予備 5
「俺達も強くなりたいんだが…」
数度は階を降りたが、ゼノとルシュフェルによる殲滅により、まともな戦闘を行えていない。
折角の深淵なるダンジョンだ。地上の敵を越える敵ならば、レベルアップには都合が良いはずである。
「効率が悪いんだ。特に尖りがないばかりで、魔法、斬、打撃、毒のどれかに極端に弱い奴がいない」
確かにこの世界はゲーム的であり、キャップ内でさえ、強敵と思って倒してもレベルアップに繋がらない事があった。
キャップが外れた時、或いは限界値に最速で達するには、何かが圧倒的に低い相手を狩り続けた方が良い、と。
「それに例の実を馬鹿食いすれば、基礎ステータスは上限まで行けるからな。無駄な戦闘はしないで、早く済ませるべし」
「どうにか取れた一週間なのだからな!」
無駄なくするべきと、ザツカは同意した。先に〈世界樹〉に向かうべきでは……?
「よし、開けるぞ」
「階段に造ったのか」
「結構、安全地帯で、下で狩りして上で実戦と、非常に良い位置なんだ」
10以上は降りた階段の途中で、ゼノが壁に魔力を送ると、壁が消えて通路が見えた。
「お帰りなさいませ、マスター:ゼノ」
「先月振りー。この娘は『クレアリティ・オリジン』のカンナ。見ての通り、鉄装甲の人形だ」
SF化が可能なら、アンドロイドの作成を可能としても可笑しくない。なお美少女にするというセンスは、壊滅的な発想である。
「マスター、〈深淵〉が溢れそうです。早急に対処するべきかと」
「えぇ……こいつら連れて?」
「数日前、〈龍脈〉に多量の」
「OK。俺のせいだ。行って来る」
このような深いダンジョンだから、あの事件の影響が直ぐに来たのだろう。
しかしこの予定の狂いは嬉しくない。
「予定の階より随分下……というか、ここの主の手前まで行く」
「参考までに聞きたいが、その手前というのは…」
「こうなる」
ルシュフェルがラウルに向かって、剣を振る。振り抜き、鎧には真横の傷が付いて…しかも額からは血が垂れている。
「頭からの痛みを感じた時には、振り切った後だった……化け物しかいねぇなこりゃ」
「本来であれば筋力で9回、魔力を含めれば56回の攻撃なのだがな」
「何が起きてそうなるのだ……?」
「星の核からの距離にせよ、生物種やダンジョンとして不釣り合いだ。ならば疑わしくは〈アロクル〉。〈魔王〉や〈勇者〉とは異なる制限解除を創世、生態維持をしている」
〈魔王〉討伐後でさえも厳しそうな存在。そういった存在の心当たりはある。
「「抑止力」」
不意な被りから、ゼノは俺に説明を任せるようなジェスチャー。
「〈勇者〉が堕落などして〈魔王〉に降る。或いは〈魔王〉の浄化が進み過ぎて〈勇者〉に勢力を保ったまま降った時、一緒くたに破壊する為に貯めているんだ」
「発展は願うが急進は好まず、また完全に闇の世界にはさせる訳にはいかない。か」
「管理下だがマシ…しっかし、嫌な気分だぜ」
「まぁ、精神を弄られて敵対ルート行くより、秘蔵の第三勢力の方が納得出来るわな」
ゼノが遠い目をしているが『更なる異世界』で行ったのか、行われたのかが読めない。いや、きっとどちらもだろう。
ルシュフェルから追加された話だと、ゼノは元々、俺と同じような地球にて生活していたが転生。そして異世界にて一度、宇宙レベルの追放。追放先の世界でガチ魔王を完遂し、今に至る。
〈人間〉が世界創世主の保管庫の数人しか残ってないってなんだよ。そしてそこからでも、前世界の日本人口は越えられるって何やんだよ。
「ショートカットするけど、今回は結界ないから頑張って!」
階段を降りた直後に、落ちる前と同じように拳が地面を叩く。
床が波打ちあらゆる生命体が慌てる。
「よし、割れた」
再度の落下だが、比較的マシなのだ。確定の気絶や効果解除はないのだから。
「今回は厚かったかぁ……あと着地したら速攻で上からも、敵襲あるから」
「馬鹿じゃね?!」
命のショートカットだ。最高効率はズレると詰むシーンがあっても仕方ないが、死がかかるとなれば話は変わる。
「おいおい、見てみろよ。新種しかいねぇぜ」
「……あれは…そうなると、解決出来るか……?」
「先程のように結界を……」
床や壁はよくあるものだが、現れた存在が全く異なる。
階層を貫いただけあって、ぞろぞろと上から降って来た。というか魔物同士で争わないのは何故だ。
「こいつら知能高いんよ」
「広範囲結界は無駄になりやすくてのぅ」
危険領域しかなくなった。




