『全天録』チャート:ゼノ
「………ん?」
「改めまして、オーク族。参上致しました」
「ぷるぷる」
「グギィ!」
「……あぁ、よくぞ集ってくれた。この統率の遍満は我々の勝利への道となろう」
俺は…上木 悟は…ゼノ・クラックは死んだはずだ。〈魔神〉の提案を実行し、判定を掴み続けてHPが0となり無に還った。
それが俺の生き様なのに何故だ……? 神は一体、俺に何をしろと言うのだろうか。
『ゼル~? 宣誓忘れちゃった?』
『大丈夫だ、問題ない』
『一番、駄目なのじゃん!』
『まっ、見てて下さいにょ』
無言が長かったのかシュアが話しかけてくる。俺が戻されただけ、そういう事にしておいてもらいたい。
「圧倒的上位生物たる諸君、部分的に尖るのみで人と変わらない諸君、時は遂に来た。だが、まずはこの組織の根源的な話から始めよう。この世界は〈アロクル〉によって創造されたものだ。魔法も物質も全て奴が作りしもの。その中での〈人間〉とは特殊な枠の中にあって、奴からの保護が確約されている。そして〈スキル〉の幅が最大であり、最高火力を出せるのも〈人間〉だ。しかし彼らは、成長の限界に到達する事はないと思える位、強くなる為に必要なものが多い。そんな彼らを、産まれながらの強者が跋扈する状況に落とすのだ。何もしなければ絶滅は必至、故の奴との強固な関係だった。が、何時しか、いつものように〈人間〉は本来から外れた根拠を持つ。それが原因で消さずともよい命、精神、正義が消えた。そしてそこから先は地獄だった。本来から外れた根拠で動く存在も、家族や友、何かの集団の中に居るのだ。無理矢理な欠員により、残された者達は納得しない。その感情を怒りや殺意として、欠員を出した原因と自身が思った存在にぶつける。そうなれば被害者が加害者となり、返り血は自らの血でしか拭けず、普通の知的機能は痛みから逃れようと元凶の排除を始める。真実の悪から離れた行動と、それに対する断罪はいつまで経っても終わらない。何せどれも根本的な解決にならないからだ。その根本とは間違いなく〈アロクル〉にある。だから奴へと言葉や刃を飛ばすしかないが、女神だからと上に籠るようになっている。引き摺り降ろすには、この世の存続という明らかな危機か〈人間〉への危機の二つ。その二つを比べ元〈人間〉である俺は〈人間〉への危機を選んだ。理由は様々に重なるが一番は『殺して良いようになった』という事。〈人間〉だった頃はしてはいけない理由があったし、ペナルティも殺しきれない可能性も存在していた。だが此方に来てからは、逆に殺す事を推奨される領域で生きて来た。前とそう変わらない〈人間〉の闇も、女神が全てを覆し、何もかもを戻す未来さえ見えた。ならば何も考える事はない。確実に殺れる上に、望んでいる亜人が居るのだから。さて同志よ、この望みを叶える為に何を行うのかと言えば、〈人間〉という種族への虐殺である。決して〈英雄〉の撃破ではないのだ。奴らの撃破は確かに〈人間〉を守る精鋭の廃除となり、虐殺をしやすくなるだろう。だが世界は奴らの忌々しい活躍が残されるのみ。つまり、その手段は全く意味がないのだ。そうと分かれば別の事を行うだけであろう」
流石に嫁達の顔が怪訝なので切る。だが〈大共栄〉の方針に何の変化もない。自分がゼノムを呑むか、完全に分離して別々に生きていけるようにするだけで、〈人間〉絶滅はしたい事の一つなのだから。
「皆にはそれ相応の働きをしてもらう。我々はそれらにより、未来という全てを掴むのだ! 〈大共栄〉に益よあれ!」
「お疲れだね」
「さりゃそうじゅ」
「んー? ヤハラの方が良いのかな~?」
「噛んだだけ……」
恐らく前より長い言葉を終えた俺は、史上最高の休憩をしている。シュアの癒しが覚えているより遥かに高いのもあるが、疲れの抜け具合が違うのだ。
もしかしたら前のHP0が持ち込まれていた可能性がある。であれば、ヤハラの回復力では足りないな。
「いい子、いい子」
犬っ娘に頭撫でられるのってこんなにも至福。ゼノムの溺愛っぷりを理解した。というか胸が反則では。
「っ?!」
「深呼吸~」
そういえば一方的に心を読まれていたな……では、二週目である事も知っているのだろう。それでも彼女はこのような誘いをしているのか。
「顔をずらしちゃ駄目」
シュアにとって服は変幻自在のもの。取り込まれた中で頭を目指した横移動は、即座に谷間へ戻される。詰んだ。
「おやすみ、ゼル」
シュアはこのまま俺が寝るまで、自身の心音と匂いを感じさせるつもりと見た。ノンプレイの時もあって良い娘だ、是非とも堕落させてもらいたい。
(また、明日から大変だな………ゼノムがしてはいけない、多種族交流もしなくちゃ……)
追記:そうだよ。例の長文への挑戦だよ。
再追記
〈内対〉[しかし四分の一であった!]
てかなんだこの性欲オチは……。




