晒し会場
多少の名前の間違いとか
そもそものジャンル設定ミスとか
あり得るわぁ……。
「本当にお前なのか?」
「何を言えば信じる」
市役所で色々する内に、本人確認という形で家族が来る事になった。
まぁ、そうだろう。火葬済みからの死者蘇生なんて、初めての事例であり、身内にしか確認の取りようがないからな。
「幼稚園の時に」
「鼓膜が寝てる間に破れたり、石集めの際に踏まれて指に小石がめり込んだり、親父を怒らせて足払いをされ後頭部を強打」
「小学生」
「居残りは翌日の発熱を確定させ、魚を直に詰めて激臭をさせ、修学旅行でさえ節約を心掛け、数度、廊下に立たされた」
「本人よ!」
ある程度の情報を出揃わせた所、母が確信した模様。怒られたり怪我したり飢えたりと、五感に強い思い出ばかりなのは仕方ない。
「だが、見たんだ。お前の骨を」
「細かい事は出てからな」
[周囲の目がパパラッチだ……]
父は否定的だった
ククラから、自然な国民総撮影者の流れが完成した、と告げられる。死亡修正が終わる数分で、100人には伝わるだろう。
終わったので早足に駐車場へ向かい、車に乗り込む。そして会話の再開だ。
「生き返ったのはな。信じられないだろうが、俺は異世界に行っていたんだ。そこでは」
ファンタジーの体験談を述べる。剣と魔法、魔物、異種人類、神、天国、地獄、鍛練、死別、結婚。どれもが車内に笑いを誘う。
「「同じ過ぎて笑う」」
妹と父が特に笑う。宗教の知識とRPG及び『三國志ゲー』好きの父はともかく。妹よ、お前は発症してしまったのだな。
見違える街並みに哀がこみ上げたが、向かう先の感覚に変化が無さすぎた。
目的地には。
「うん。居るな」
「ドライブしよう」
何の変わりもない家と、待機するカメラがあった。無論の如く、父は通過を決行し母は出掛けに賛同。
「悟る、魔法でどうにかしろや」
「それじゃ、親父。どっかで駐車して」
口の悪い妹に催促され、まずは凶器の停止を頼む。
「〈時空停止〉」
停まったところで時空を止める。後は物理的に運んで。
「……? 玄関……?」
「言っての通りに時間を止めて、色々と動かしただけだぞ」
「そんな事より、犬と人の声がするんだけど」
帰宅するのみである。
玄関すぐの広い部屋から声が聞こえた。人は分かるが、犬の鳴き声に違和感があり一瞬、考える。
「とりあえず開けるわ」
不審人物だったとして【邪神】以外に遅れを取る事はあり得ない。自信を持ってドアを開く。
『あー、地縛のように守護霊してて良かったー』
『然り。来た所で高齢が多かったものを』
「可愛いー」
「雄だが……方面は同じか」
「向こうと同じような菓子あったよ」
嫁達が犬と遊んでいたようだ。
「ゼル!」
「おかー」
「先に失礼しておるぞ」
「旨い」
各々らしい反応で迎えられる。ふぅ、此処を〈至高天〉としよう。
とりあえず想定外の要素である犬達を抜きたい。
「わーい、生き返ったぁ! 長いだけの話より、犬と遊んで良いよね?」
「多分、お前の読みは当たっている。好きにしろ」
『良かろう娘。我らが久々に遊んでくれる』
『庭に細工をして貰おう。安心出来る遊び場が欲しい』
「ほい、終わり。行ってら~」
死んだはずの飼い犬と妹は遊びに出た。土地に認識阻害の結界を張ったので、誰の目にも触れずに楽しめるだろう。
妹は間違いなく『治る時が不明の病()』を発症している。ならば俺のような話はいくらでも視聴済み。犬との戯れが優先になっても、おかしくはない。
「とりあえず不法侵入には目を瞑ってくれ。自然にすり抜けたりもするし」
「非常識な世界なんだろうなぁ。生死かけた」
父の目は境地にあったが問題なしとする。
「これが俺の家族だ。まずは正妻」
「御義父様、御義母様。初めまして、正妻をさせて頂いております。シュア・フィエータ=アウゴです」
第一の妻、癒しの権化の犬獣人シュア。
「そういえばお前をゼルと呼んでいたような」
「あぁ、向こうで名前変えたんだよ。ゼノム・ルマ=アウゴって」
両親は地味なショックを受けたようだ。自分の考えを捨てられた上に、キラキラネームの上(?)を行かれたらなぁ。
「第二は……出て来てくれ」
ククラを紹介しようと内側へ呼び掛ける。すると天井に魔法陣が描かれた。魔法陣に光の穴が空き、穴からゲル状の青が垂れる。落ちきったゲルは形を整え着色し、人間の見た目になる。
「第二の妻、ククラ・ニーツ=アウゴです。主に情報処理で夫を支えております」
「こいつ、苦手だからなぁ」
父はスライムでテンションが高まり、母の目は死んだ。いや、父も理解しているのだろう。
「第三妻、ルシュフェル・ゼノクレイス=セプテム。シュアとは異なる精神安定が主である」
「第四、クレア・プローモ=アウゴ。鍛治師」
「第五の妻、ヤハラ=アウゴ。エルフですから、真名は秘匿させて下さい」
「第六妻、オウガ・ミラクゥヘ=アウゴ。力を司る故に、求婚された」
一人も〈人間〉がいない事に。酷い性癖公表のように捉えるしかない。
「こっちは子供な」
「長女のアスタム・リズニカ=アウゴです。アスカって呼んで下さい」
「長男、バルト・クザニン=アウゴ。バルザと父上方から呼ばれてます」
一旦の終わりに、父はタバコを吸い始める。問いただすにも、吸わねばやってられないのだろう。
「なぁ、どうしてそんな子に手を出したんだ?」
父の視線はオウガ…オークゥに向けられている。
そりゃまぁうん。妻として緑髪褐色『ロリ』が紹介されたら、非魔法世界の感覚からするとおかしいよな………嫁達からも視線を感じる?! やはり犯罪者、みたいな目だ! 名探偵してそうな目だ!
「どうしてともな。言えば一目惚れだよ。龍の圧力とこの姿。嫁に欲しいと思った」
これ以上どう盛れと言うのだ。下にキタなんて言える訳がないだろ?!
「君はそれでいいの?」
「恐れた者達に好き勝手にされた上で、封印の身となった我を解放し、遥かなる強者へと導ける男は、そう居ない」
ありがとうオークゥ。異常性癖者への視線は変わらないけども!
「そっか……気になるんだけど、お前、人付き合いはどうだった?」
「正直、野生と接しまくってたな。魔物退治と戦乱の制圧が仕事だったし、俺も〈人間〉に生まれてないし」
「ならそうなるか」
父は納得した顔で席を立った。
「息子の制御をよろしくお願いします」
「よくもこんな子で……」
頭を下げる父と母。ここで何かを否定したところで、俺達は勝手に生きるのが見えたのだろう。
特に拗れなくて良かった。




