混沌の世 5
「想定はしていた。為す術はないとも」
戦闘能力検証の為の施設。存在保護を掲げる組織が唯一、抹消命令を出している存在の収監用の部屋。現在、そこには空間の裂け目以外は何もなかった。
「主任」
「〈彼〉が戻ると信じるしかあるまい。後悔はないが……可能ならばあの空洞がどうなっているのか、調べたいものだ」
「許可は降りないでしょうね。好奇心でしかないのですから」
話として当然であろう。内部に『確実に』居なければならない存在が、目の前に居ないのだから。例え降りたとして、余りの異質に解明されず、また回収班が無事な可能性は低い。
穴が塞がってゆく。しかしながら〈ゼノム〉は何も破壊せずに帰還し、ソレも〈ゼノム〉の真似か己が破壊能力で戻ると思われている。
「何のデータも取れぬのは」
「判明しているか否か。例え愚行が始まりにしても」
二人の研究員は、二体の事に対しての逃避を始めた。効率的には余りにも正しい。
裂け目からは、無音の衝撃が出ていたのだから。
人体は粒と消えるそれは、決して部屋を壊さずに発生し続けた。
「さて、正確な秒数でも測るか」
完全に何もない場となったそこを、ただ彼らは見つめる。嵐の前の零を感じて。
全ての境たる〈虚空〉に五柱の存在が現れた。究極の男神、片割れたる女神、男神の欲を背負う女神、自然となりうる女神、死を持たされた男神。
「崩壊の瞬間の接近と、その後の主導権奪取ねぇ……」
「特に問題がないんだろうな………慈愛の天使と犬姫様は何処へ」
「〈月〉に封印してきた~~」
「あぁ、どいつもコイツも勝手だ……!」
「それよりも! どうやって戻るのよ!」
各々が思い思いに発声する。【外】の定めた存在否定の領域にて、神々は呑気であった。
「まぁ、冥王な計画は置いて」
「名付けの元ネタはそれかよ!」
「戻れるとはいえちょっと問題があってな、絶賛【外】の監視中だろうから事件になるように、出口が繋がれる」
「やるね」
「間違いなく」
「やってこそ【外】」
庇護下にある為、女神達は危険視をしない。それを越える危険の時点で、対処が不能と知っているからだ。
「スー」
擬音を口ずさめば空間に切れ目が入る。無論、先は真っ白で何も見えない。
「入るか手を繋ぐか」
「残」
「却下」
「んじゃ、親父以外で繋いでくれ」
「となるとお前の『死』に対抗できるのは」
「また一緒だけど、大丈夫?」
「諦めた」
光景は姿に似つかわしくないが、最大限の対応がそうなる。それが全てと言わんばかりに。




