったので、少しばかりの休みを貰っている。その中で、一番見せつけられたものが話題だ。


「まず、あの対応力は何だ? 『高レベル即死』『即死確定大ダメージ』『極小ダメージ』『割合ダメージ』と全てに刺せ、『無敵』『本体消去』『死亡不可』『即死無効』『一定値以上ダメージ無効』『耐久バリア』で全てから護る。他にも『空間支配』などを持ち合わせて…」

「あれは素手が一番、恐ろしかった。武器使ってる時と、魔法メインの時と、素手じゃまるっきり違う」

「彼に属性なんてない。そう……彼の攻撃は『攻撃』という概念」


 様々な存在が居た。耐久も攻撃も…俺達だけなら、間違いなく全滅していただろう。


「ルシュフェルの結界もだ。結局、ゼノの読み失敗以外じゃ破壊されなかったからな」


 彼女が居ないのも同様だ。見た限り全方位に5kmはありそうな階層で、その全域に影響を及ぼす存在で死んでいる。


「あれは到達してはいけない領域だ……恐らく、好みにならない相手は、ただの数としか見ていない」

「同意する。あそこまで行けば〈アロクル〉の代わりを探り当て、神から離れたこれからを想像する」


 ズレた人間になりやすい理由も、よく分かる。あのような生命の形をしただけのナニカを、俺達より長く多く狩ってきたなら…そもそもの生命体が『弱体化』させられた存在であると思ってしまうだろう。


「……やっぱりおかしいぜ。あれだけの実力があれば、今日にでも〈魔王〉は排除出来るだろ? 何でやらないんだ?」


 ラウルの言う通りだ。通常RPGから最長に遠い、インフレを起こしていたのが彼処。余裕で往復していそうな奴が、表を放置する理由とは、いったい何なのだろうか。


「あいつに直接聞くしかない」

「そりゃまた、色々と危険だな……それ以外だと嫁さん達に聞いても良いが、結局、ゼノに回される気がするな」

「さて、アイツは何処に居るか」


 城内を行き、聞き伝でほぼ一直線であると分かった。


 部屋でイチャイチャしているらしい。正しく煩悩。脳と生殖器とが、最も太い神経管でもおかしくない。


「おーい、ゼノー!」

「入ってよし」

「失礼しやーす」


 中々の即答だった。あのような化物なのだから、壁越しでの範囲も相当なので、感知した瞬間から準備をしていたのだろう。


「好き勝手に改装したなぁ?」

「本当は城に部屋持ちたくないんだよね……俺の『王族ではないです』に説得力なくなるじゃん? だからせめて『監視と盗用の為に城の中なんです』アピールをしないとね」


 その部屋は様々な作業場になっていた。内部は拡張されており、各々に干渉しないように結界が張られ、面影は窓のみ。


「なんだと? 貴様の作成物が盗まれている?」

「〈エルル大海溝〉の前の泊まりの頃から、媚薬や本、えげつない時には〈転移門(ポートゲート)〉類を転用した『空間断絶』の剣がな」

「大丈夫だったのかよ、その剣」

「馬鹿だからシュアに使ってな……その特性を『固定』された事で、自分からバックステップして細切れ」


 ゼノの膝上を陣取る白い犬が偉ぶる。実際、神業なのだが、これからの質問で敵に回る場合を考えると、恐怖でしかない。


 呼吸も魔力も思考も……完全なる『停止』を前には、無力と散る。


「なぁ、お前達はそんなに強いのに、何でまだオウガを討伐しに行かないんだ?」

「んー………正直に言えば、感情でしかないな」


 初対面の時から、何も変わっていなかったのだろう。


 落胆の言葉を出そうとしたが__。






「嫁の一人だし」


 __何を言っている?


「……何時からだ?」

「前世の一つ前の転移前からだな」

「何故だ? 何故、止めなかった?!!」

「俺が協力したとはいえ、純正とおぼしき〈人間〉を滅ぼしたのが、本来の歴史だったからだ。まぁ、対策としてお前という存在が居たから、絶滅まで行かないようになっていたが」


 『純正とおぼしき』……今の〈人間〉が絶滅したからと〈アロクル〉が再創造した存在とでも?


「『純正とおぼしき』か。まるで不純の可能性があるようだな」

「流石に〈亜人〉や〈魔物〉にしか届かないはずの〈魔王令〉が〈人間〉に届いたら、ソイツらが特に濃かっただけの可能性があるじゃん?」


 『本来の歴史』……今は別時空だと?


「その通りだ〈勇者〉レラース。逆算確定した異世界転生と転移のうち、転移した世界は〈アロクル〉の管轄内である『こうなる前』の世界。〈アロクル〉と『共謀して』一つの英雄譚を作った世界だ」


 思考を読まれている。いや、思い返せば彼の嫁が可能だったのだ。


「で、ここまで聞いて分かる通り。現状は遊びや実験な……」

「〈祈りは開けた空へグッザン・ヴェルトオール〉!!」


 我慢の限界に達したカラットが、極大の光の柱を生んだ。


 ここで決別なのだろう。少なくともこの城からは出て行く。持たされた不要な住居の処分を、俺達にさせるのだから。


「あぁ…私にはもう出せない〈聖〉の出力方法……ねぇ、ゼル? 責任取ってもらえるよね?」

「よくぞ俺に適応した。ちゅき、だいちゅき」

「わんわーん。『〈邪〉すら神の創造ならば、最高の煌めきの〈聖〉を放つには、神と等しき事を成せるようになれ』『聖邪は〈自然〉に溢れており、片方の操作のみでは〈自然〉との相殺部分が発生し、微少とはいえ威力減衰が発生する。故に両方扱い、片方の為の道を創るべし』…言葉としては簡単だけど、実際の操作が難しかったよ…」

「頑張ったシュアを撫でるにしたがって、俺も幸せになっていく」

「口にされても幸せ……何でなんだろう?」


 当然の如く無傷だ。アドバイスと惚気る暇があるくらいに、どうでも良いと見られている。


「……〈アロクル〉は天上に居すから手は出せない。でも貴方は此処に居る」

「確かに観測領域外のとは戦闘の始めようがない……だがな、観測領域内であっても戦闘拒否や決着拒否は可能なんだぜ?」


 ゼノは明らかに挑発。


 カラットは、あのダンジョンで目の前の敵は、目の前にはある意味、存在しなかったのを忘れるほど、絶望と怒りに呑まれている。


 部屋の外から鎧の駆ける音が聞こえる。親衛隊だろう。実力では何の算にもならない……いや、ゼノがこの部屋で殺害する人数が増えただけか。


「何事ですか! 皆様!」

「おーう、お疲れー。俺が、〈魔族〉とか言われている〈亜人〉側だったのを、嫁が現在〈魔王〉してるオウガなのと共にカミングアウトしたら、ピッカーンされたとこ」

「………通りで妙なガキと思った訳だぜ…正直〈勇者〉より〈魔王〉の方が適性あるんじゃないか?」

「そうでしょう? だから〈魔王〉は前世で経験済みなんですよ」

「はっはっはーーー……〈女神 アロクル〉様ってかなりアレだな、何だ? その博打は」


 邪推でしかないが、そもそもの一回目から〈アロクル〉の計画にコイツが割り込んだ可能性がある。割り込みは可能だし排除は不可能……まさか〈アロクル〉より神格が上なのか?


「きっと打たせたんだ。俺の【本体】たる【最大世界】の【主】の【有】とその【友人】達がよぉ」

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