混沌の世 1'
「雅人が病室から消えた……?」
「……どうやら、ゼノムとその身内もだな。幸いにも他は大丈夫だから、技術的な問題は発生しない。文明崩壊しなくて良かった……」
俺は久しぶりに河東と会って、〈獣人〉のカフェにて話をしていた。
『アニマルセラピーの効果に加えて、美女の接客とか最高かよ。ふぁ?! 美少年も見れるんっすか!!』
といった具合に、ゼノムが整備した中でトップクラスの人気がある。そんな癒し中での『速報』だ。
身体は動かず、精神や魂は負で固定された植物状態の男が消えた。つられてゼノム達もいない。
ゼノムはともかく、真面目な性格のはずの嫁も失踪とは、明らかに事件と言える。
「まずは現場への急行だな」
「お支払やぞ」
雅人が居た病室の中を探る。だが何も見つからない。
「無駄に深い足跡も、雅人の皮膚が擦れた跡もない」
「魔力痕跡もだ。つまりは非物理であり非魔法の行動」
つまるところ、訳の分からない程の高位の行動である。これでおおよその犯人像は見つかった。
「【外】かぁ……。やはり【邪神】が率先してそうか?」
「まだ何の発表も何処かへの書き込みも、見られない。混乱させるのに丁度良いタイミングは今ではない。と?」
「あれか、立て続け過ぎると動揺が過ぎてフリーズや冷静になるという」
この世界より遥か【上】の時空。ゼノムでさえ手出し不能の神々が、犯人である。
解決策などありはしない。何故ならば、【外】と多く接触したであろうゼノムとその身内は失せ、仮に彼らと同じように【外】に【本体】が在ったとして【本体】と【邪神】の差に懸けるしかなく、また【外】からすれば複数のセーブファイルのあるゲーム程度の認知で【本体】も容認済みとか。
ゼノムに聞かされた話から繋げると、そういう想像が真実のように思える。
「十割で【外】だろうな。それで、俺達に振りかかる可能性は」
「四人には特にアリエル」
「クサハエル」
掻き乱しイベントを【邪神】筆頭に仮定すれば、あの『白い空間』で観測されたと見ていた方が良いだろう。……そうでなくとも、俺達『転移組』は既に強者として知られている。幾度となく電脳世界に出没した【邪神】に情報が回っていないのもおかしい。
知らなかったとすれば、傾向の例の一つ程度の存在と。
『【さぁさぁ】【始まりましたよ】【デスゲームの真打が!!】』
「うわぁ」
『【今回は】【蘇生してくれる人が居ません】』
「消したんだろ」
『【ゼノム等は】【ただの退室であり】【帰還後には変化に】【大草原でしょう】』
「間違いない。実験的、キック&ブロックだ」




