混沌の世 2
深夜はアスペが加速する…
一般的な工場の地下の冷凍室、更にその一角の床下への道。そこを降りれば、目に入るのはSFでも見慣れた白壁な通路。
「で、俺はまず何をされるんだ?」
「簡単な面接です」
「いやそれ、言葉の表層だけだろ。マジで何を誘導されるか分かったもんじゃねぇ。絶対にスベる」
「ははは、もっと自信を持ってくれ」
愛想笑いが巧いな。向こうからすれば、この力はある馬鹿(多分、そう思われてる)をどう扱うのかが重要なだけ。俺個人ではなく、俺を通して見える被害や利点にリソースを割いているはずだ。
ケモナーに絵の存在に恋をする。ハチャメチャな実験をする奴が居る。オタク的発想で無害化。確かそういうのも所属していた。
俺の公開っぷりで変人を寄せられるだろうか。まぁ、力以外は凡人だからと飽きられて、ちょくちょく会う程度になるな。
「着いたよ」
部屋のノブが回される。やっぱり飾り気のない部屋だ。何をスイッチに発動するのか、分からないからな。
「座りま~す」
「どうぞ。因みに私とはここでお別れだ」
「書類作成ですね。それにカウンセリングの免許は」
「まあまあ、代わりは直ぐに来るから」
椅子に座り一人になった。ここから既に録画録音は始まり、実験も同じくなのだろう。
「直ぐと言って焦らすのか……とりあえずデザイン変更だな。回収しやすいように」
二分経って現れないのはそういう事なのだ。何を可能とする、暇潰しに何を始めるのか。そして俺が転移等をしたとして、帰ってくる懸けにも出ている。今はしないけど。
まず壁、床、天井に一枚の紙を貼る。そしてデザインを考える。思いついたのは、PCの画面の草原と青空。ん? 異界感を極限にするなら、ドアや通気孔も消すべきだな。入室してきたらやったろ。
「すいません、予定が狂っておりました」
「心配するな。教員の授業遅れは経験済みだ」
そんな調子で始まった。
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『まずお名前を』
『ゼノム・ルマ=アウゴだ』
『失礼ながら上木の方は』
『捨てた名。理由はまぁ、後から』
『次に貴方のその力はいつから使えましたか?』
『ここでの年齢で言えば0才未満、何せ分裂したての受精卵から自我はあったからな』
『それを考えると貴方は人間では無さそうですね』
『最終的に種族は【神】になった。人型なのも気分的なものかも』
『では、他の姿に変わる事が可能と』
『例えば目の前の人とか』
『確かに私ですね。他には?』
『これがスライム、これが龍、これはアラクネ』
『大体のファンタジーの存在、そして実際に目にしている存在への擬態ですね。特筆性を同一にする事は出来ますか?』
『合わせる事も出来るが、基本的に俺以下のスペックになる』
『それでは、次ですが。何故そのように、様々な姿を迷いなく出せるので?』
『ん~、もう俺の話を最初からするか』
『どうぞ、お構い無く』
『俺は男として産まれてな、成人越えても現実の負の側面を嫌って、二次元に大ハマりだったんだ。そんな中いきなりの大地震があって、自覚のないまま俺は死んだ。そして起きたら二次元で見慣れた、世界が広がっていたのさ。野生を殺して、訓練して力を上げて、三人の嫁と娘が一人。因みに嫁は各々、白毛で犬の耳と尾が生えたのと、今も俺の中にいるのと、白と黒の翼を六対持つ者。娘は九尾……まぁ現代に合わせた玉藻の前だな。しばらく戦争への武力介入で、生活してたらさ。その世界の神が恐れてよ、ブラックホールみたいなもので家族もろとも追放しやがったんだ。存在を否定してくる空間で俺は嫁達に魔力を渡して、一旦、意識が飛んだ』
『まぁその……異世界の実在ですか……そうと内側の奥様とは』
(直に録音機に接続した上でのテレパシー)
[はい、なんでしょ]
『こういう会話ですか…名前を』
[ククラ・ニーツ=アウゴだぞ。言って大丈夫そうな範囲は直接サーバーに入れたから、こいつへのツッコミに回る]
『はぁ…ゼノムさんはそれで』
『いや? まだある』
『早計でした』
『それで空間で気絶していたら、別世界の俺と衝突してそいつに寄生する事になったんだ。寄生状態の逆転を望んだ俺は、死にに行くように誘導する事に決めた。死亡回が増す毎に、身体の支配領域が俺に回り最後には、別世界の俺は完全吸収されたって訳よ。まぁ、誘導しなくとも〈亜人種〉の解放と統一を目指して活動しただろうがな。それで別世界でする事は終わって、前の世界から俺を追って来た奴を叩き潰して、最初の世界に戻って魔法で好き勝手をした。そんなに世界の均衡は崩れてないよな?』
[誰の活躍なんでしょうねぇ]
『とりあえず。崩れてないのに、こんな状態の世界になってしまったと言う事だ』
『…なるほど、本来の世界から魔法世界へ飛び、更に別の魔法世界を経験。そしてこの世界はその何れでもない世界と』
『そういう事。困惑中だし、エンジョイ中なのさ。特に家族が心配でね。もう一つの魔法世界でも嫁と子供がいる』
『容姿を一応は』
『赤髪の単眼娘、金髪のエルフ、緑髪褐色ロリの龍、それとイケメンで赤服の龍。六対翼とも最近デきてな、黒のローブでまさしく死霊使いって感じの美少年だ。確認され次第、俺を通して欲しい。通さなかったら……この星は粒子となる』
『了解しました。今回はここまでということで……ドアを戻して貰っても?』
『どーしよっかなー、改造する?』
『シンプルなままが好みです』
『へ~い』
(終了)




